教育ICTリサーチ / 造形教育研究部・考える力研究部 ~クリエイティブな人材育成研究ブログ~

「図工」「美術」「情報」「総合」など、発想力・創造力・考える力を育成する教育プログラムや方法、実践などを紹介します。

【開発秘話】 情報科カリキュラム 問題発見から小論文作成@八王子学園八王子高等学校 #1

 この連載では、八王子高等学校の情報科の授業の様子と共に、そのカリキュラムの開発秘話を紹介いたします。今回は、1学期のガイダンス後、スマホ利用における問題の解決策を小論文にまとめる授業についてです。
 今回は、計2回(4コマ)の授業のうち、1回目の授業内容について紹介します。1回目では、小論文を書くにあたって必要となる要素・情報を調べたり、設定したりと、小論文を書く準備が主となり、大まかに以下のような授業の流れを立てました。

  1. スマホ問題のアイデア出しとKJ法による分類
  2. 具体的な目標(ゴール)の設定
  3. 問題が起きる原因のアイデア出しとKJ法による分類
  4. 三角ロジックで根拠をまとめる

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小論文で、論理的にまとめる意識を持たせる!

 情報科で小論文を書かせるのは、珍しいことですが、小論文を最初に書かせるポイントとしては、文字だけで問題はなにか、解決策はなにか、どうしてその解決策がいいのか、その根拠を示すデータはなにかなど、論理的にまとめる意識を持ってもらうことを狙いとしています。

 高校1年生の段階で、PowerPointで面白そうなスライドを作ったり、アイデアとしてはおもしろいものを提案できる生徒は何人かいますが、それを相手にわかりやすく説明できたり、納得がいくような論理的な説明ができる生徒はほとんどいません。スライド作成のように見た目の要素があると、どうしてもそちらに意識がいってしまいがちなので、敢えて文字だけの小論文を書かせることで、見た目はなしで、論理的にまとめるということだけを意識させるようにしました。


経験知から問題を設定しやすい

 問題の設定は、問題解決を考えるよりも重要であると言われていますが、高校1年生で最初に取り組む内容なので、アイデア出しの段階で比較的出しやすいテーマになるように、「スマホ利用における問題」としました。中学生ではまだスマホを持たない生徒もたくさんいますが、高校1年生になると、9割以上の生徒がスマホを持つようになるので、生徒にとって身近なテーマです。「LINEいじめ」や「歩きスマホ」など、ニュースにも取り上げられている問題があるので、自分の経験知だけでなく、見聞きしたことのある問題をあげることもしやすいと思います。また、インターネットを使って「スマホ 問題」と検索すると、さまざまな問題を調査することもできるので、そこでキーワード検索や情報の信ぴょう性なども説明することができます。

 実際に、生徒たちが問題をあげるときは、なかなかアイデアを出せなくて困っている生徒はほとんどいないようでした。逆に、そのあとのグループでのKJ法で問題を分類するところで、まだ仲良くなりきれていない他の生徒との協働作業で多少のぎこちなさがあったように感じました。

▼個人個人で問題のアイデア出し
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▼グループで情報共有
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▼グループでKJ法で分類
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スマホ利用における問題を意識する・解決策を自分たちで考える

 このテーマのもう1つのポイントは、座学やビデオ講習、ゲスト講演などで一方的な知識として学ぶことが多い情報モラルについて、「スマホ利用における問題と解決策」というテーマを通して、生徒自身で問題を考え、理想となる目標を設定し、解決策を考えることです。一方的に知識を与えられるのではなく、自分たちで調べ、自分たちでアイデアを出し、その根拠となるデータを探すことで、生徒の主体的な学びになるように設計しています。

 アイデア出しのところまでは、グループで進めているので、自分だけでは思いつかなかった問題や解決策も共有できているようでした。ただ、時間的な問題もあり、グループ内でしか情報共有ができていないので、クラス全体で出てきた問題や解決策のアイデアを共有できると、より深みが出るだろうなと思いました。授業内での実施が難しければ、アイデア出しした付箋の写真データを印刷して配布したり、1人1台のタブレットがあれば、印刷せずともそのデータを配信することもできるのにな…と思いました。

