教育ICTリサーチ / 造形教育研究部・考える力研究部 ~クリエイティブな人材育成研究ブログ~

「図工」「美術」「情報」「総合」など、発想力・創造力・考える力を育成する教育プログラムや方法、実践などを紹介します。

【開発秘話】 情報分析・問題発見からプレゼンまで実習を通した、情報科カリキュラム@八王子学園八王子高等学校 #3

 この連載では、八王子高等学校の情報科の授業の様子と共に、そのカリキュラムの開発秘話を紹介いたします。今回は、全8回のうちの3回目の授業についてです。

 1回目と2回目のレポート内容は、こちらをご覧ください。
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まずは、問題解決のゴールを具体的に設定する!

 情報の教科書に載っている問題解決の手順の多くは、ゴールを具体的に設定するところまでは、書かれていません。大まかには「問題発見→情報収集分析→まとめ→提案」という流れですが、問題解決の道筋を考える際に、あらかじめゴールを具体的に設定しておくことが大事だと考えました。
 日常生活上でもビジネス上でも、問題解決でありがちなのが、目的と手段を切り分けられずに、手段が目的となってしまうケースがよくあります。今の教育業界でいうと、ICTの導入が盛んに行われていますが、ICT導入すること自体が目的となってしまっているケースがよくあります。本来の目的としては、「1人1人のレベルに合った学習を提供したいから、アダプティブラーニングに適したアプリとそのアプリに適した端末を導入する」といった導入の仕方だったり、「知らない言葉や出来事に出会ったときにすぐに自分で調べるという癖がついてほしいので、1人1台タブレットを配布し、どこでもネットにアクセスできるようにwifiを完備する」などのように、何のためにICTを導入するのかという目的が明確にあることで、どういう手段をとるのが適しているのか思考したり、判断することができます。

 前回までの授業で、解決すべき問題を見つけたので、そこからいきなり手段である施策を考えるのではなく、最終的にその問題がどうなればいいのか、どういう状態になればゴールなのかを設定してもらいます。何が(評価対象)、いつまでに(期限)、どれくらい(数量)変化するのかの3つを明確にします。
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 「客数を増やす」という曖昧なゴール設定よりも、「1年後に、現状より3%の客数を増やす」というように具体的にした方が、1年後までに3%の客数を増やすにはどういった施策をしたらいいかを具体的に考えやすくなります。このゴールについても生徒たち自身で決めてもらい、自分でゴール(目標)を定めるということをしてもらいます。

 目標を定めた上で、手段を考えるという思考をさせることで、論理的思考が身につき、例えば進路を決める際にも、応用して考えさせることができると思います。まずどうなりたいのか・どうしたいのかの目標を定めてから、就職なのか、進学なのか、進学なら大学か短大か専門か留学かなどの手段を考えるというように、目的と手段を切り分けて考えることは重要です。


定めた目標設定をExcelでシミュレーションし、現実的かどうかをチェック

 グループで目標が設定できたら、その目標が現実的かどうかを、Excelを使ってシミュレーションをしました。前回までに調べたコンビニの売上などの数値を使って、現時点からゴールの期限までの変化をシミュレーションし、売上がどのように変化するかを数字で確認しました。その数字と過去10年間の実数値を比較して、現実的かどうかをチェックします。

 今回用意したExcelのテンプレートは、生徒は「変化率」だけを入力すればその割合に対して売上などが自動的に変化してシミュレーションできる形になっているので、さまざまな数値を入力して、どう変化するかを何度も試行錯誤することができるようになっています。
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 実際に、先ほどの目標で設定した数値を入力すると、予想以上に数値が大きくなりすぎてしまったので、変化率の数値をいろいろ試してみて、現実的な目標値がいくつか確認し、目標設定を修正するグループもいました。


マインドマップを使って、さまざまな切り口から施策のアイデア出し!

