読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

教育ICTリサーチ / 造形教育研究部・考える力研究部 ~クリエイティブな人材育成研究ブログ~

「図工」「美術」「情報」「総合」など、発想力・創造力・考える力を育成する教育プログラムや方法、実践などを紹介します。

学校で使えるクリエイティブデザインアイデア#17:足し算のデザイン(文字だけでデザインしてから、装飾・色を足す

 この連載では、学校の先生が普段使えるクリエイティブデザイン観点でのアイデアやポイントをご紹介させていただきます。
 前回までは、ひき算のデザインを紹介しましたが、今回は足し算のデザインを紹介します。前回までの内容は、以下リンク先をご覧ください。

blog.ict-in-education-cr.jp
blog.ict-in-education-cr.jp
blog.ict-in-education-cr.jp
blog.ict-in-education-cr.jp


まずは、文字だけでデザイン。それから足す!

 前回までに紹介したような、できた状態のものや途中段階のものから、要素を削ぎ落してわかりやすくする引き算とは違い、今回紹介するのは、ゼロの状態から要素を足して、メリハリをつけてわかりやすくする方法です。
 ゼロの状態から、あらゆる要素をどのように組合せていくかを考えて作るのは大変なので、まずは装飾も色も使わずに、文字だけで読みやすく、わかりやすくデザインするといいでしょう。

 見出しと本文のフォントサイズは、あらかじめ見せたい情報の優先順位で設定しておき、作りながら実際の見た目で判断して、大きさのバランスを調整するといいでしょう。見出しと本文のフォントサイズの目安は、過去の紹介記事をご参照ください。

blog.ict-in-education-cr.jp


▼同じフォントで、見出し・本文すべて同じフォントサイズのもの
f:id:ict_in_education:20161107093638p:plain

▼同じフォントで、見出し・本文によって、フォントサイズを変えたもの
f:id:ict_in_education:20161107093639p:plain

▼見出し・本文によって、フォントとフォントサイズを変えたもの(フォントによって一部太字も適用)
f:id:ict_in_education:20161107093640p:plain

▼文字だけでデザインしたものに、装飾・色を足したもの
f:id:ict_in_education:20161107093641p:plain


 上記のように、使用する要素を少しずつ増やしていって、伝えるべき情報の優先順位に合った見え方になるように、デザインを調整するとやりやすいかと思います。
 今回紹介した足し算のデザインをしつつ、前回までに紹介した引き算のデザインを組み合わせて、適宜調整するといいでしょう。



(前田)

学校で使えるクリエイティブデザインアイデア#16:ゴチャゴチャしていると感じたら、引き算のデザイン(フォントを減らす

 この連載では、学校の先生が普段使えるクリエイティブデザイン観点でのアイデアやポイントをご紹介させていただきます。
 前回に引き続き、ひき算のデザインを活用して、情報が伝わりやすくなる方法を紹介します。前回までの「見せたい箇所を減らす」「装飾を減らす」「色数を減らす」 については、以下をご覧ください。

blog.ict-in-education-cr.jp
blog.ict-in-education-cr.jp
blog.ict-in-education-cr.jp

今回は、「フォントを減らす」について紹介します。

いろんなフォントを使いすぎて読みにくいときは、フォントを減らす

 フォントの種類は、繊細な感じのもの、ポップなもの、かわいらしいもの、力強い感じのもの、和をイメージさせるものなど、いろいろな種類があり、選ぶのがとても大変だと思います。よくやってしまいがちなのが、話題ごとにフォントを変えてしまうことです。見出しだけならともかく、本文も話題ごとに変えてしまうことで、読みにくさを感じさせてしまうことがあります。
 過去に紹介した記事で、見出し・本文に適しているフォントの種類をまとめたものがあるので、そちらも参考にしてみてください。

blog.ict-in-education.jp


▼さまざまなフォントを使いすぎて、読みづらくなってしまっているもの
f:id:ict_in_education:20161024151003p:plain

▼本文に使うフォントを統一させて、見出しだけフォントを変えているもの
f:id:ict_in_education:20161024151004p:plain

●タイトルと大見出し部分の変更点
f:id:ict_in_education:20161024151005p:plain

 元々タイトルに使われていたフォントは、行書体という和っぽいフォントだったので、丸ゴシック体にしてポップな印象にし、大見出しよりも目立たない細めのものに変更しました。また、使用したフォントは大きめのものだったので、少しフォントサイズを落としました。
 大見出しでは、「助け合い」「が生まれた」「運動会!!」で3種類のフォントが使われていましたが、「助け合い」と「運動会!!」は同じフォントにし、「が生まれた」のフォントは細めのものに変更して、「助け合い」と「運動会!!」が同じくらい目立つようにしました。