 八王子学園では、高等学校ではまだ1人1台のタブレットはありませんが、中学校では昨年度から1年生だけ1人1台のタブレットを利用しているので、いずれ高校でも同じような環境になるのではないかな…と思います。

▼根拠となるデータがないかインターネットを使って調査
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▼三角ロジックの根拠と引用元をまとめている様子
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中学生に解決策を提案するという設定で考える

 今回のような社会問題となっている問題の解決を考えさせる授業でありがちなのが、「そもそもスマホがあるのが悪いからスマホをなくす」「スマホは便利だから問題はない」などのような解決策になっていないことを言う生徒が出てくることだと思います。こういった現象を防ぐために、解決策を提案する対象を設定することが重要だと思います。対象がないと上記のような主観的な考えにいってしまいがちですが、「初めてスマホを持った中学生に対して、スマホ利用における注意点やアドバイスをする」と設定されていると、具体的に考えやすいと思います。八王子学園中高一貫校なので、いずれは生徒たちが考えた解決策を中学生に提案したりするような時間が取れれば、中高での生徒同士のつながり強化や、高1の生徒にとっては、人に伝えるということの練習にもなると思います。

▼対象の中学生がどうなっている状態を目標とするのかを設定
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 1回目の内容は、生徒が考える部分が多く、1学期はネットワークの調子が悪かったことも重なって、想定以上に授業数が延びてしまったので、もう少し考えさせる部分を絞り込む必要があったなと感じました。特にアイデア出しとKJ法を2回ずつ実施するようにしていたので、2回目は口頭ベースでブレストするくらいにしてもよかったと思いました。

 次回は、後半2回目の授業内容を紹介します。


(前田)

学校で使えるクリエイティブデザインアイデア#18:アンケート(解答用紙)を記入しやすくする4つのコツ

 この連載では、学校の先生が普段使えるクリエイティブデザイン観点でのアイデアやポイントをご紹介させていただきます。
 今回は、学校から保護者やお子様宛に、アンケートを配布することがあると思いますが、その用紙を作る際に活用できる4つのコツを紹介します。

以下のアンケートを例に改善案とコツを紹介していきます。
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1)質問と回答欄を離さない!

 上記例は、パッと見きれいに作られたように見えるかもしれませんが、回答する人のことをまったく考えていないデザインになっています。紙の左側に質問があり、それに対応する回答欄が同じ行の右側にありますが、距離的に離れているので、どの質問の回答欄なのかがわかりにくく、それを補うために質問の項目数が書かれている状態です。これにより少しはカバーできているかもしれませんが、そもそも距離が離れて分かりにくいという問題は解決されていないので、回答する人の認知の流れとしては、以下のような感じになります。

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<1> 質問内容を読む。
<2> そのまま視線を右側へもっていき、解答欄にある数字を認識する
<3> 視線を左側に戻して、質問内容と質問の項目数を一致させる
<4> 視線を右側にもっていき、項目数が一致する欄に回答を書く

 回答に悩み、質問を読み返したりすることも考えると、何度も視線が紙の左右を行ったり来たりするので、それだけでとても疲れてしまいます。距離が離れてしまってわかりにくいのであれば、解決策としては、距離を近くすべきです。

 過去に、関連要素ごとにまとめてわかりやすくするグルーピングを紹介しましたが、それと似た考え方です。
blog.ict-in-education-cr.jp


2)回答ルールが異なる質問がある場合は、ルールごとにまとめる!

 上記例は、回答ルールとしては、①②③④の4段階でするものと、該当するものに「○」または「未」をつけるものの2種類ありますが、回答ルールごとにまとまってなく、以下のような構成になっています。

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  • ①②③④の4段階の回答
  • 「○」または「未」をつける回答
  • ①②③④の4段階の回答

 質問の内容がカテゴリ的に異なるので、まとめると逆にわかりにくくなってしまう場合は、まとめる必要はないかもしれませんが、上記例の場合は、同じようなカテゴリの質問なので、まとめた方が回答する人にとっては親切です。まとめていれば、回答ルールが変わったと思考を切り替える回数が1回で済みますが、上記例だと2回切り替える必要があります。

 また、回答ルールが切り替わるところがパッと見でわからないので、間違って回答を書いてしまう可能性もあります。上記例だと、回答ルールが切り替わっていることよりも、質問のカテゴリである「A 教育方針について」「B 活動内容について」が目立っていますが、質問のカテゴリを認識させるよりも、回答ルールが変わっていることを認識させる方が優先度としては高いのではないでしょうか。


3)誤解しない回答ルールにする!