 目標が設定できたら、その目標を達成するための施策を、マインドマップでアイデア出しをします。真ん中に目標を書き、そこから「商品」「サービス」「広報活動」などの切り口を書き、切り口を基にアイデアを出していきます。八王子の生徒たちは、1学期にもマインドマップを少しやったことがあるので、今回は手慣れた手つきでどんどんアイデアを書いていってました。書き方の部分で切り口なしで直接アイデアを書いてしまっている生徒もいましたが、書き方を指摘して再度説明してあげると、すぐに修正して続きを書いていました。
 正しい書き方に固執する必要はありませんが、「切り口」を意識してアイデアを出すのと、意識せずに出すのとでは、意識した方がアイデアが出しやすくなります。「正しい書き方で書くことが大事なのではなく、「切り口」を意識して書くことが、たくさんアイデアを出す上でいいんだよ」ということを伝えると、まずどんな「切り口」があるかを考えて、そこからアイデアを出せるようになっていました。
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 アイデアの数は、予想していたよりもたくさん書けている生徒が多かった印象でした。もっと全然思い浮かばないという生徒が出てくるかと思いましたが、コンビニというテーマが身近であったこともあるのか、普段感じていることからの発想や、過去これまでにコンビニが実施してきたキャンペーンなどから連想したものも出てきていました。


次回は、4回目です。今回出した施策を、三角ロジックで根拠のある施策になるようにまとめ、プレゼン資料の構成を考える授業内容です。


(前田)

【開発秘話】 情報分析・問題発見からプレゼンまで実習を通した、情報科カリキュラム@八王子学園八王子高等学校 #2

 この連載では、八王子高等学校の情報科の授業の様子と共に、そのカリキュラムの開発秘話を紹介いたします。今回は、全8回のうちの2回目の授業についてです。

 1回目のレポート内容は、こちらをご覧ください。
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協働 × データ分析、協働 × 問題発見
他者と相談・話し合うことで、分析や問題発見をより深める!

 八王子高等学校の情報科の授業では、これまでも実習の授業をやってきましたが、生徒同士で話し合い、内容を刷り合わせていくということはありませんでした。そこで、前回個人個人で調べた各担当コンビニの売上数値や店舗数、1店舗あたりの売上数値などを、他のコンビニの数値と比較するために、自分が担当しているコンビニ以外の人と数値データを共有し、どういう気づきがあったのか話し合いながら、データ分析を深めました。

 そして、再び担当コンビニでグループを再編成し、さまざまな視点から問題を発見できるように、データ分析をした観点(チェーン全店売上/店舗数/1店舗売上)が異なる人たちとグループを組むようにしました。
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▼グループ分けの図解
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 このグループ編成で参考にしたのは、知識構成型ジグソー法です。
CoREF - 知識構成型ジグソー法


 このジグソー法と、Excelを使ったデータ整合とWordによるレポート作成を合わせて、協働を通して分析と問題発見をする授業構成を考えました。

最終プレゼンのための、発表の練習となるグループ内でのミニ発表

 今回の2回目の授業では、データ分析と問題発見までしかしませんが、最終的に7・8回目の授業において、クラス全体で発表をしてもらう形になります。先生方が懸念されていたのは、「クラス全体に対して発表するということに慣れていない」ということでした。「恥ずかしいから発表したくない」「緊張していつものように話せない」そういった傾向になってしまいがちということで、いきなりクラス全体で発表する前に、データ分析における自分の考え・意見を発表する場として少人数グループでのミニ発表を設けました。


目的に応じて、アプリケーションや道具を使い分ける!

 これまでの八王子高等学校の情報科の授業は、主にWord、ExcelPowerPoint、InternetExplorerをアプリケーションごとに組まれた授業構成でした。Wordであれば、雑誌編集をする中で、文章入力や画像の挿入、検索置換や文字校正、レイアウト調整などをしていました。Excelであれば、ファーストフード店の都道府県別の店舗数や客単価を想定してそこから全店舗の売上数値を概算したり、音楽業界の売上の推移を大量のデータを使って、各年ごとにデータを並べ替えしたり、グラフを作成して数値ではわかりにくい推移を視覚化した上で、気づいたことをまとめたりしました。

 しかし、本来ならば、データ整理・分析ならExcel、レポートをまとめるならWord、プレゼン資料をまとめるのはPowerPointというように、アプリケーションごとに学ぶというよりも、目的に応じてアプリケーションを使い分けることができるのが大切です。「目的に応じて使い分ける」ということは、アプリケーションに限らず、プリントや付箋などのアナログのツールにも言えることです。八王子の先生方からも「目的に応じて使い分ける」ようにさせたいというご要望をいただいていたので、データを見て気付いた問題点の洗い出しについては、付箋を使うようにしました。

