教育ICTリサーチ / 造形教育研究部・考える力研究部 ~クリエイティブな人材育成研究ブログ~

「図工」「美術」「情報」「総合」など、発想力・創造力・考える力を育成する教育プログラムや方法、実践などを紹介します。

【授業実践】埼玉県立川越南高等学校:情報(AIの仕組みを用いた、問題発見解決の授業)

 2017年10月31日に、埼玉県立川越南高等学校にて開催された国立教育政策研究所による教育課程研究指定事業の公開研究授業を見学させていただきました。今回公開授業で見学させていただいたのは、春日井先生による3年生の情報科の授業で、情報と科学の分野で「AIや機械学習の仕組みを知り、変化する情報社会での人間の役割を考える」というテーマで全17回実施する中の10回目の内容で、前時までに学んだユースケース図を使って「どんな学習データをコンピュータに与えれば、どんな人に有用になるか」をアイデア出しする授業でした。
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ユースケース図とは、統一モデリング言語で定義されている図の1つであり、利用者の要求に対してどういう機能・システムを用意するかを表した図です。
ユースケース図について、参考サイト
www.itsenka.com

 最近では、Google HomeやClova WAVEなどのAIスピーカーが販売され、高校生にとってもAI(人工知能)の技術や影響度が身近でイメージしやすいものになってきたように感じます。今話題の情報技術がどういう仕組みになっているのかを考え、その技術を使って自分たちでアイデアを考えるという授業は、生徒にとっても興味を持ちやすいテーマで実践的でとてもいいなと思いました。


グループ同士の交流で、視野を広げ、プレゼンの練習も

 今回の授業の流れは、最初に個人でユースケース図を使って「どんな学習データをコンピュータに与えれば、どんな人に有用になるか」をアイデア出しした後に、グループ内でアイデアを共有し、1つに絞り込みます。今回はアイデア出しがほとんどだったので、ICT自体は、先生が説明の際にプロジェクタや書画カメラを使用したり、アイデア出しするのに、生徒がネット検索したりするくらいでした。そして、授業終わりの方で、席に残って自分たちの内容を説明する人と、他のグループの内容を聞きに行く人に分かれて、少人数単位でのプレゼン(アイデア説明)をしました。

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インターネットで、情報を探しながらアイデアを出している様子

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生徒が書いたユースケース

 今回、個人でもグループ単位でも、なかなかアイデアが出せずにいるグループがいくつかあったので、この最後のワークがあったことで、そういったアイデア出しに苦戦していたグループにとっては、自分たちの内容を再考するきっかけになったのではないかなと思いました。

 また、アイデアを説明することはプレゼンの練習にもなります。いきなりクラス全体で説明となると緊張したり、うまく話せないものですが、3・4人相手に緊張せずに会話するように自然と説明できている様子が、いいなと思いました。クラス全体でプレゼンするまでに、徐々に人数規模を増やしたり、説明量を増やしたりすれば、プレゼンの段階学習にもなると思いました。

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自分たちのアイデアを説明している様子

 今回は、聞く側の生徒には、2種類の付箋が渡されていて、黄色の付箋にはいいと思ったこと、青色の付箋には改善点を書く指示でしたが、なかなか書くことが難しかったようで、多くは感想になっていました。他の学校の生徒でも、人のアイデアに対して批判的な意見を書く・言うことに慣れていないケースがよくあるので、アイデアに対して本質を問うような質問の仕方を以下のような型として提示してあげると、お互いにより深い気づきが得られるのではないかなと思いました。

  • 5W2Hを問う
    • いつ、どういうときに使うのですか?
    • どこで使うのですか?
    • 具体的にどんな人が使うのですか? →女性?男性?年齢は?日本人?職業は?
    • 具体的に学習データはどんなものですか?
    • どうして~にしたのですか?
    • どのくらいの人が使うと思いますか?
  • 別の選択肢・可能性を問う
    • Aではなく、Bでないとダメなのですか?それは、なぜですか?