 上記例は、4段階の評価を①②③④でつけ、①がいちばんいい評価(とてもあてはまる)で、④がいちばん悪い評価(まったくあてはまらない)となっています。しかし、この数字の評価では、逆にいちばん大きい数字の④がいちばんいい評価で、いちばん小さい数字の①がいちばん悪い評価だと誤解させてしまう可能性があります。このように誤解を招く可能性がある回答ルールだと、正確な回答を得ることが難しくなってしまいます。ABCDや◎〇△×のように、Aや◎がいちばんいい評価だと凡例を確認しなくてもわかる回答ルールにする必要があります。また、上記例は、質問項目に数字を使用しているので、評価の①②③④と被り、余計な混乱を招いてしまう可能性があります。


4)できるだけ回答者の手間を省く!

 4段階評価は、凡例を作って文章ではなく数字を書けばいいようにしていますが、選択式の回答なので、字さえも書かずに○だけすればいいようにできます。アンケートは答える時間を要し、質問内容によっては簡単には答えられないものもあったりして、面倒なので、自分に直接メリットのないものに積極的に答えようという人は少ないです。そういう人でも答えてもらえるように、できるだけ回答者の手間を省いてあげることが大事です。さらに、選択肢の中から○をするということがわかるように、選択肢自体に破線の○をつけると、より親切かと思います。



▼上記4つのコツをもとにした改善案
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 記入しやすくするコツなので、アンケートだけでなく、テストの解答用紙作りにも十分活用できます。作った際に、記入しにくい箇所はないか、記入の仕方で迷わせてしまうような箇所はないかという目線でチェックをしてみてください。


(前田)

【授業実践】桐蔭学園小学部:図画工作(コマドリアニメ by iPadを活用)

 2017年6月1日に、桐蔭学園小学部の神山先生の図画工作の授業を見学させていただきました。見学させていただいたのは、5年生の3・4時間目の授業で、「コマドリアニメ」というテーマで、好きなテーマ・好きな素材でiPadを使ってコマ撮りのアニメを制作するという授業でした。

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 今回見学させていただいた回は、撮影に入る児童と、素材作り準備の続きをする児童に分かれて作業の続きをする回でした。これまでに、導入で1回、企画で1回、素材準備で1回と撮影までに準備を進めていたようです。


ふだん見慣れている映像がこんな風に作られているということを知ってほしい

 神山先生に、この授業を実施するいちばんの学習目標は何かお聞きしたところ、ふだん児童たちがTVやYouTube、映画などで見慣れているさまざまな映像というものが、どんな風に作られているのかということを知ってほしいということを仰っておられました。日常的に見ているものでも、それができるまでの工程やどんなことをしているのかというのは、知らないものですが、その工程を知り、実際に体験しながら制作するというのは、とても意味があると思います。

 実際に撮影に入る前に、身近にどういう映像があるかを考えさせ、YouTubeなどでコマ撮りアニメのサンプルを見せてどんなことができるのか想像を膨らませ、絵コンテを描くということを実施されているとのことでした。いきなり映像を撮影しているのではなく、絵コンテという下書きをしていること、絵コンテをする意味を、実際に絵コンテを描くことを通して学ぶのがいいなと思いました。

▼児童が描いた絵コンテサンプル
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iPadで撮影・編集の操作面のハードルを下げる

 コマドリアニメの授業は、4・5年前から実施されていたようですが、iPadを使った授業は、今回が初めてとのことでした。今まではデジカメとパソコンで実施されていたようですが、撮影したデータをパソコンに取り組むこと、パソコンでの編集作業、児童への対応などなど、操作面で先生も児童もとても大変だったようです。そこで、なんと神山先生ご自身でiPad数台を購入し、今回の授業で活用されているとのことでした。もともと神山先生がApple製品好きということですが、複数台私物で購入される先生はあまり聞かないので、ビックリしました。それだけ先生の意気込みがあるのだなと思いました。