 アイデア出しにおいて重要なのはスピードです。質よりも量が優先される段階で、「え…これでいいのかな…合ってるかな…」といった迷いが出てしまうことはなるべく避けるようにしたいので、書き直しが容易であるデジタルはあまりオススメしません。また、生徒によってタイピングスキルがバラバラなので、入力スピードの遅い生徒にとっては、アイデアを思いつくスピードに、それを入力するスピードが追いつかないケースもあり得ます。もちろん、タイピングの方が速いという生徒もいると思うので、絶対付箋にすべきということもありません。実際に、仕事でアイデア出しをする際に、アナログの方がやりやすいという人もいれば、デジタルの方がいいという人もいるのが実態です。
 パソコン教室での授業だから、なるべくパソコンを使うようにする必要はないので、目的や生徒のスキルに合わせて、適した道具を使うのがいいでしょう。

 八王子の先生方も、クラスによって付箋でやっていたり、先生が個人的にExcelで作成されたファイルを使ってアイデア出しをしたりと、生徒の状況に合わせて使用する道具を使い分けているようです。

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次回は、3回目です。今回の問題発見から問題を絞り込み、そこから改善案を発想する授業内容です。


(前田)

【開発秘話】 ポプラ社:「なんじかな?とけい(ポプラ社の知育ドリル ぜんぶできちゃうシリーズ)」#1

 11月1日に、ポプラ社より、知育ドリル ぜんぶできちゃうシリーズ「なんじかな?とけい」が発売されました。弊社では、このドリルの教育監修で開発に関わらせていただいています。
 この連載では、このドリルの教育監修およびデザイン視点での開発秘話をご紹介させていただきます。

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ドリル=お勉強というイメージを払拭したい

 よくある時計のドリルといえば、時計のイラストがあって、それが何時かを書き込む問題が複数ページに渡ってあるものがほとんどです。時計を正しく読めるかどうか、時刻に合った針の位置が書けるかどうかを学習目標としたものが多いと思います。こういったドリルを観て感じたのが、「お勉強っぽくて楽しくない」「時計のイラストと時刻を書く欄が永遠と続いていて、まるで修行のよう…」と感じました。時計のイラストの見た目を華やかにしたり、キャラクターを用いたりして、見た目から楽しそうな雰囲気を出そうとしているものもありますが、実際にお子様が取り組む内容自体は変わりません

 ドリルは、親御さんと一緒にやる場面もあるかと思いますが、家庭によっては、お子様1人だけで取り組むこともあるでしょう。そういったときに、特に時計に対してあまり興味を持っていないお子様にとっては、単調なコンテンツは飽きてしまい長く続きません。特に、ポプラ社の、知育ドリル ぜんぶできちゃうシリーズは、学習をはじめたばかりのお子様に向けたドリルなので、「楽しい」「おもしろい」「もっとやりたい」と思ってもらうことが重要となります。そこで、既存である時計のドリルとは違うものを作りたい!と思いました。

そもそも時計の役割って何なの!?

 既存の時計ドリルのほとんどが、時計を正しく読むことを学習目標としている中で、「そもそも時計を正しく読むことを目標にしているのがおかしいのではないか?」と考えました。普段、時計を見るときは、今の時間を確認したり、予定の時間までを確認したり、約束をするときに時間を確認したりします。時計を正しく読むことは「何か」をするために必要な手段であって、その「何か」を意識させることが大事だと考えました

 そもそも時計ってどんなものなのかを考えさせる、家の中にはどんな時計があるのか考えさせる、生活の中でどんなときに使うものなのかを考えさせるようなドリル。「〇時だ!アニメがやる時間だ!」「〇時だから、そろそろおやつの時間かな?」といった感じで生活の中の出来事・やるべきことと、時計を結びつけて考えることができたらと思いました。時計の時刻が読めるだけでなく、こういった考え方ができるようになれば、自分で時間管理ができるようになったり、計画を立てたりする力にも影響してくるのではないかと思います。

絵本を読むような感覚で時計について学ぶ

 今回の「なんじかな?とけい」では、上記の通り「生活の中での時計の役割を学ぶ」ことを学習目標にしようと思い、どうやって表現しようかと悩み、本屋でさまざまなドリルを参考に観て回りました。なかなか、いいアイデアが出てこなく、ドリルではなく絵本もいくつか観ていったときに、タイトルは忘れてしまいましたが…ある絵本の構成が時計の役割を教えるのに使えると思いました。その絵本は、一日の空と町の様子のイラストが描かれただけの文字のない絵本でした。1時間ごとに変わっている空と町の様子が細かく描かれていて、時間の経過と変化が感じられるものでした。