●本文中の変更点
f:id:ict_in_education:20161024151006p:plain

 元々は、赤字の部分が太いポップ体というフォントになっていましたが、本文にこういった太いフォントは適しません。ポップ体やゴシック体のような太くがっしりしたフォントは、パッと見で目立つので見出しに向いていますが、本文に使用すると読みにくくなってしまいます。太くしたい場合は、明朝体を太くするか、ゴシック体の中でも太すぎないものを使用するといいでしょう。その際も、常に読みにくくなっていないかどうかを意識して確認するようにしましょう。


●下半分部分の変更点
f:id:ict_in_education:20161024151007p:plain

 元々は、見出しと共に、中身の文章までフォントがバラバラなので、とても見づらくなってしまっています。また、個人情報の部分の本文は明朝体が使われているのですが、見出しなどに適した太めの明朝体を使っているので、読みにくくなってしまっています。
 変更後は、中身の文章については、すべて同じフォントで統一させ、見出しの部分だけ話題によってフォントを変えました。その際も、使用するフォントによって見た目の大きさが異なるので、見た目の大きさが同じくらいになるように、フォントサイズを調整しました。


 フォントは、話題に合ったデザインのものを選ぶだけでなく、見出しであれば目立つかどうか、本文であれば読みやすいかどうか、ということを意識して選ぶといいでしょう。
また、他の話題との情報の優先順位も意識して、フォントによって見え方が変わってしまっていないかどうかを意識するといいでしょう。


(前田)

学校で使えるクリエイティブデザインアイデア#15:ゴチャゴチャしていると感じたら、引き算のデザイン(色数を減らす

 この連載では、学校の先生が普段使えるクリエイティブデザイン観点でのアイデアやポイントをご紹介させていただきます。
 前回に引き続き、ひき算のデザインを活用して、情報が伝わりやすくなる方法を紹介します。前回までの「見せたい箇所を減らす」「装飾を減らす」については、以下をご覧ください。

blog.ict-in-education-cr.jp

blog.ict-in-education-cr.jp


今回は、「色数を減らす」について紹介します。

色数が多すぎて重要箇所が目立っていないときは、色数を減らす

 前々回の記事にて、優先順位をつけて見せたい箇所を減らし、目立たせる箇所と目立たせない箇所でメリハリをつけることを紹介しましたが、見せたい箇所を目立たせるために、色を付けると思います。見出しに色を付けたり、帯(背景色)に色を付けたり、重要な文言に色を付けたり、などなど。
 ただ、前回紹介した装飾と同様で、やりすぎてしまい、伝えたい情報どころか、どこから見ていいのかわからなくなってしまうということが、よくあります。色を付けることで、華やかさや明るい印象は演出できますが、雰囲気が伝わるだけで、実際には読むまでに至らない。色が強すぎて、文字を読む気になれないという気持ちにさせてしまう可能性があります。

▼さまざまな色が目立ちすぎて、ノイズになってしまっているもの
f:id:ict_in_education:20161021145107p:plain

 上の学級通信は、全体的に色が付いていて、一体どこから読んだらいいのか、何が重要事項なのかがわかりづらくなっています。
 赤文字のところを目立たせたい感じですが、赤文字を使っているところが、すべて同じくらいの重要事項かというと、そうでもない感じです。バラバラな程度の重要事項があちこちで赤文字になっており、他の色も使いすぎているので、散漫な状態になってしまっています。教科書やノートで、色ペンを使いすぎて、一体どこが重要なのかがわからなくなってしまっている状況と同じ状態です。
 下半分に配置されている「○△小祭」「バザー」「歯磨き週間」は、背景色の彩度が強すぎて、文字が読みづらくなってしまっています。また、それぞれの背景色の明度が揃っていないのも、情報のレベルに違いがあるように感じさせてしまうので、読みづらさにつながっています。