 使用アプリは、撮影・編集が簡単に感覚的にできるという理由で、「ストップモーションスタジオ」というアプリを使用されているとのことでした。実際に、素材準備が終わった児童数人に、操作方法を説明されていましたが、以下について説明しただけで、後は児童たちだけで撮影・編集を進めることができていました。

  • どこを押したら撮影できるのか説明
  • どこを押したら撮ったアニメを再生できるのか説明
  • 手軽に持ち運びしやすいので、落として壊すということがないように注意しよう
  • 三脚がないので、手ぶれがしやすい。手が動くと映像がガタガタしてしまうので、注意しよう
  • たくさん撮ってOK。あとで、いらない写真を削除しよう(削除の仕方を説明)
  • コマの順番を変えることもできる。出来上がったアニメを確認しながら、どういう流れにするか検討しよう(コマの移動方法を説明)
  • 音は入れない

▼実際にその場で撮影し、撮影したものを再生、編集、削除の仕方を説明している様子
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個人制作にすることで、全員に一通りの工程を経験させる

 コマドリアニメなどの動画作成は、機器の数の制限もあって、グループ制作で実施されることの方が多い印象ですが、神山先生の授業では個人制作で、テーマ・素材も自由という形で実施されていました。神山先生によると、「グループ制作だと力関係や役割ができてしまい、全員がiPad操作できなかったりしてしまうので、個人制作にしています」とのことでした。また「自由な発想を大事にしたいので、テーマ・素材は自由という形にしています」とのことでした。児童一人ひとりの経験や発想を大事にされているのだなと思いました。

 どういうことを学習目標とするのかで、個人制作がいいのか、グループ制作がいいのかは、変わってくるかと思います。同じ目標に対して他者と協力し合うことや、一人一人が役割をもってグループに貢献することを学ばせたいということであれば、グループ制作が適していると思います。他者との発想の享受を目的とするのであれば、アイデア出しだけグループでやって、アニメ制作自体は個人という風に、作業内容で分けることもできるかと思います。また、他者との発想の違いを体感させるのであれば、テーマや素材を統一にすることで、条件は同じなのに出来上がった作品は異なるということで、他者との違いにつなげることができると思います。同じコマ撮りアニメでも、教える先生方が何を教えたいのかで、授業がガラリと変わるなと感じました。

▼ストップモーションスタジオ(iTunes

ストップモーションスタジオ

ストップモーションスタジオ

  • CATEATER, LLC
  • 写真/ビデオ
  • 無料

▼ストップモーションスタジオ(Google Play
play.google.com


(前田)

【開発秘話】 情報科カリキュラム 1学期ガイダンス@八王子学園八王子高等学校

 この連載では、八王子高等学校の情報科の授業の様子と共に、そのカリキュラムの開発秘話を紹介いたします。今回は、1学期のガイダンスの授業についてです。

 八王子高等学校では、最初の授業で、教科書・ワークブック・USB・個人アカウント情報などの配布と共に、コンピュータ教室の利用方法の説明をした後、コンピュータの基本操作を学ぶ授業を実施しています。


ミッションに取り組み、報告書を完成させることで、コンピュータの基本操作が学べる!

 ただ単に、操作や作業を説明するのでは、退屈で飽きてしまうので、コンピュータのさまざまな操作をミッションとし、コンピュータに関する調査報告書にまとめるという内容にしています。調査報告書の体裁を整えたり、ミッション自体に取り組むことで、コンピュータの基本的な操作が学べるようになっています。
 ミッションに書かれている内容を見て、「これってどう確認するの?どうやるの?」と生徒自身に操作方法を知りたいと思わせてから、説明する流れになっているので、動機付けをしつつ、説明することができます。
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よく間違う操作を、最初に学べる設計に。

 これまで、生徒たちがよく間違う操作として、以下のようなものがあったので、それらを最初の段階で学ぶ内容にして、後々の授業で間違った操作をしないようにしました。

  • オブジェクトの削除をする際に、右クリックで切り取りをしてしまう
  • 操作を間違った際に、「元に戻す」ではなく、また同じ作業をしてしまう
  • USBが表示される場所を理解していない
  • コピー&貼り付けと、切り取り&貼り付けの違いを理解していない
  • アイコンや拡張子で、ファイルの違いを理解していない
  • ファイル名の変更の仕方がわからない
  • フォルダの階層構造を理解していないので、どこにファイルがあるか理解していない
  • ポップアップで表示される内容をきちんと読んでいない