 そこで、一日の生活の流れを絵本のように大きくイラストで見れるようにし、その中で時計が示す時刻が何時か読むような形にしようと考えました。他にも、迷路、時計とそうでない物を見分けるクイズ、時計の数字や針を書き込むものなど、時計に関する問題をさまざまな形で掲載しました。ドリルで勉強というよりも、ドリルで遊びながら学ぶという感覚を大事にしました。


www.poplar.co.jp

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(前田)

【開発秘話】 情報分析・問題発見からプレゼンまで実習を通した、情報科カリキュラム@八王子学園八王子高等学校 #1

 八王子学園八王子高等学校の情報科の授業にて、2016年度より問題解決フローを組み込んだ実習の授業を新しく導入していただき、この2学期より実施スタートしました。
 この連載では、八王子高等学校の情報科の授業の様子と共に、そのカリキュラムの開発秘話を紹介いたします。
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特色の異なる生徒でも興味を持ちやすいテーマに

 八王子高等学校は、進学、特進、芸術、アスリートなど、特色が異なるクラスが1学年で10クラス以上あります。生徒の雰囲気や得意とする分野が違うのはもちろん、興味を示すことも異なります。そういった前提条件のもと、どのクラスの生徒でも興味を持ちやすいテーマを設定することが必要でした。
 今回、設定したのは、「コンビニの売上をアップする施策を考える」です。コンビニ自体は、高校生にとってもよく利用するお店なので、身近なものです。
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 また、各コンビニの売上の数値や店舗数の数値は、公式サイトに掲載されている情報なので、ネットで検索して必要なデータを探す作業ができ、それらのデータをExcelにまとめて、各コンビニのデータを比較したり、傾向を分析することもできます。
 生徒が興味を持ちやすく、かつ学習目標の内容が組み込みやすいテーマを設定することにいちばん時間をかけました。実際に授業を見学させていただいたところ、コンビニというテーマは、やはり生徒たちにとっても身近な存在なので、「私、〇〇〇がいい!」「学校からいちばん近いコンビニって〇〇〇〇だよね?」などの声が上がり、テーマとしては適していたようでした。

あらゆる状況を考えて授業計画を用意

 八王子高等学校の情報科の授業は、1年の必修授業です。週1回2コマ実施されるので、カリキュラムの内容は、2コマを1回分として計画しています。前後に体育などの移動授業などがあると、授業開始時に生徒が集まっていなかったりなどもあるので、時間ピッタリではなく、10~15分くらいは余裕を持って授業を企画し、授業回数の多いクラスや特進などのようにスキルの高いクラスのために、各回毎に応用の内容も用意しておきます。
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グループ作業をしつつ、個人評価ができる

 1回目の授業では、一人一人が担当のコンビニについて調査をします。過去10年間の売上高と店舗数を調べ、1店舗当たりの一日の売上高や、客単価を推測して一日の客数などを概算で求めることをします。各コンビニで扱うデータの数値がある場所や、数値自体は異なりますが、フレームワークが同じなので、教えるポイントや学習目標は変わりません。
 また、同じコンビニ同士でも、一人一人が自分でデータがある場所へ辿り着き、データをExcel上にまとめ概算を出し、概算の表を見て気付いたことをWordでレポートにまとめるところまでやるので、個人での評価もきちんとできるようになっています。
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情報収集において、どう探したらいいかを実体験を通して学ぶ

 インターネットを使って、欲しい情報を探すことは、大学で論文をまとめたり、仕事で企画書をまとめたり、プレゼン資料の裏づけデータを探したりなど、あらゆる場面で行うことですが、その際に求められるのが、「どういうところにデータがあるか」「どういったデータであれば信ぴょう性があるか」「どう検索すれば、ほしい情報が見つけられるか」を、自分自身で考え、探すことができるスキルが必要になると思います。
 今回の例で言えば、コンビニの売上高や店舗数のデータがどこにあるかを考えて探すことが重要です。キーワード検索で「コンビニ名 売上高」という複数キーワードで検索してすぐ出てくるデータもあれば、出てこないデータもあります。そういったときに、「売上高や店舗数を知りたい人はどういった人だと思う?」などのような質問をして、「株主だったらそのコンビニの売上を知りたいだろう」という考えを生徒たちから引き出し、サイト上のどのページを探せば、データがありそうかを考えさせながら、情報収集をさせることができます。
 こういった学習は、口頭で説明されても、なかなかイメージしずらいものですが、実体験を通して学習することで、身につきやすくなると思います。