▼色数を減らして、目を引くアクセントになっているもの
f:id:ict_in_education:20161021145108p:plain

 上図では、いちばん読んでもらいたい運動会の話題についてと、下部の注意事項と、行事予定の日付の数字のみを、赤文字にして、他では赤は使わないようにして、メリハリをつけました。
 行事予定の表は、行事内容や休日で色を付けてしまうとそれだけで色数が多くなってしまうことと、そもそもそこまで目立たせるべき情報ではないので、日付の数字だけ色をつけました。
 「○△小祭」「バザー」「歯磨き週間」の背景色は、彩度が高すぎだったのと、明度がバラバラになっていたので、淡い色にして、彩度を低くし、3項目の明度をおおよそ揃えて、文字が読みやすいように調整しました。
 色を使うところを、見出しと背景色のみにして、その他の重要事項については、太字にするということで、色自体の役割が明確になるようにしました。


 色は、パッと見で目をひくことができるので、情報を伝えるための重要な要素です。
適当に配色するのではなく、色の役割を明確にして、配色することが大切です。配色を決める際も、その都度、本来の目的である、見せたい情報が見やすくなっているか、読みやすくなっているか、色がノイズになってしまっていないかを意識して、確認するといいでしょう。


(前田)

学校で使えるクリエイティブデザインアイデア#14:ゴチャゴチャしていると感じたら、引き算のデザイン(装飾を減らす

 この連載では、学校の先生が普段使えるクリエイティブデザイン観点でのアイデアやポイントをご紹介させていただきます。
前回に引き続き、ひき算のデザインを活用して、情報が伝わりやすくなる方法を紹介します。前回の「見せたい箇所を減らす」については、以下をご覧ください。

blog.ict-in-education-cr.jp


今回は、「装飾を減らす」について紹介します。

伝えたい情報よりも装飾が目立ってしまっているときは、装飾を減らす

 前回の記事にて、優先順位をつけて見せたい箇所を減らし、目立たせる箇所と目立たせない箇所でメリハリをつけることを紹介しましたが、見せたい箇所を目立たせるために、装飾を付けると思います。通し番号を付ける、語頭に記号を付ける、下線を引く、区切り線を付ける、枠を付ける、背景色を付ける、などなど、さまざまな目立たせるための装飾があります。
 ただ、やりすぎてしまい、伝えたい情報よりも、装飾が目立ってしまうということが、よくあります。読ませたい文字よりも、記号の方が目立ってしまっている、背景色の方が強すぎて、文字を読む気になれない、といった感じです。

▼装飾が目立ちすぎて、ノイズになってしまっているもの
f:id:ict_in_education:20161014162305p:plain

 上の学級通信は、タイトルも含めて、ほとんどの話題に枠がついており、しかも中身の文章よりも、目立ちすぎているので、読みにくくしてしまっています。
 また、下半分に配置されている話題の見出しについている記号や「○×小祭」「バザー」「歯磨き週間」の背景色も、目立ってアイキャッチになるのですが、記号や背景色の方が気になって、文字の方に目が行きにくくなってしまっています。
 行事予定の表も、よくあるものですが、罫線が目立ちすぎているので、中身の文字が見づらくなってしまっています。


▼装飾が目立ちすぎなく、目を引くアクセントになっているもの
f:id:ict_in_education:20161014162306p:plain

 上図では、いちばん読んでもらいたい運動会の話題についてを、敢えて枠なしにし、他の話題は枠をつけることで、メリハリをつけました。また、枠があったときは、窮屈な印象でしたが、枠がない分、写真を一回り大きくできたり、文章の余白ができて、読みやすくなりました。
 他の話題についていた枠については、タイトルの枠は目立たせる必要性がないので削除しました。行事予定の表は、最小限の線で表を表現し、文字よりも目立たないように、線の太さは細くし、色味は薄くしました。「○×小祭」「バザー」「歯磨き週間」の背景色は、色が目立ち過ぎていたので、色自体が主張しない淡い色にしました。最下部の個人情報の話題の枠は、デザインはそのままにして、背景色の色味に変え、目は引くけども、文章よりも目立ちすぎないように調整しました。
 見出しの語頭や語尾についていた記号は、記号自体が目立ってしまっていたので、文字だけでも目立ち、読みやすくなるようにしました。