次期学習指導要領と、中学校とのつながりを考慮した授業設計

 春日井先生の事前協議によると、今年度検討したこととして、来年告示予定の次期学習指導要領の内容と、既に告示されている中学校での人工知能の扱いを意識されたようです。

 現行の学習指導要領では、「社会と情報」か「情報の科学」のどちらか選択必修という形になっており、その選択自体は各学校に委ねられている状況です。実質80%の高校で「社会と情報」が実施されているようですが、次期学習指導要領では、「社会と情報」と「情報の科学」が合わさった「情報Ⅰ」が必修となり、科学的な理解や情報技術の仕組みの理解、プログラミングの理解といった要素が含まれるようになってくる予定です。

 中学校の技術・家庭の学習指導要領でも、既に人工知能について触れており、人工知能と人間の役割の違いや人工知能の利用方法の検討などは含まれているようです。仕組みまでは学習しないようですが、中学校の時点で既に「人工知能」という言葉が書かれていることから、春日井先生は、国民共通の素養として学習すべきであり、高校「情報科」が担う内容になるのではないかと考えたそうです。

 これらのことを考慮して、春日井先生は、人工知能の仕組みを理解することと、その仕組みを使った問題解決の授業を設計されたとのことでした。かなり挑戦的なテーマですが、目まぐるしく変化する情報社会について教える情報科が、先々のことを考えてそれに見合った授業内容を提供していく・変化させていくことは、とても大事であり、重要なことだなと思いました。


(前田)

【授業実践】横浜国立大学教育学部附属鎌倉小学校:図画工作(立体作品と一緒に遠近法で撮影 by デジタルカメラを活用)

 2017年9月28日に、横浜国立大学教育学部附属鎌倉小学校の竹田先生の図画工作の授業を見学させていただきました。見学させていただいたのは、6年生の授業で、「立体作品と一緒に遠近法で撮影」というテーマで、デジタルカメラを使って前時までに製作した立体作品と自分自身を一緒に撮影するという授業でした。

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撮影の様子

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写真を確認している様子

 5台のデジタルカメラを使って、グループに分かれて協力して撮影をしました。自分が作った立体作品と自分が一緒に写るので、撮影するのは自分ではない他の誰かということになります。


作品が自分のものだと思える経験と、作品の記録として

 立体作品は、宿泊研修で言った八ヶ岳の思い出をテーマとして作ったもので、その立体作品を使った新たな作品作り(写真)と記録も兼ねていました。デジカメで遠近法を使った撮影はよくありますが、今回、児童が作った立体作品と一緒に撮影するという制限を設けた理由を、竹田先生に伺ったところ、「子どもの作品を全て取っておきたいけれども、ライフスタイルや住宅事情の関係で、大型の立体作品や素材の異なる組み合わせの作品の保管は難しい場合もあり、立体作品を家に持って帰ることを好まない保護者の方もいたようです。作品が自分のものだと思える経験と作品自体の記録の意味もあります。」とのことでした。

 平面作品であれば、飾っておいたり、重ねて保管することもしやすいけども、立体作品となると、場所をとってしまうので保管のしづらさから、あまり好まない保護者の方もいらっしゃるようです。せっかく作った作品もそういった扱いをされてしまうと、児童たちからしたら作らなければ良かったと思ってしまいますし、そもそも立体作品を作るモチベーションも減ってしまうだろうなと思いました。今回のように記録として残すことで、そういった気持ちが多少緩和されるかもしれないなと思いました。

 また、記録のための撮影だけだと、「作ってもとっておけない…」と思って作った立体作品をきれいに撮影しようと思いづらかったりしますが、新たな作品作りとしていることで、立体作品を写真の中でどう使おうか、どこに配置しようかと考えるようになるので、撮影に対しての児童のモチベーションも向上されているのではないかなと感じました。


