教育ICTリサーチ / 造形教育研究部・考える力研究部 ~クリエイティブな人材育成研究ブログ~

「図工」「美術」「情報」「総合」など、発想力・創造力・考える力を育成する教育プログラムや方法、実践などを紹介します。

【レポート】造形教育センター月例会

 4月23日に、造形教育センターの月例会に飛び入り参加してきました。造形教育センターとは、昭和30年に設立され、表現主義的な教育だけでなく、バウハウスの造形理論などの影響を受けて、デザイン・工作なども含めた総合的な造形教育の研究をされている団体です。小中高の先生、大学の研究者、学生、企業の方など、さまざまな立場で造形教育を実践されている方々が参加されています。

 今期は、「今、子どもたちに必要なこと+」をテーマに、美術教育とは違う視点で活動されている方々をゲスト講師として呼んで、本当に社会に必要となっていることは何かを考え、議論していらっしゃるそうです。過去のゲストとしては、漫画家、プログラマー、写真家、青年海外協力隊員、国際協力活動実践者など、さまざまな方を呼ばれたそうです。「リアリティは、その場にいかないとわからない」という考えのもと、さまざまな方のお話を聞いて、研究されているようです。

 そして、今回のゲスト講師の方は、学童施設を運営しているペパーソンインターナショナル株式会社(PEP)の代表取締役、神谷哲郎氏でした。神谷氏は、国際協力の現場で長くJICA事業に従事してきた方で、その経験がどのように今の子育て支援へと結びついているのかについて、お話されました。f:id:ict_in_education:20170501181248j:plain
▲左:神谷氏、 右:東京造形大学 石賀氏(進行役)

学校の先生になる前に、自分がやってきたことを試したい!

 神谷氏は、もともと学校の先生になるのが夢だったようですが、先生になる前に自身がこれまでに携わってきた美術活動や人形劇がどれだけ海外の子に影響を与えることができるかを試したいと思い、青年海外協力隊としてヨルダンで活動をし、その後、パレスチナ、エジプト、フィリピンに赴任。ライフワークとして人形劇を子どもたちに見てもらう活動を続けてきたそうです。パレスチナのある学校の掲示板に、自分たちの町が爆弾で襲われている絵が展示されていたり、街の壁画には、自爆テロをしている人を称える絵が描かれていたりして、日本では想像することもできないその風景が、衝撃だったそうです。描かれた絵をいけないことだと批判はできないので、神谷氏は壁画プロジェクトを立ち上げ、今起きていることではなく未来を描くことをテーマにして、難民キャンプの壁に新たな絵を描くことを提案されたようです。
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自分自身も中にいないと、リアリティを持たない!

 神谷氏は、平和構築に美術・人形劇を活かせないかと考え、上記のような海外活動をしてきたようですが、そういった活動をする一方で、日本に対しては自分が評論家になってしまう感じがしたようです。海外でやるにしても、まずは日本で何かやらないと説得力がない。自分自身も日本の中にいないとリアリティを持たないと考え、日本へ戻ろうと決めたそうです。

受け入れだけでなく、きちんとしたプログラムのある学童保育を!

 もともとの夢であった学校の先生にはならないことは決まっていたので、何をやるかと考えたときに、学童が受け入れをすることだけにフォーカスされている状況をなんとかしたいと思い、現在の会社を立ち上げたそうです。場所確保・人材確保・研修については、重要・大事だという人は多いけども、プログラムのことについてはあまり言われない現実があったそうです。神谷氏は自身の大学の恩師から学生当時に言われた、「生活指導ばかりに注力するのではなく、授業をおもしろくしろ」という言葉も後ろ盾となって、現在の学童施設を始めることを決めたそうです。

スタートは2人…!?

 しかし、どんなに内容に自信があっても、会社名も個人名も知らないところに、子どもを預ける人はいなく、開校当初は、2人だけという状況で、「認知」「信頼」を得ることの大切さ、難しさを強く感じたそうです。そうした中でも、1人1人の子と向き合い、子どもたちと親をつなぐことが役割であるとことを常に意識し、学童保育の中での子どもの様子を毎日細かく親に伝えることを大事にされてきたそうです。そうした丁寧な対応をしていったことで、口コミで徐々に広まり、現在は多くの子どもたちの笑顔で溢れる状態にまでなったそうです。

リアルな現実を知り、リアルな人のために考え行動する

 神谷氏のお話は、海外から日本まで幅広い活動のお話でしたが、常にリアルな現実を知ろうと動き、そこにいる人のために考え行動されているのだと感じました。〇〇はきっとこうだろうといった思い込み、決めつけをするのではなく、まずは自分の目・耳・体で確かめる。そこにいる人の声を聴く。その人のためにできることを考える。そういった当たり前だけども、忘れてしまいがちなシンプルなことを学んだ気がしました。

 そして、神谷氏の講演の後には、PEPの学童施設の教室を見せていただき、参加者全員でその教室でできる造形教育を考え、神谷氏にプレゼントする。というワークが行われました。ここでも、神谷氏や学童施設の話を聴き、教室を観ることで、リアルな現実を知り、そこに通う子どもたちのための造形教育を考えるという流れになっていたことも、ただ神谷氏の話を聴いて終わりではなく、そこから行動につなげていけるような研究会となっていたのがいいなと思いました。
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(前田)