 重要な情報を目立たせるために、装飾を付けることはよくある手法ですが、その装飾によって、逆に読みにくくなってしまったり、本来見てもらいたい情報よりも装飾が目立ちすぎてしまっては、本末転倒です。本来の目的である、見せたい情報が見やすくなっているか、読みやすくなっているか、装飾がノイズになってしまっていないかを意識して、確認するといいでしょう。


(前田)

学校で使えるクリエイティブデザインアイデア#13:ゴチャゴチャしていると感じたら、引き算のデザイン(見せたい箇所を減らす

 この連載では、学校の先生が普段使えるクリエイティブデザイン観点でのアイデアやポイントをご紹介させていただきます。
今回紹介するのは、ひき算のデザインを活用して、情報が伝わりやすくなる方法を紹介します。

ゴチャゴチャしていると感じたら、「引き算」!

 賑やかで華やかな感じはあるけど、なんだかパッと見、「どこを見たらいいのかわかりにくい」「読みにくい」「なにを言いたいのかがわかりにくい」という状態のときは、デザインの「引き算」をするようにしましょう。今回は、優先順位を整理し、見せたい箇所を減らすことを紹介します。

見せたい箇所(目立たせる情報の優先順位)を整理して、減らす

 資料などの読み物を作っていると、「全部読んでもらいたい!」「全部大事!」と言いたくなるものですが、それをデザインに当てはめて、すべての情報を同じように目立たせようとすると、ゴチャゴチャとした散漫な状態になってしまいます。
 情報に優先順位をつけて、どこから読んでいけばいいのか、最低限どこを抑えておけばいいのかを整理して、目立たせる箇所を絞りましょう。

 本文を読んでもらいたいという思いから、本文のフォントサイズを大きくしすぎて、余白や行間がなくなり、読みづらくなってしまうパターンが多いですが、文字が大きければ、本文を読むというものではありません。
 それよりも、本文が読みたくなるようなキャッチコピーやリードをつけたり、本文が読みやすくなるように余白や行間をつけたり、読みやすいフォントにしたり、1行あたりの文字数を調整したりする方が効果があると思います。

blog.ict-in-education-cr.jp

  • 優先順位のつけ方としては、重要度や緊急度などを考慮してつけます。
  • 優先順位は、情報の階層ごとにつけましょう。
    • 話題ごとの情報の優先順位(例えば、以下のような話題の情報に優先順位をつけて、最初に目を通してほしい話題は何かを明確にしておきます。)
      • 当月の活動報告
      • 来月の行事予定
      • 保護者への連絡事項
    • 各話題の中での情報の優先順位(例えば、保護者への連絡事項で、以下のような連絡がある場合にそれぞれに優先順位をつけます。)
      • 〇×小祭について
      • バザーについて
      • 歯磨き指導について


▼優先順位をつけずに、ほとんどの情報を目立たせようとしたもの
f:id:ict_in_education:20160926151645p:plain

 上の学級通信は、すべての情報を目立たせようとしたがために、メリハリがなく、どこから読んだらいいのかがわからず、視線が定まらず、読みにくいものになってしまっています。
本文もきちんと読んでもらいたいという想いから、本文の文字のサイズが大きくなって見出しが目立たなくなってしまったり、さまざまなところに色をつけすぎて、重要な情報が何かわからなくなってしまっています。

▼優先順位をつけて、目立たせる情報を整理したもの
f:id:ict_in_education:20160926151646p:plain

 上図では、まず優先順位として、「見出し>本文」を全話題共通とし、最初に「運動会の見出しと写真」へ目がいくように各見出しにも差をつけました。
本文の中でもより重要な情報については、太字にして、重要ではない情報と差をつけて、読みやすくしました。また本文に色をつけると見出しとの差がわかりにくくなるので、ここでは本文はすべてモノクロで統一させました。


 すべての情報を読んでもらうために、すべての情報を目立たせるのではなく、情報に優先順位をつけて、読む順番(視線の流れ)を整理することで読みやすくなります。
 次回は、引き算のデザインのうち、「装飾を減らす」について紹介します。


(前田)

ICT×美術教育 #29:2020年東京オリンピックのエンブレムを通して、デザインの目的・効果・考慮すべきことを学ぶ

 フューチャーインスティテュートの前田です。美大卒の教育コンサルタントです。この連載では、ICTを使ってこんな授業ができるのではないかというアイデアを紹介していきます。