友だちに撮ってもらうことで、別の発想に出会えるように

 作品の記録となると、自分自身で撮影するのが通常ですが、竹田先生の授業では、自分は作品と一緒に撮られる側になり、別の児童に撮ってもらう形にしていました。自分ではない誰かが撮ることで、立体作品を作った意図とは異なる写真作品ができやすくなるようにして、自分とは異なる発想に出会えるようにしているとのことでした。


目的のための試行錯誤と、他人にわかりやすく伝えること

 今回、児童たちがグループで撮影している様子を見ていて感じたのは、「遠近法」という撮影方法を使っていることで、以下のような試行錯誤が自然と発生していました。

  • 作品と人をどう構成したら面白いかを想像し、グループ内で共有していた
  • こういう写真を撮りたいという目的のために、
    • どこで撮影したらいいかを考えていた
    • どのように撮影したらいいかを考えていた
    • 作品はどう置いたらいいかを考えていた
    • 作品と人はどのくらい距離をとったらいいかを考えていた
    • 人・作品にピントを合わせるには、どうしたらいいかを考えていた
  • 撮った写真を確認して、
    • さっき撮影した方法をどう改善したらいいかを考えていた
    • もっとこうしようという新たな発想が生まれていた
  • 被写体である人に、どう伝えたらわかりやすくなるかを考えていた

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作品の置き方を試行錯誤している様子

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撮影する場所、作品と人の距離、ポーズを試行錯誤している様子

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撮影する場所、作品と人の距離、ポーズを試行錯誤している様子

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モニターで確認している様子

 今はやりの、プログラミング的思考が作品作りを通して自然と行われているなと感じました。遠近法による撮影や、他人と協力すること、使いこなせてはいないデジタルカメラを使うことで、頭で想像しているようには、なかなかうまく撮影できないということが、児童たちが自然と試行錯誤したくなる要素となっているように感じました。

 授業最後の鑑賞会で、撮影のコンセプトや感想を説明してもらう際に、どういう経緯でこの写真に行きついたのかを、その前に撮った写真を使いながら説明しているグループがいて、試行錯誤や思考のプロセスが写真を通して見える化されているのがいいなと思いました。最終的な作品や出来栄えに意識がいってしまいがちですが、そこに至るまでにどういうプロセスがあったのか、どう工夫したのか、どう思考したのかが、とても重要だと思います。気軽に試行錯誤でき、それが記録として残り、共有できるのは、デジタルカメラタブレットの写真の強みだと思いました。


(前田)

【レポート】「写真で工作してみよう」を体験して@第41 回児童造形教育研究会

 2017年8月3日に東京学芸大学附属竹早小学校にて開催された、第41回児童造形教育研究会に参加してきました。実技研修会は、A~Eのコース選択制になっており、私は、筑波大学附属小学校の北川先生の「パスタマシーンで版画」と、桐蔭学園小学部の粟津先生の「写真で工作してみよう」があるDコースを受けました。

 今回は、実技研修会で受けた、桐蔭学園小学部の粟津先生の「写真で工作してみよう」について、紹介したいと思います。
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 前回のブログにて、筑波大学附属小学校の北川先生の「パスタマシーンで版画」の様子をレポートさせていただきましたので、そちらもご覧ください。
blog.ict-in-education-cr.jp


作品である写真を、鑑賞し、かつ素材として工作する

 粟津先生の「写真で工作してみよう」は、まず数名のグループでどんな写真を撮るか話し合いをし、写真としての作品を考え、撮影することから始まりました。そして後半は、個人制作で、撮影した写真を素材として使って、切り抜いて使ったり、加筆したり、必要なカットを追加したりなどして工作で新たな作品作りをする2部構成となっていました。