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 どれも、基本的なことなので、今回だけでなく、ほぼ毎授業で操作に影響を与える知識のものです。ガイダンスで上記のことを一連して体験しながら学ぶことで、毎授業でテンプレートのファイルを開くことやUSBにファイルを保存すること、拡張子を消さずに保存することや、オブジェクトを削除するときはDeleteキーを押すことや、ポップアップの内容をきちんと読んでからどうするか判断するといったことなどが、作業として思い出しやすくなり、定着しやすくなりました。


 次回は、情報科の1人の先生が実施されていたブレストやKJ法を使った発想法のアイスブレイク的なワークを紹介します。
こちら、諸事情により、掲載不可となりました。大変申し訳ございませんが、ご理解の程よろしくお願いいたします。


(前田)

特別支援学校用プレゼンテーションアプリ「スマイルノート」@教育ITソリューションEXPO(EDIX)

 2017年5月17~19日に教育ITソリューションEXPO(EDIX)にて展示されていた、特別支援学校用プレゼンテーションアプリ「スマイルノート」を見させていただきました。

「スマイルノート」は、株式会社ユニティが筑波大学附属大塚特別支援学校と共同開発し、5月12日にリリースされたばかりのiPad専用アプリで、基本無料で使用できるものです。

スマイルノート

スマイルノート

  • UNI-TY, INC
  • 教育
  • 無料


発表内容を、オブジェクトごとに録音できる

 スマイルノートのいちばんの特徴は、オブジェクトごとに録音できる機能とのことでした。現状市場に出ている多くのアプリはスライドごとに録音することはできても、オブジェクトごとに録音することはできないようです。特別支援学校の生徒によっては、練習で話すことはできても本番だと話せなくなってしまう生徒さんや、人前での発言が難しい生徒さんもいるので、オブジェクトごとに発表内容を録音しておけば、急に話せなくなったとしても話せなくなった部分だけ音声を流して発表の補佐的役割を担うことができるとのことでした。
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PowerPointkeynoteを、シンプルにしたもの

 アプリを見るまでは、授業支援アプリで既にいくつかの学校にも導入されているロイロノートのようなものをイメージしていましたが、実際にはPowerPointの機能を削ぎ落して最低限の機能にしたものに、手書き機能と録音機能、写真や動画の撮影・挿入機能を付加した感じでした。機能やインターフェースがとてもシンプルなので、あまり迷うこともなく操作できるのが単純にいいなと思いました。また、配置したオブジェクトなどに手書きで書き込めるので、写真などで注目してほしい部分を手書きで示せるのもいいなと思いました。
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プレゼンだけでなく、日記や親御さんとの連絡張などの活用も

 特別支援学校では、毎日、生徒さんの活動の様子を、手書きの文章で親御さんに伝えているとのことで、そのやりとり自体もデジタルでできるようになれば、例えば生徒さんの様子を撮影した動画を貼り付けて、文章は補足程度につけるような連絡帳にすることもできるので、先生方の業務量の軽減かつ、親御さんにとっても文章だけよりも学校での様子をイメージしやすくなるのではないか、とのことで、スライドのテンプレートとして、プレゼン以外に連絡帳用テンプレートや日記用テンプレートなども用意されていました。
 現状は、まだクラウドにはなっていなく、対応端末もiPadのみということですが、他の端末にも対応し、クラウド化されれば、家にある機器にアプリを入れれば、情報共有が容易にできるので、家庭との情報共有も円滑になるだろうなと思いました。
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 実際に、アプリを使ってみて、本当にシンプルにデザインされているので、説明なしでもなんとなく触っているだけで操作でき、簡単にプレゼン資料が作れるのがいいなと思いました。特別支援学級向けということでしたが、小学校低学年~中学年でのプレゼンテーションでも活用できそうだなと思いました。また、作った作品を写真に撮って説明つきの作品集としてもいいですし、校内にあるさまざまなサインを写真に撮って、写真にどこで撮影したものか説明の音声を入れてフィールドワーク集として使うこともできそうだなと思いました。
 今後、有料機能も追加されていくようですが、iPadを導入されている学校は、今のところ全機能無料のようなので、試しに使ってみてはいかがでしょうか。


(前田)