 今回は、2020年に開催される東京オリンピックのエンブレムを使って、デザインが与える印象や効果、デザインする上で考えるべきことを踏まえ、独自のロゴ案を考える授業を紹介します。今回の東京オリンピックのエンブレムは、ご存知の通り、前作の盗作疑惑により、前代見問の再公募をしたことで有名です。このニュースで、デザイン業界が注目されました。
こういったところから、デザインする上での目的・効果・考慮すべきことを学び、考えさせるいい教材になるのではないかなと思いました。

▼新エンブレムがこちら
f:id:ict_in_education:20160901155717j:plain
https://tokyo2020.jp/jp/games/emblem/より引用

▼旧エンブレム
f:id:ict_in_education:20160901155718j:plain
http://grapee.jp/73451より引用


▼授業前準備

  • 生徒たちに見せるための上記サイトや、ニュース記事やブログ、Twitter上での世間の反響のページをチェックし、用意しておく。
    • 「2020 東京オリンピック エンブレム」でキーワード検索すると、いろいろヒットすると思います。


▼授業の流れ

  1. エンブレムを見せる前に、他の人の意見を聴いたり、おしゃべりすることを禁止する。
  2. エンブレムを見せて、どんな印象を持ったかワークシートを無記名で書く。
    • 他人の意見や多数派の意見に流されてしまうことを考慮して、おしゃべり厳禁。
    • 周りの目を気にせず、本音を聴き出しやすくするために、無記名で書かせる。
  3. どんな印象を持ったかの内容を発表する。
  4. ネット上の反響(ニュース、ブログ、Twitter)を紹介する。
  5. 応募要項を読んで、デザインする上でチェックすべき内容は何かを確認する。
  6. 応募要項に合ったデザインになっているか分析する。
  7. 独自のデザイン案を作成する。
  8. コンセプトをまとめる。
  9. クラス内で投票をする。


 インターネットやTwitterなどのSNSが当たり前に使われるようになったことで、デザインが持つ影響力や世間の反響をネットを通じて知ることが容易になったと思います。上記のように、自分自身がどう感じたか、クラスの他の人がどう感じたか、ネット上ではどのように捉えられているか、デザインの目的は何だったのかなどを知ることで、さまざまな観点からデザインを考える必要性を感じてもらえるのではないかなと思います。
 また、エンブレムを分析した上で、独自のデザイン案を考えさせることで、デザインを通した問題発見・解決力も養うことができると思いました。


(前田)

【レポート】小学生×宇宙飛行士(山崎直子)「宇宙、人、夢をつなぐ」 異才発掘プロジェクトROCKET:7月スクーリング_No.3

 前回に引き続き、7月11日・12日に開催された、異才発掘プロジェクトROCKETのスクーリングの内容と感想をレポートします。今回は、12日午後に実施された宇宙飛行士の山崎直子氏による「宇宙、人、夢をつなぐ」というテーマの講義の様子をレポートいたします。11日に実施された「今の世界情勢を議論する」にて、子どもたちがISやイスラム教やテロなどをもとに、何が問題なのか、ルールとは何か、命より大事なものはあるのかということを熱くディスカッションした様子や、その後に受講したアラブ研究者の池内恵氏による「イスラーム世界からみた世界」というテーマの講義のレポートは、前回までにまとめているので、そちらも合わせてご一読いただければと思います。