 受ける前にイメージしていたのは、写真を素材として新たに作品制作する際に、素材である写真の構図やテーマに引っ張られてしまい、似たような作品ができてしまうのではないかな…?あまり多種多様な作品は出来にくいのではないかな…?と思っていました。特に、写真もコラージュ作品も平面的なものであり、デジカメで構図などもいろいろ試せるので、平面作品として熟慮されて作られた写真を別の発想で再構築するのは難しいのではないかと思ったのです。

 しかし、実際にやってみると、確かに設定やシーンは似るものの、その中でさまざまな表現の仕方だったり、詳細な設定が異なったり、敢えて写真のテーマとは違うテーマで作ってみたりなど、想像していたよりも、多様な作品が出てきたことにビックリしました。授業のテーマを聞いて想像した結果と実際の結果が異なったのがおもしろいなと思いました。実際に、粟津先生が子どもたちに授業をした際も、ストーリーのある写真のコラージュでも、表現に幅は出たと仰っていました。

 また、単純に作品を素材として使うこと自体、しかも切ったり折ったり加工してしまうことが面白いなと思いました。作品を鑑賞するだけでなく、素材にすることで、鑑賞するだけでは得られない視点を持つことができると思いました。

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▲写真作品
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▲上の写真を素材として使ったコラージュ作品1
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▲コラージュ作品2
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▲コラージュ作品3
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▲コラージュ作品4
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▲コラージュ作品5


デジタル(カメラ)とアナログ、両方の表現を学べる

 デジタルカメラでは、話し合い→撮影→鑑賞確認→再撮影→確認…というような、試行錯誤を経て作品を作り上げることができます。デジタルはアナログに比べて試行錯誤が容易なので、頭の中で考えるだけでなく、「まずは撮ってみよう!」とアイデアをすぐに形にでき、すぐに確認できるのが強みだと思います。一方アナログは、手で切る折るちぎるなどの感覚を得て、作りながら五感を使って発想したり、積み上げて作り上げていくことが、デジタルでは得にくい強みかなと思います。
 今回は、その両方の表現を2段階の作品作りになっていることで、得られているように感じました。


 今回、撮影はグループで実施し、工作は個人でしたが、粟津先生の学校の授業では、撮影も工作も個人で実施したりもされたそうです。同テーマ・同写真でも、発想や表現によって多様な作品ができるという多様性を感じさせたい場合は、グループ撮影が向いていると思いますが、カメラの操作方法や撮影のポイントなどを一人ひとりに学ばせたい場合は、個人撮影が適しているかと思います。学習目標によって変化させることができるのもいいと思いました。


(前田)

【レポート】パスタマシンを使った版画授業を体験して@第41 回児童造形教育研究会

 2017年8月3日に東京学芸大学附属竹早小学校にて開催された、第41回児童造形教育研究会に参加してきました。
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 当日のプログラムは、以下のような流れになっており、全体会ではさまざまな先生方の実践発表を聴き、実技研修会1では竹早小学校の児童と一緒に授業を体験し、午後の実技研修会では大人だけでまた別の授業を体験し、最後にディスカッションをするという盛りだくさんの内容でした。

  1. 全体会 「学びを深める造形的なやりとり」
  2. 実技研修会1
  3. 実技研修会2
  4. ざっくばらん討論会

 実技研修会は、A~Eのコース選択制になっており、私は、筑波大学附属小学校の北川先生の「パスタマシーンで版画」と、桐蔭学園小学部の粟津先生の「写真で工作してみよう」があるDコースを受けました。

 今回は、実技研修会で受けた、筑波大学附属小学校の北川先生の「パスタマシーンで版画」について、紹介したいと思います。


子どもたちの反応を観ながら、自分も体験

 学校の先生向けに開催されている研究会のよくある形としては、いろんな学校の先生方の実践発表を聴くことがほとんどだと思います。実習系の授業であればワークショップ形式で自ら体験するという形もあるかと思います。今回参加して面白いなと思ったのは、竹早小学校の児童たちと参加者として混ざりながら授業を体験できたことです。
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 児童がどんな反応をするのか、どんなものを制作するのか、どういう素材を使おうとするのか、どんな動きをするのか、いろいろ観察しながら、自分自身も参加者として体験することで、授業自体の面白さや魅力を体感することができたと思いました。参加している児童も、公開授業などで教室中を取り囲む大人たちのたくさんの視線を感じながら受ける授業とは違って、緊張している面持ちはなく、和やかでリラックスしている様子で、より自然体の児童の様子を観ることができたと思いました。