【レポート】これならできる小学校のプログラミング~プログラミングで学ぶ教科の学習~@教育ITソリューションEXPO(EDIX)

 2017年5月18日に教育ITソリューションEXPO(EDIX)にて実施された、平井聡一郎氏(株式会社情報通信総合研究所 特別研究員)のセミナー「これならできる小学校のプログラミング~プログラミングで学ぶ教科の学習~」を聴講してきました。
※会場は、撮影NGだったので、資料の画像のみとなります。
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 プログラミング教育は、現状中学校の技術で必修、高校の情報で選択履修、大学でも必修としているところもあります。一見関係なさそうな美大でも必修としている科があり、私の出身である多摩美術大学情報デザイン学科も必修でしたし、プロのデザイナー(webやUIなど)として働いている人たちは、簡単なプログラムを知っている必要がある状況です。また、初等教育学科で造形教育を担当されている先生の授業でも、将来的に教える先生自身がプログラミングやデジタル技術などのツールを知っておく必要はあるだろうとのことで、VISCUIT(ビスケット)を取り入れた授業を実施されている方もいます。

 こういった背景もあり、プログラミングは、高校の情報科はもちろん、図画工作や美術教育においても、今後取り入れて活用できるもの、いずれは活用していかなくてはいけなくなるのではないかと考えています。

 個人的には具体例をたくさん知りたいと思って参加しましたが、セミナーの構成自体がとても面白いなと思いました。

  • 先生自身が教わったことがない!でも、やらなきゃいけない!という現実
  • 小学校は、「プログラミングを学ぶ」ではなく、「プログラミングで学ぶ」
  • 具体的な事例の紹介
  • 実際に実施する上での手順の提示

 特に最後の「実際に実施する上での手順の提示」が、その前に紹介されたプログラミング的思考をそのまま転用した感じでつながっていたので、勘のいい先生は、「あ・こういうことを考えるときに、プログラミング的思考が使えるのね!」と先生方に気づかせるような内容になっていたのではないかと思いました。


先生自身が教わったことがない!でも、やらなきゃいけない!という現実

 プログラミング教育については、その是非がさまざまなところで議論されていますが、2020年には次期学習指導要領を完全実施することが決まっています。そして、2018年には小学校で移行措置が始まります。「教わったことがないからどう教えたらいいかわからない」と言って、二の足を踏んでいる時間はない状況であることを、「でも、やらなきゃいけない!」という言葉がずばり言い当てていると思いました。
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 そして、時期学習指導要領の実施に向けて、5つのポイントで従来型の授業スタイルを変えていく必要があると仰っていました。

  • 一斉教授型の授業  → 学習者主体の授業
  • Teacher       → Facilitator
  • 待ちのある授業   → テンポのある授業
  • 一部の子どもの授業 → 全員参加の授業
  • 規則正しい授業   → 動きのある授業

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小学校は、「プログラミングを学ぶ」ではなく、「プログラミングで学ぶ」

 小学校のプログラミング教育でよくある誤解が、小学生にプログラミングを教えるのか?ということだと思います。平井氏も仰っていましたが、「プログラミング教育」という言葉自体がそういう誤解を与えてしまうので、「プログラミング的教育」や「プログラミング的思考」などと言い換えられることがよくありますが、要は「プログラミングを学ぶ」のではなく、「プログラミングで学ぶ」ということだと説明されていました。プログラミングは学習目的ではなく、手段としてプログラミング的思考を使って、各教科の指導内容を学ぶのだと仰っていました。
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 「このプログラミングで学ぶ」は、今回小学校でのことでしたが、例えば鉛筆や絵の具を使った表現が苦手という意識を持った児童生徒にプログラミングを使って、感じたことや発想したことを表現する授業を実施することも可能だと思いました。プログラミングを道具として使うので、技術や情報の教科と連携させることも可能だと思います。現状、図工や美術は授業数が減少傾向にあるので、他の教科との連携やコンピュータ技術についても合わせて学習できるような授業を実施することでも、教科としての重要性を訴えることができるのではないかと思います。