 本カリキュラムは、全8回の授業で構成されているものです。以降の授業の様子や開発秘話についても、引き続き紹介していきたいと思います。


(前田)

学校で使えるクリエイティブデザインアイデア#17:足し算のデザイン(文字だけでデザインしてから、装飾・色を足す

 この連載では、学校の先生が普段使えるクリエイティブデザイン観点でのアイデアやポイントをご紹介させていただきます。
 前回までは、ひき算のデザインを紹介しましたが、今回は足し算のデザインを紹介します。前回までの内容は、以下リンク先をご覧ください。

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まずは、文字だけでデザイン。それから足す!

 前回までに紹介したような、できた状態のものや途中段階のものから、要素を削ぎ落してわかりやすくする引き算とは違い、今回紹介するのは、ゼロの状態から要素を足して、メリハリをつけてわかりやすくする方法です。
 ゼロの状態から、あらゆる要素をどのように組合せていくかを考えて作るのは大変なので、まずは装飾も色も使わずに、文字だけで読みやすく、わかりやすくデザインするといいでしょう。

 見出しと本文のフォントサイズは、あらかじめ見せたい情報の優先順位で設定しておき、作りながら実際の見た目で判断して、大きさのバランスを調整するといいでしょう。見出しと本文のフォントサイズの目安は、過去の紹介記事をご参照ください。

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▼同じフォントで、見出し・本文すべて同じフォントサイズのもの
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▼同じフォントで、見出し・本文によって、フォントサイズを変えたもの
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▼見出し・本文によって、フォントとフォントサイズを変えたもの(フォントによって一部太字も適用)
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▼文字だけでデザインしたものに、装飾・色を足したもの
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 上記のように、使用する要素を少しずつ増やしていって、伝えるべき情報の優先順位に合った見え方になるように、デザインを調整するとやりやすいかと思います。
 今回紹介した足し算のデザインをしつつ、前回までに紹介した引き算のデザインを組み合わせて、適宜調整するといいでしょう。



(前田)

学校で使えるクリエイティブデザインアイデア#16:ゴチャゴチャしていると感じたら、引き算のデザイン(フォントを減らす

 この連載では、学校の先生が普段使えるクリエイティブデザイン観点でのアイデアやポイントをご紹介させていただきます。
 前回に引き続き、ひき算のデザインを活用して、情報が伝わりやすくなる方法を紹介します。前回までの「見せたい箇所を減らす」「装飾を減らす」「色数を減らす」 については、以下をご覧ください。

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今回は、「フォントを減らす」について紹介します。

いろんなフォントを使いすぎて読みにくいときは、フォントを減らす

 フォントの種類は、繊細な感じのもの、ポップなもの、かわいらしいもの、力強い感じのもの、和をイメージさせるものなど、いろいろな種類があり、選ぶのがとても大変だと思います。よくやってしまいがちなのが、話題ごとにフォントを変えてしまうことです。見出しだけならともかく、本文も話題ごとに変えてしまうことで、読みにくさを感じさせてしまうことがあります。
 過去に紹介した記事で、見出し・本文に適しているフォントの種類をまとめたものがあるので、そちらも参考にしてみてください。

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▼さまざまなフォントを使いすぎて、読みづらくなってしまっているもの
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▼本文に使うフォントを統一させて、見出しだけフォントを変えているもの
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●タイトルと大見出し部分の変更点
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 元々タイトルに使われていたフォントは、行書体という和っぽいフォントだったので、丸ゴシック体にしてポップな印象にし、大見出しよりも目立たない細めのものに変更しました。また、使用したフォントは大きめのものだったので、少しフォントサイズを落としました。
 大見出しでは、「助け合い」「が生まれた」「運動会!!」で3種類のフォントが使われていましたが、「助け合い」と「運動会!!」は同じフォントにし、「が生まれた」のフォントは細めのものに変更して、「助け合い」と「運動会!!」が同じくらい目立つようにしました。


●本文中の変更点
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 元々は、赤字の部分が太いポップ体というフォントになっていましたが、本文にこういった太いフォントは適しません。ポップ体やゴシック体のような太くがっしりしたフォントは、パッと見で目立つので見出しに向いていますが、本文に使用すると読みにくくなってしまいます。太くしたい場合は、明朝体を太くするか、ゴシック体の中でも太すぎないものを使用するといいでしょう。その際も、常に読みにくくなっていないかどうかを意識して確認するようにしましょう。