 当日の空間としては、以下のような感じでした。
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パスタマシーン+カーボン紙の版画で多様な使い方ができる

 インクを使った版画だと、原画に対してインクを塗り、その転写が紙に写るので、出来上がりが左右反転することを考慮して作る必要があり、これがなかなか難しかったりしますが、パスタマシーンとカーボン紙を使った版画だと、原画とカーボン紙と転写する紙と厚さを持たせるための紙数枚を重ねてパスタマシーンで圧をかけるので、カーボン紙と転写する紙の位置を工夫すれば、原画通りの作品を作ることができます。もちろん、原画と左右対称の作品を作ることもできます。また、厚さを持たせるための紙の枚数を変えることで、転写されるカーボンの濃さを調整できます。原画に貼り付ける素材によっても硬さ・厚さ・素材感が異なるので、いろいろな表現が可能になります。
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 このインクではできない多様な表現ができることで、どうしたら見本のような表現ができるのか、どうしたらほかの子ができたような表現ができるのか、あの素材を使ったらどうなるかな?と児童たちの思考を巡らせることができているように感じました。


必ずしも思い通りにならないことが試行錯誤のポイント

 北川先生は、以下の3つだけを簡単に説明しただけで、あとは自由に制作に入らせていました。

  • 原画に素材を貼る際ののりの付け方
  • 原画とカーボン紙と転写する紙とその他の紙をサンドしてパスタマシーンで圧をかけること
  • 素材がある場所

 制作していく中で、同じ席の人がどんな原画を作っているか、転写してどんな作品になったかを見ながら制作できるのも良かったですが、北川先生がちょっと変わった作品を作った人を取り上げて、どうやって作ったのか児童たちに考えさせるようにしていたのがいいなと思いました。最初にできることを紹介してしまうのではなく、その場の参加者から生まれ出てきたものから手法を考えさせるのがとてもいいなと思いました。
注目された本人も嬉しいだろうし、それをどうやって作ったのか周りの児童から質問されて教えてあげるというやりとりも自然と生まれてくると思いました。
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 また、手法がわかったとしても、素材の付け方や紙の厚さなどによってなかなか思い通りにいかないことも、どうしたら理想に近づけるかを考え、仮説を立て、実行し、結果からさらに考えるという試行錯誤を通した作品作りができているのもいいなと思いました。


参加者として、思考の切り替わりを感じた空間作り

 また、参加者として感じたのは、作る上で自分自身の思考の切り替わるタイミングが、空間作りによってしやすくなっているのではないかと感じました。それぞれの空間で感じた私の思考を元にまとめてみました。

  • 素材コーナー
    • どんな素材を使おうかな?この素材を使ったらこんな感じになるかな?
    • 素材と向き合う
  • 自分の席
    • どんな作品にしようかな?素材をどこにどう貼ろうかな?他の子はどんなのを作っているかな?
    • 目標をイメージして定め、作る
  • パスタマシーンまでの道
    • どんな風になるかな?出来上がりを想像してワクワク。
    • 期待と想像
  • パスタマシーンの待ち時間
    • どんな風になるかな?出来上がりを想像してワクワク。他の子の作品も気になる!
    • 期待と想像と情報収集
  • パスタマシーンで印刷
    • ワクワクマックス!どんな風になったかな?
  • 自分の席までの道
    • どうしてこうなったんだろう?どうすれば良かったんだろう?
    • 目標(理想)と結果(現実)から思考・分析