blog.ict-in-education-cr.jp

blog.ict-in-education-cr.jp


f:id:ict_in_education:20160819141156j:plain
▲子どもたちに講演する山崎直子

宇宙の様子

 山崎氏は、2012年4月に、国際宇宙ステーションに行った経験から、宇宙での生活がどんなものだったのかを最初に話されました。

  • 発射から8分で到着するくらい早い。
  • 上に自分と同じ体重の人が3人乗っている感じ。
  • もともと自分たちも宇宙のカケラでできているということから、ふるさとへ訪ねていく感覚とも似ている。
  • 55年間で、560人が宇宙へ旅立っている(1年間に10人。これはずっと変わっていない)
  • エンジニア、研究職、宇宙食、カウンセラー、経済、法律家など、さまざまな業種、さまざまな性格の人が関わっている
  • そういうバラバラな個性の人が集まって共同生活をしている
  • 宇宙飛行士になる条件が、だんだんとゆるくなってきている(70歳の人が宇宙へいって帰還した実績がある)
  • 宇宙ステーションに6ヶ月滞在した。
  • 配線などがゴチャゴチャしている。
  • 文房具などはマジックテープで壁にとめている。
  • 換気ができないので、ホコリが宙に浮いているし、ホコリっぽい。
  • 締めきったこもったニオイがする。
  • 洗濯機で洗うことができないので、汚くなった服は捨ててしまう。
  • お風呂・シャワーはできないが、汗はかくので、タオルに水を染み込ませてふき取る。
  • 立って寝ていても普通に寝れるので、4畳半くらいのスペースでみんなで寝る。
  • 6ヶ月滞在の人は個室が割り当てられている。
  • パソコンやネットもある。
  • 宇宙食は、種類が豊富になってきている。
    • ごはん、おにぎり、ラーメン、サバの煮込み、栗など。
    • 農業も始めていて、赤レタス育てて食べた。
  • 生のフルーツが届くのが待ち遠しい。取り合いや勝手に食べてケンカになるくらい。
  • 無重力では上も下もないので、「上を見て」だと、きちんと伝わらない。「あなたの上を見て」と言うと伝わる。相手の立場にならないと会話ができない究極の状況。
  • ろうそくは、すぐに消えてしまう。空気が動かず二酸化炭素が溜まってしまうので。
  • イスラム教の人もロケットに乗る(お祈りの回数を減らしたりしている)
  • 下に地球が見えると思っていたら、地球が上にあった。
  • 90分ごとに4回日の出を見ることができる。
  • 3日で地球から月へ行ける、1週間で行って帰ってこれる。火星までは半年間かかる。
  • ペットボトル500mlを宇宙に送ろうと思ったら、50万円かかる(ロケットをとばすのに50億円かかる)
  • さまざまな研究がされている。決まりはない。
    • 線虫
      • 宇宙に行ったことで、老化をコントロールする遺伝子発見
      • 他の動物にも同じことがいえるのか研究している
    • ロシアは、宇宙に長期滞在することを研究してきた
      • バラバラに見える宗教、科学、芸術、マジック、伝統と発展、様々な分野の知識を結びつけていくことに寄与
    • 人間の体も変化する
      • 重力がないから、背骨と背骨の間が伸びる ⇒座高だけが伸びる
      • 体重は?
        • 振動のスピードを測ることで体重を測った ⇒減っていた(1日に数パーセント減る)
        • ひょろ長い体系になる。(頭大きく、身体や手足が細長い)

 山崎氏が実際に体験したお話は、とても興味深く、実際に行ってみた人でないとわからない事柄が多かったと思います。子どもたちもとても興味津々に聴いていました。こういった非現実的なこと、実際体験しないとわからないことに対して、わからない上で自分なりに考える・調べるというワークを組み合わせたらいいなと感じました。
 実際の話を聴く前に、グループでインターネットや書籍を使って調べ学習をし、その上で宇宙がどんなところなのかを発表やディスカッションすると、山崎氏の講義を聴く際に、自分たちが調べた内容と話の内容を比較して照らし合わせたり、質疑応答でも、事前に聴く内容を用意しておくということも自然とできます。
 そして、講義後に、話を聴く前と話を聴いた後での相違点や自分の考えの変化などをレポートにまとめたり、再度ディスカッションできると、講義を通しての自分の考え方や知識の変化を認識しやすくなるかと思います。こうすることで、自分で考える力・調べる力・情報を比較する力・聴く力・質問する力・分析する力などを養うことができると思いました。


宇宙までの道のり

 山崎氏が宇宙へ行くまでの経緯を話されました。どういった経緯で宇宙飛行士になることを目指したのか、宇宙飛行士になるまでにどういったプロセスがあったのかを、丁寧にお話されました。