●下半分部分の変更点
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 元々は、見出しと共に、中身の文章までフォントがバラバラなので、とても見づらくなってしまっています。また、個人情報の部分の本文は明朝体が使われているのですが、見出しなどに適した太めの明朝体を使っているので、読みにくくなってしまっています。
 変更後は、中身の文章については、すべて同じフォントで統一させ、見出しの部分だけ話題によってフォントを変えました。その際も、使用するフォントによって見た目の大きさが異なるので、見た目の大きさが同じくらいになるように、フォントサイズを調整しました。


 フォントは、話題に合ったデザインのものを選ぶだけでなく、見出しであれば目立つかどうか、本文であれば読みやすいかどうか、ということを意識して選ぶといいでしょう。
また、他の話題との情報の優先順位も意識して、フォントによって見え方が変わってしまっていないかどうかを意識するといいでしょう。


(前田)

学校で使えるクリエイティブデザインアイデア#15:ゴチャゴチャしていると感じたら、引き算のデザイン(色数を減らす

 この連載では、学校の先生が普段使えるクリエイティブデザイン観点でのアイデアやポイントをご紹介させていただきます。
 前回に引き続き、ひき算のデザインを活用して、情報が伝わりやすくなる方法を紹介します。前回までの「見せたい箇所を減らす」「装飾を減らす」については、以下をご覧ください。

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今回は、「色数を減らす」について紹介します。

色数が多すぎて重要箇所が目立っていないときは、色数を減らす

 前々回の記事にて、優先順位をつけて見せたい箇所を減らし、目立たせる箇所と目立たせない箇所でメリハリをつけることを紹介しましたが、見せたい箇所を目立たせるために、色を付けると思います。見出しに色を付けたり、帯(背景色)に色を付けたり、重要な文言に色を付けたり、などなど。
 ただ、前回紹介した装飾と同様で、やりすぎてしまい、伝えたい情報どころか、どこから見ていいのかわからなくなってしまうということが、よくあります。色を付けることで、華やかさや明るい印象は演出できますが、雰囲気が伝わるだけで、実際には読むまでに至らない。色が強すぎて、文字を読む気になれないという気持ちにさせてしまう可能性があります。

▼さまざまな色が目立ちすぎて、ノイズになってしまっているもの
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 上の学級通信は、全体的に色が付いていて、一体どこから読んだらいいのか、何が重要事項なのかがわかりづらくなっています。
 赤文字のところを目立たせたい感じですが、赤文字を使っているところが、すべて同じくらいの重要事項かというと、そうでもない感じです。バラバラな程度の重要事項があちこちで赤文字になっており、他の色も使いすぎているので、散漫な状態になってしまっています。教科書やノートで、色ペンを使いすぎて、一体どこが重要なのかがわからなくなってしまっている状況と同じ状態です。
 下半分に配置されている「○△小祭」「バザー」「歯磨き週間」は、背景色の彩度が強すぎて、文字が読みづらくなってしまっています。また、それぞれの背景色の明度が揃っていないのも、情報のレベルに違いがあるように感じさせてしまうので、読みづらさにつながっています。


▼色数を減らして、目を引くアクセントになっているもの
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 上図では、いちばん読んでもらいたい運動会の話題についてと、下部の注意事項と、行事予定の日付の数字のみを、赤文字にして、他では赤は使わないようにして、メリハリをつけました。
 行事予定の表は、行事内容や休日で色を付けてしまうとそれだけで色数が多くなってしまうことと、そもそもそこまで目立たせるべき情報ではないので、日付の数字だけ色をつけました。
 「○△小祭」「バザー」「歯磨き週間」の背景色は、彩度が高すぎだったのと、明度がバラバラになっていたので、淡い色にして、彩度を低くし、3項目の明度をおおよそ揃えて、文字が読みやすいように調整しました。
 色を使うところを、見出しと背景色のみにして、その他の重要事項については、太字にするということで、色自体の役割が明確になるようにしました。


 色は、パッと見で目をひくことができるので、情報を伝えるための重要な要素です。
適当に配色するのではなく、色の役割を明確にして、配色することが大切です。配色を決める際も、その都度、本来の目的である、見せたい情報が見やすくなっているか、読みやすくなっているか、色がノイズになってしまっていないかを意識して、確認するといいでしょう。


(前田)