▼素材コーナー
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▼今回制作された版画作品と原画の一例
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 今回の北川先生の研修会では、ICTを使ってはいませんでしたが、児童たちに自ら考えさせる要素がたくさん入った授業だと思ったので、ご紹介させていただきました。また、実際の授業では、児童たちの作品をプロジェクタで投影して、作りながら他の児童の作品を見ることができるようにもされているようです。児童を1つの場所に集めて説明するのは、実物を見るという意味ではいいですが、人数によっては、後ろの方の児童は見にくくなってしまうので、プロジェクタなどで大きく投影されれば、見やすく説明もわかりやすくなると思います。
北川先生の他の授業も見学してみたいと思いました。


(前田)

【開発秘話】 情報科カリキュラム 問題発見から小論文作成@八王子学園八王子高等学校 #1

 この連載では、八王子高等学校の情報科の授業の様子と共に、そのカリキュラムの開発秘話を紹介いたします。今回は、1学期のガイダンス後、スマホ利用における問題の解決策を小論文にまとめる授業についてです。
 今回は、計2回(4コマ)の授業のうち、1回目の授業内容について紹介します。1回目では、小論文を書くにあたって必要となる要素・情報を調べたり、設定したりと、小論文を書く準備が主となり、大まかに以下のような授業の流れを立てました。

  1. スマホ問題のアイデア出しとKJ法による分類
  2. 具体的な目標(ゴール)の設定
  3. 問題が起きる原因のアイデア出しとKJ法による分類
  4. 三角ロジックで根拠をまとめる

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小論文で、論理的にまとめる意識を持たせる!

 情報科で小論文を書かせるのは、珍しいことですが、小論文を最初に書かせるポイントとしては、文字だけで問題はなにか、解決策はなにか、どうしてその解決策がいいのか、その根拠を示すデータはなにかなど、論理的にまとめる意識を持ってもらうことを狙いとしています。

 高校1年生の段階で、PowerPointで面白そうなスライドを作ったり、アイデアとしてはおもしろいものを提案できる生徒は何人かいますが、それを相手にわかりやすく説明できたり、納得がいくような論理的な説明ができる生徒はほとんどいません。スライド作成のように見た目の要素があると、どうしてもそちらに意識がいってしまいがちなので、敢えて文字だけの小論文を書かせることで、見た目はなしで、論理的にまとめるということだけを意識させるようにしました。


経験知から問題を設定しやすい

 問題の設定は、問題解決を考えるよりも重要であると言われていますが、高校1年生で最初に取り組む内容なので、アイデア出しの段階で比較的出しやすいテーマになるように、「スマホ利用における問題」としました。中学生ではまだスマホを持たない生徒もたくさんいますが、高校1年生になると、9割以上の生徒がスマホを持つようになるので、生徒にとって身近なテーマです。「LINEいじめ」や「歩きスマホ」など、ニュースにも取り上げられている問題があるので、自分の経験知だけでなく、見聞きしたことのある問題をあげることもしやすいと思います。また、インターネットを使って「スマホ 問題」と検索すると、さまざまな問題を調査することもできるので、そこでキーワード検索や情報の信ぴょう性なども説明することができます。

 実際に、生徒たちが問題をあげるときは、なかなかアイデアを出せなくて困っている生徒はほとんどいないようでした。逆に、そのあとのグループでのKJ法で問題を分類するところで、まだ仲良くなりきれていない他の生徒との協働作業で多少のぎこちなさがあったように感じました。

▼個人個人で問題のアイデア出し
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▼グループで情報共有
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▼グループでKJ法で分類
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スマホ利用における問題を意識する・解決策を自分たちで考える

 このテーマのもう1つのポイントは、座学やビデオ講習、ゲスト講演などで一方的な知識として学ぶことが多い情報モラルについて、「スマホ利用における問題と解決策」というテーマを通して、生徒自身で問題を考え、理想となる目標を設定し、解決策を考えることです。一方的に知識を与えられるのではなく、自分たちで調べ、自分たちでアイデアを出し、その根拠となるデータを探すことで、生徒の主体的な学びになるように設計しています。