山崎氏の人生

  • 動物が好きで、家の中でさなぎが孵化する様子をずっと見ていたりしていた
  • 札幌に7歳くらいまで住んでいて、そこの星空がきれいだった
  • その頃は、宇宙飛行士のことはよくわかっていなかった
  • 1984年 レーガン大統領が宇宙ステーションを作る計画を表明
  • 1985年 日本人3人が宇宙飛行士に選ばれた
  • 1986年 スペースシャトル・チャレンジャー号の爆発事故を受け、山崎氏は「私も行けたらいいな。亡くなった宇宙飛行士の想いや宇宙の素晴らしさを子どもたちに伝えたい」と思った。
  • エンジニアになって、ロケットを作るのに関われたらいいなと思った
  • 12歳頃ラーメン屋で、サリーを身につけた外国人が近づいてきてニコッと笑って「世界は広いのよ。あなたも頑張ってね」と話しかけられ、それが心に残っていて、海外にいきたいと思った
  • 24歳で、初めて海外留学へ
  • 寮に入れたものの、英語が通じず、電気がほしいと伝えようとしたが、電話を切られ、最初の1・2日は電気のない生活をした
  • 自家用ヘリを持ち、かつ操縦もできるおばあさんに出会い、「すごいな」と思い、自分もやはり宇宙飛行士になろうと挑戦した
  • 1回目は受からなかった。周りは、6回目・7回目でやっと受かったと言っていた。あきらめずにやることの大切さを学んだ
  • 宇宙飛行士のテストは、タスクベースのテスト
    • 必要なスキル、基礎を身につけることが大事で、変わった実技が多かった
      • 例:絵がない真っ白のジグソーパズルを3時間で完成させる
        • 外側はなんとかできるが、内側は難しい
        • うまくいい方法が見つからず、誰も完成できなかった
        • 完成したかどうかではなく、そのプロセスを見ている
        • 知識だけで最後まで通用するわけではない
        • 大人になっても、ずっと続けるということが大切
        • 「伸びしろの方が大切です」という言葉が印象的だった
  • 1999年 宇宙飛行士候補者として訓練スタート
    • 他2人が訓練している間、待ちなさいと言われて、エンジニアの仕事を続けた
    • 人工呼吸、注射の打ち方、宇宙服をきた訓練、蘇生練習などなど
  • 2002年 妊娠していたので、医学的不適合と判断され断念
    • 保育園に通いつつ、また訓練を続けた
  • 2003年 スペースシャトル・コロンビア号の事故
    • 事故のせいで、しばらくスペースシャトルが飛ばなくなり、宙ぶらりん状態になった
    • ロシアにて訓練を続けた
  • 2004年 アメリカNASAにて訓練をした
    • 19期生は「くじゃく」と呼ばれた。くじゃくは飛べない鳥ということから、「おまえらは飛べない」という皮肉も込められた名前だった(洗礼)
    • そうこうしていると、またスペースシャトルが飛ぶようになった
  • 2010年 スペースシャトルディスカバリーに搭乗
  • WODWER(未知)+FULL(たくさん) = すばらしい
  • 宇宙飛行士になる道のりや、宇宙に行ってみて感じたことは、道はひとつじゃないし、新しい道もある。ということ。

 学校でも、著名人の方などに特別講演をしてもらうことが何回かあるかと思いますが、そういったときに、その講演者の方がどんな人なのかを事前に調査するといいなと思いました。どんな人なのかを知らないまま話を聴くのと、知った上で話を聴くのでは、内容の受け取り方や講義後の質疑応答の内容の深さなどが変わってくると思います。


