教育ICTリサーチ / 造形教育研究部・考える力研究部 ~クリエイティブな人材育成研究ブログ~

「図工」「美術」「情報」「総合」など、発想力・創造力・考える力を育成する教育プログラムや方法、実践などを紹介します。

【レポート】パスタマシンを使った版画授業を体験して@第41 回児童造形教育研究会

 2017年8月3日に東京学芸大学附属竹早小学校にて開催された、第41回児童造形教育研究会に参加してきました。
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 当日のプログラムは、以下のような流れになっており、全体会ではさまざまな先生方の実践発表を聴き、実技研修会1では竹早小学校の児童と一緒に授業を体験し、午後の実技研修会では大人だけでまた別の授業を体験し、最後にディスカッションをするという盛りだくさんの内容でした。

  1. 全体会 「学びを深める造形的なやりとり」
  2. 実技研修会1
  3. 実技研修会2
  4. ざっくばらん討論会

 実技研修会は、A~Eのコース選択制になっており、私は、筑波大学附属小学校の北川先生の「パスタマシーンで版画」と、桐蔭学園小学部の粟津先生の「写真で工作してみよう」があるDコースを受けました。

 今回は、実技研修会で受けた、筑波大学附属小学校の北川先生の「パスタマシーンで版画」について、紹介したいと思います。


子どもたちの反応を観ながら、自分も体験

 学校の先生向けに開催されている研究会のよくある形としては、いろんな学校の先生方の実践発表を聴くことがほとんどだと思います。実習系の授業であればワークショップ形式で自ら体験するという形もあるかと思います。今回参加して面白いなと思ったのは、竹早小学校の児童たちと参加者として混ざりながら授業を体験できたことです。
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 児童がどんな反応をするのか、どんなものを制作するのか、どういう素材を使おうとするのか、どんな動きをするのか、いろいろ観察しながら、自分自身も参加者として体験することで、授業自体の面白さや魅力を体感することができたと思いました。参加している児童も、公開授業などで教室中を取り囲む大人たちのたくさんの視線を感じながら受ける授業とは違って、緊張している面持ちはなく、和やかでリラックスしている様子で、より自然体の児童の様子を観ることができたと思いました。

 当日の空間としては、以下のような感じでした。
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パスタマシーン+カーボン紙の版画で多様な使い方ができる

 インクを使った版画だと、原画に対してインクを塗り、その転写が紙に写るので、出来上がりが左右反転することを考慮して作る必要があり、これがなかなか難しかったりしますが、パスタマシーンとカーボン紙を使った版画だと、原画とカーボン紙と転写する紙と厚さを持たせるための紙数枚を重ねてパスタマシーンで圧をかけるので、カーボン紙と転写する紙の位置を工夫すれば、原画通りの作品を作ることができます。もちろん、原画と左右対称の作品を作ることもできます。また、厚さを持たせるための紙の枚数を変えることで、転写されるカーボンの濃さを調整できます。原画に貼り付ける素材によっても硬さ・厚さ・素材感が異なるので、いろいろな表現が可能になります。
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 このインクではできない多様な表現ができることで、どうしたら見本のような表現ができるのか、どうしたらほかの子ができたような表現ができるのか、あの素材を使ったらどうなるかな?と児童たちの思考を巡らせることができているように感じました。


必ずしも思い通りにならないことが試行錯誤のポイント

 北川先生は、以下の3つだけを簡単に説明しただけで、あとは自由に制作に入らせていました。

  • 原画に素材を貼る際ののりの付け方
  • 原画とカーボン紙と転写する紙とその他の紙をサンドしてパスタマシーンで圧をかけること
  • 素材がある場所

 制作していく中で、同じ席の人がどんな原画を作っているか、転写してどんな作品になったかを見ながら制作できるのも良かったですが、北川先生がちょっと変わった作品を作った人を取り上げて、どうやって作ったのか児童たちに考えさせるようにしていたのがいいなと思いました。最初にできることを紹介してしまうのではなく、その場の参加者から生まれ出てきたものから手法を考えさせるのがとてもいいなと思いました。
注目された本人も嬉しいだろうし、それをどうやって作ったのか周りの児童から質問されて教えてあげるというやりとりも自然と生まれてくると思いました。
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 また、手法がわかったとしても、素材の付け方や紙の厚さなどによってなかなか思い通りにいかないことも、どうしたら理想に近づけるかを考え、仮説を立て、実行し、結果からさらに考えるという試行錯誤を通した作品作りができているのもいいなと思いました。


参加者として、思考の切り替わりを感じた空間作り

 また、参加者として感じたのは、作る上で自分自身の思考の切り替わるタイミングが、空間作りによってしやすくなっているのではないかと感じました。それぞれの空間で感じた私の思考を元にまとめてみました。

  • 素材コーナー
    • どんな素材を使おうかな?この素材を使ったらこんな感じになるかな?
    • 素材と向き合う
  • 自分の席
    • どんな作品にしようかな?素材をどこにどう貼ろうかな?他の子はどんなのを作っているかな?
    • 目標をイメージして定め、作る
  • パスタマシーンまでの道
    • どんな風になるかな?出来上がりを想像してワクワク。
    • 期待と想像
  • パスタマシーンの待ち時間
    • どんな風になるかな?出来上がりを想像してワクワク。他の子の作品も気になる!
    • 期待と想像と情報収集
  • パスタマシーンで印刷
    • ワクワクマックス!どんな風になったかな?
  • 自分の席までの道
    • どうしてこうなったんだろう?どうすれば良かったんだろう?
    • 目標(理想)と結果(現実)から思考・分析

▼素材コーナー
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▼今回制作された版画作品と原画の一例
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 今回の北川先生の研修会では、ICTを使ってはいませんでしたが、児童たちに自ら考えさせる要素がたくさん入った授業だと思ったので、ご紹介させていただきました。また、実際の授業では、児童たちの作品をプロジェクタで投影して、作りながら他の児童の作品を見ることができるようにもされているようです。児童を1つの場所に集めて説明するのは、実物を見るという意味ではいいですが、人数によっては、後ろの方の児童は見にくくなってしまうので、プロジェクタなどで大きく投影されれば、見やすく説明もわかりやすくなると思います。
北川先生の他の授業も見学してみたいと思いました。


(前田)