 アイデア出しのところまでは、グループで進めているので、自分だけでは思いつかなかった問題や解決策も共有できているようでした。ただ、時間的な問題もあり、グループ内でしか情報共有ができていないので、クラス全体で出てきた問題や解決策のアイデアを共有できると、より深みが出るだろうなと思いました。授業内での実施が難しければ、アイデア出しした付箋の写真データを印刷して配布したり、1人1台のタブレットがあれば、印刷せずともそのデータを配信することもできるのにな…と思いました。

 八王子学園では、高等学校ではまだ1人1台のタブレットはありませんが、中学校では昨年度から1年生だけ1人1台のタブレットを利用しているので、いずれ高校でも同じような環境になるのではないかな…と思います。

▼根拠となるデータがないかインターネットを使って調査
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▼三角ロジックの根拠と引用元をまとめている様子
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中学生に解決策を提案するという設定で考える

 今回のような社会問題となっている問題の解決を考えさせる授業でありがちなのが、「そもそもスマホがあるのが悪いからスマホをなくす」「スマホは便利だから問題はない」などのような解決策になっていないことを言う生徒が出てくることだと思います。こういった現象を防ぐために、解決策を提案する対象を設定することが重要だと思います。対象がないと上記のような主観的な考えにいってしまいがちですが、「初めてスマホを持った中学生に対して、スマホ利用における注意点やアドバイスをする」と設定されていると、具体的に考えやすいと思います。八王子学園中高一貫校なので、いずれは生徒たちが考えた解決策を中学生に提案したりするような時間が取れれば、中高での生徒同士のつながり強化や、高1の生徒にとっては、人に伝えるということの練習にもなると思います。

▼対象の中学生がどうなっている状態を目標とするのかを設定
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 1回目の内容は、生徒が考える部分が多く、1学期はネットワークの調子が悪かったことも重なって、想定以上に授業数が延びてしまったので、もう少し考えさせる部分を絞り込む必要があったなと感じました。特にアイデア出しとKJ法を2回ずつ実施するようにしていたので、2回目は口頭ベースでブレストするくらいにしてもよかったと思いました。

 次回は、後半2回目の授業内容を紹介します。


(前田)

学校で使えるクリエイティブデザインアイデア#18:アンケート(解答用紙)を記入しやすくする4つのコツ

 この連載では、学校の先生が普段使えるクリエイティブデザイン観点でのアイデアやポイントをご紹介させていただきます。
 今回は、学校から保護者やお子様宛に、アンケートを配布することがあると思いますが、その用紙を作る際に活用できる4つのコツを紹介します。

以下のアンケートを例に改善案とコツを紹介していきます。
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1)質問と回答欄を離さない!

 上記例は、パッと見きれいに作られたように見えるかもしれませんが、回答する人のことをまったく考えていないデザインになっています。紙の左側に質問があり、それに対応する回答欄が同じ行の右側にありますが、距離的に離れているので、どの質問の回答欄なのかがわかりにくく、それを補うために質問の項目数が書かれている状態です。これにより少しはカバーできているかもしれませんが、そもそも距離が離れて分かりにくいという問題は解決されていないので、回答する人の認知の流れとしては、以下のような感じになります。

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<1> 質問内容を読む。
<2> そのまま視線を右側へもっていき、解答欄にある数字を認識する
<3> 視線を左側に戻して、質問内容と質問の項目数を一致させる
<4> 視線を右側にもっていき、項目数が一致する欄に回答を書く

 回答に悩み、質問を読み返したりすることも考えると、何度も視線が紙の左右を行ったり来たりするので、それだけでとても疲れてしまいます。距離が離れてしまってわかりにくいのであれば、解決策としては、距離を近くすべきです。

 過去に、関連要素ごとにまとめてわかりやすくするグルーピングを紹介しましたが、それと似た考え方です。
blog.ict-in-education-cr.jp


2)回答ルールが異なる質問がある場合は、ルールごとにまとめる!