具体的な事例の紹介

 では、具体的にどういった教科でどんな風に教えることができるの?ということで紹介されていたのが、算数で正多角形の作図を行う学習や、理科で電気性質や働きを利用した道具があることを捉える学習、総合的な学習の時間では実際にプログラミングを体験しながら論理的思考力を身につける学習活動を行うなどが紹介されていました。
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 算数の正多角形の作図を行う学習の事例では、正確な繰り返し作業を行う必要があるところで、プログラミングのループを活用したり、その作業の中の一部(角度)を変えることでいろいろな正多角形を同じ様に作図することができるというところで、プログラミングの変数を活用するというものでした。確かに、図形の作図は、ある一定のアルゴリズムやルールがあるので、プログラミングとは相性が良さそうです。

 1~3年生では、タブレットやICTを使わずに、日常的な場面を切り取ってプログラミング的思考であるアルゴリズムを実感させることも可能であることを紹介されていました。例えば、朝ごはんを食べるという動作に対して、どういう手順で行ったらいいかを考えさせるワークは、プログラミングのシーケンスの考え方そのものであり、考えた手順で正しくできるかどうかをチェックするのはデバッグ、問題があればどこに原因があるか分析し、原因の仮説を立てて修正し、再度チェックするということ。正確に伝えるということ。情報を細分化すること。これらすべて、プログラミング的思考であると説明されていました。
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 この日常的な例で、プログラミング的思考が含まれていることを説明されていたのは、とてもわかりやすいなと思いました。「プログラミング=パソコンを使う」「プログラミング=コードを書く」といった漠然としたイメージをもった先生方にとって「え、プログラミング教育ってこういうことなの?」と身近に思ってもらえる例えだったのではないかなと思いました。

 特に、学校の先生の中には、デジタルやICTを使った授業自体を敵視される方もいらっしゃるかと思いますが、そういった先生でも、デジタルを使わないプログラミング的思考を取り入れた授業であれば実施できるのではないかと思います。

 例えば図画工作の授業で言えば、計画性を持って制作することを学ばせる際に、上記のようなシーケンスの考え方をそのまま応用して教えることができるかと思います。単に「先のことを考えて制作しよう」と言われるよりも、手順を言語化して順番に並べて、実際に制作しながら手順を見直すとするだけでも、実行する前に計画を立てる力や考えた計画を状況に合わせて修正する力が身につくのではないかと思います。


実際に実施する上での手順の提示

 具体的な事例紹介の段階で、朝ごはんを食べるという動作に対して、どういう手順で行ったらいいかを考えさせる事例を紹介されていましたが、最後に、先生方が実際にプログラミング教育を実施するにあたって、どういう手順で行ったらいいかを、4ステップに分けて紹介されていたのが面白いなと思いました。まずは、先生方が日常生活において、プログラミング的思考を活用できるということを実感していくことが大事なのだと思いました。
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(前田)

【授業実践】東京学芸大学附属小金井小学校:図画工作(本からとび出したお気に入りの場面 by電子黒板とカメラを活用)

 2017年5月11日に、東京学芸大学附属小金井小学校の守屋先生の図画工作の授業を見学させていただきました。見学させていただいたのは、4年生の3・4時間目の授業で、「本からとび出したお気に入りの場面」というテーマで、紙粘土と本型の段ボールを使って立体的な場面を制作するという授業でした。

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図書室にある本(マンガ以外)の1シーンを作り、図書室前で展示もするので、図書室にある本を読んでどこのシーンを作るか考えさせたり、観た人にどう感じてほしいかも考えて制作します。図書室と連携している点もいいですね。


授業での活動目的に沿って、無理なくICTを活用されていた

 昨今、ICTを活用した授業実践事例で紹介されるものはタブレットを活用した授業が多いですが、1人1台分導入している学校はまだまだ少なく、1クラス分の台数のタブレットを導入し、それを全体で共有している学校や、そもそもタブレットはまだ導入していないという学校が多いと思います。前述のように、生徒自身が使用する授業事例が多いからか、「ICTを活用した授業を見学させてください」とお話すると、「児童生徒は実際触らないですが、いいですか?」という返信をいただくことが多い印象です。研究会などでも、先生がICTを活用した事例よりも、児童生徒が活用した授業事例の発表の方が多いのだろうかと思いました。

 今回、見学させていただいた守屋先生の授業は、児童が活用するのではなく、先生が授業内で説明したり、授業内の様子を共有するために活用されていらっしゃいました。その活用方法が、授業の活動目的に合った無理のない活用だと感じたので、ご紹介させていただきます。