質疑応答

 山崎氏の体験談や宇宙飛行士になるまでの経緯について、お話いただいたあとに、質疑応答の時間がとられました。

  • 「宇宙には天国や神はいますか?」
    • 今の技術では、今はわからないです。
    • 将来、技術が発展したら、発見できるかもしれないですね。
  • 「もし神様がいたら、見つかる前に人間を滅ぼすと思うな」
    • どんな神様かわからないのでわからないですね。
    • 生物学者の人が言うには、最初の生き物を作ることは、1億円の宝くじが1万回あたるくらいの確率のようです。
    • 神さまではなく、サムシンググレイトが作ったという人もいる。
    • 天国があるのかどうかと考えて、牧師になった人や、芸術家になった人もいます。
    • あなたが宇宙に行ってから、実際にどう感じたかを話してみたいです。
  • 「宇宙飛行士になるのに選ばれた理由はわかりますか?」
    • 選ばれる理由・答えはない・わからないです。
    • こんな人を選ぶぞと決めているわけでもないみたいです。
    • 人に会って、今までにない新しい人や新しい価値を提供してくれそうという人を選んでいるのではないかなと思います。
    • 心臓に弱い人はダメというわけでなく、むしろ宇宙にいったら快適だったりします。
  • 「宇宙の良さは、未知以外にありますか?」
    • 価値観がガラッと変わります。
    • 上も下もない世界。
    • モノの見方が大きく変わります。机の上だけでなく、裏側を使ったりもするので、モノの使い方自体が違うので。
    • 逆に、地球に戻ってきたときに、今まで当たり前だった景色や、草のニオイなどに気づくようにもなります。
    • 今まで気づかなかったことにも気づくようになりました。
  • 「宇宙船内でケンカはありましたか?」
    • 大きなケンカはないですが、会話が少なくなったり、グループができたりとかはあります。
    • でも、何があっても夜ご飯はみんなで食べるというルールを決めていたので、そういったルールのおかげでうまくできていたと思います。
    • 協調性はある程度必要だけど、みんなが同じになるのではなくて、みんなが一人一人のやることを認め合うという感じです。
  • 宇宙酔いはありますか?」
    • あります。
    • 乗り物酔いと同じような感じですが、乗り物酔いしやすい人と、宇宙酔いしやすい人の相関関係はないです。
    • 乗り物酔いする人が宇宙では平気だったり、その逆もあります。
    • 乗り物の酔い止めのクスリも効きません。
    • 宇宙酔いにきく注射があります。
  • 「大西さんがネズミを持って行きましたが、寿命が延びる以外になにか結果はあると思いますか?」
    • 私が行ったときも、実は持って行ったのです。
    • 免疫が弱くなるという結果をとろうとしていると聞きました。
  • 「いちばん長くてどのくらい滞在した人がいますか?」
    • ロシア人の400日滞在が最長だと思います。
  • 「トイレのうんちはどうなる?」
    • タンクに貯めたものを徐々にリサイクルしていきます。
    • 不純物は、ゴミ用のタンクに貯めて、補給用のロケットがきたら、代わりにゴミを乗せてロケットごと燃やします。
    • それが、地球上で見る流れ星の可能性もあります。
  • 「ストレスはありますか?」
    • 宇宙にいるときよりも、宇宙から帰ってきたときの方が大変でした。
    • 45日かけて重力に慣れるようにしていきます。
  • 手塚治虫火の鳥の話の中に、宇宙自体が生き物で、人間も宇宙に寄生してるというのがある。どう思いますか?
    • 宇宙から見たときに、地球が生きてるような感じがしました。
    • 星にも寿命があるので、そういう考え方もできますし、実際そうかもしれません。
  • 「ワープの研究とかする人はいますか?」
    • 大の大人がワープの研究とか、一見ふざけたものや、すぐできなくてもなんらかの形でつながっていくこともあるので、ダメということはないです。
    • 渡り鳥の研究をしている人がいて、その研究内容がサーズが流行ったときに役にたったことがあります。
    • どこでつながるかは、わからないものです。
  • 「研究していて、これだけは実現したいことはありますか?
    • 宇宙へ行く方法です。
    • ロケットだと高いので、別の方法やエレベーターとか、何か実現したいです。

f:id:ict_in_education:20160819141157j:plain
山崎直子氏と記念撮影した様子


まとめ

 山崎氏の講演は、スライドを使って、実際に宇宙から見た地球の写真や宇宙ステーションの中の様子、宇宙飛行士のテストなどを見せながらお話をされたので、子どもたちも最初から最後まで釘づけになって聴いていました。11日に講演された池内恵氏のイスラム教のお話もですが、子どもたちにとって「知らない世界」をとても魅力的に伝えていらっしゃいました。11日の大討論会にてキーとなるコメントをしていたAくんが質疑応答の際に、「あの…本当に体験した人の…話とか…すごく……すごく…キレイだと思いました。」と、講演を聴いた上での言葉にならない気持ちや感動を、なんとか山崎氏に伝えようと頑張って言葉にしていたのが、微笑ましかったです。

 こういった非日常的な話が聴けるときこそ、感動したり、ワクワクしたりするものですが、それにプラスして「わからない事に対して、自分なりに考える」ということと、組み合わせたらいいなと感じました。情報社会で目まぐるしく技術や状況が変化する時代だからこそ、「わからない事に対して、自分なりに考える」というスキルが必要となってくると思います。自分なりに先を予測したり、自分なりに情報を分析したり、自分なりにアイデアを発想したり、あらゆることに自分事として考えるスキルが必要となると思います。


(前田)