先生が作った見本の作品を、書画カメラで遠くからでも見えるように

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 どういったものを作るのか、児童たちにイメージさせるために、先生が作った見本の作品を実物自体も見せつつ、書画カメラを利用して遠くの席からも見えるようにして活用されていました。書画カメラは、後ろの席の児童にも見やすくわかりやすく説明できたり、実物を見せながら説明できるので、図画工作ではいちばん活用されているICT機器ではないかと思います。昔から使われている機器ですが、やはり実物がリアルタイムで大きく投影されるだけで、どの部分を説明しているのかがわかりやすいですし、「あとで実物を近くで見てみたい」という気持ちにもなるので、単純に興味喚起など学習意欲の向上にもつながるのではないかな…と思いました。


教室内を見て回りながらデジカメで作品を撮影し、電子黒板でスライドショー投影

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 実際の制作に入ると、守屋先生はカメラ片手に教室内を見て回り、児童の質問に答えたり、声をかけたり、制作の様子を見ながら、児童たちの作品をカメラでいくつか撮影していました。そして、ある程度撮影できた段階で、データをパソコンの方へ移し、電子黒板上でスライドショーで投影していました。児童は自分の制作に熱中・集中しているので、なかなか他の児童の作品やどうやって制作しているかを観ることはできません。観れても自分の席の近くの数人くらいですが、こうやって先生が教室を見て回りながら撮影した作品を、電子黒板でスライドショーで投影して「見える化」してあげることで、自分だけでは思いつかない制作方法や表現方法を共有することができるなと思いました。

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 実際に制作の様子を観ていると、ダンボールに下書きをして構成を考えてから作り始める児童や、粘土に絵の具の色がきれいに混ざるまで一生懸命練っている児童、パレット上で一度色を作ってから粘土に混ぜる児童、粘土に直接絵の具の色を混ぜる児童、指に絵の具をつけて描く児童、背景から作る児童、キャラクターから作る児童、定規で平らな背景を作る児童、分度器で角度を測る児童など、1人1人がそれぞれで考え、工夫をして制作しているのがいいなと感じました。今回は作り始めたばかりということもあるかもしれませんが、撮影された写真はスライドショーで投影されただけでしたが、次回の授業始めなどで、〇〇さんはこういった制作の工夫をしていたよと紹介や説明をして、情報共有をすることもできるなと思いました。

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 児童自身がカメラを使って自分たちの作品の過程を記録する授業は、図画工作以外にもありますが、今回のような児童自身は制作に集中させ、先生が撮影する活用方法は、図画工作ならではの活用方法ではないかなと感じました。児童は制作に集中したまま、先生も教室内を観て回るのは今までと変わらないので、その中で「あ、これ、クラス全体で共有したいな」と思った作り方だったり作品を撮影するだけなので、先生の負担自体も少なく、なおかつICTを活用することで情報共有が容易になっていると感じました。


制作途中の作品に、電子黒板上で描き込み、計画性を持って制作することを説明

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 制作の時間が終わり、まとめの時間で、この先どういったものを作っていくのかを考えながら作っていくことを意識させるために、ある児童が作った制作途中の作品を電子黒板上で投影して、例えばどういったものを作っていくのかをペイントで例を描き込み、説明されていました。この使い方もデジタルならではできる指導法だなと思いました。作品実物自体に付け加えたり描き加えたりすると、どうしてもそのイメージが植え付けられて引っ張られてしまいますし、そもそも自分の作品に手を入れてはほしくないものです。また言葉だけで説明すると、うまくイメージできない児童もいると思います。その点、デジタルだと実物には一切手を付けずに、イメージで説明することができるので、とてもいいなと思いました。

 また授業後に、この活用方法について守屋先生にお話を伺った際に、仰っていたことにもとても共感しました。「平面的な作品のときは、デジタル上でも描き込みはしません。今回は紙粘土を使った立体作品なので、イメージに引っ張られすぎずに説明することができると思います。」こういった守屋先生の発言から、ICTを使うことを主軸として考えているのではなく、「こういった授業をしたい」「こういったことを教えたい」という目的に合った、無理のないICT活用が実現されているのではないかなと感じました。


(前田)