 上記例は、回答ルールとしては、①②③④の4段階でするものと、該当するものに「○」または「未」をつけるものの2種類ありますが、回答ルールごとにまとまってなく、以下のような構成になっています。

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  • ①②③④の4段階の回答
  • 「○」または「未」をつける回答
  • ①②③④の4段階の回答

 質問の内容がカテゴリ的に異なるので、まとめると逆にわかりにくくなってしまう場合は、まとめる必要はないかもしれませんが、上記例の場合は、同じようなカテゴリの質問なので、まとめた方が回答する人にとっては親切です。まとめていれば、回答ルールが変わったと思考を切り替える回数が1回で済みますが、上記例だと2回切り替える必要があります。

 また、回答ルールが切り替わるところがパッと見でわからないので、間違って回答を書いてしまう可能性もあります。上記例だと、回答ルールが切り替わっていることよりも、質問のカテゴリである「A 教育方針について」「B 活動内容について」が目立っていますが、質問のカテゴリを認識させるよりも、回答ルールが変わっていることを認識させる方が優先度としては高いのではないでしょうか。


3)誤解しない回答ルールにする!

 上記例は、4段階の評価を①②③④でつけ、①がいちばんいい評価(とてもあてはまる)で、④がいちばん悪い評価(まったくあてはまらない)となっています。しかし、この数字の評価では、逆にいちばん大きい数字の④がいちばんいい評価で、いちばん小さい数字の①がいちばん悪い評価だと誤解させてしまう可能性があります。このように誤解を招く可能性がある回答ルールだと、正確な回答を得ることが難しくなってしまいます。ABCDや◎〇△×のように、Aや◎がいちばんいい評価だと凡例を確認しなくてもわかる回答ルールにする必要があります。また、上記例は、質問項目に数字を使用しているので、評価の①②③④と被り、余計な混乱を招いてしまう可能性があります。


4)できるだけ回答者の手間を省く!

 4段階評価は、凡例を作って文章ではなく数字を書けばいいようにしていますが、選択式の回答なので、字さえも書かずに○だけすればいいようにできます。アンケートは答える時間を要し、質問内容によっては簡単には答えられないものもあったりして、面倒なので、自分に直接メリットのないものに積極的に答えようという人は少ないです。そういう人でも答えてもらえるように、できるだけ回答者の手間を省いてあげることが大事です。さらに、選択肢の中から○をするということがわかるように、選択肢自体に破線の○をつけると、より親切かと思います。



▼上記4つのコツをもとにした改善案
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 記入しやすくするコツなので、アンケートだけでなく、テストの解答用紙作りにも十分活用できます。作った際に、記入しにくい箇所はないか、記入の仕方で迷わせてしまうような箇所はないかという目線でチェックをしてみてください。


(前田)

【授業実践】桐蔭学園小学部:図画工作(コマドリアニメ by iPadを活用)

 2017年6月1日に、桐蔭学園小学部の神山先生の図画工作の授業を見学させていただきました。見学させていただいたのは、5年生の3・4時間目の授業で、「コマドリアニメ」というテーマで、好きなテーマ・好きな素材でiPadを使ってコマ撮りのアニメを制作するという授業でした。

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 今回見学させていただいた回は、撮影に入る児童と、素材作り準備の続きをする児童に分かれて作業の続きをする回でした。これまでに、導入で1回、企画で1回、素材準備で1回と撮影までに準備を進めていたようです。


ふだん見慣れている映像がこんな風に作られているということを知ってほしい

 神山先生に、この授業を実施するいちばんの学習目標は何かお聞きしたところ、ふだん児童たちがTVやYouTube、映画などで見慣れているさまざまな映像というものが、どんな風に作られているのかということを知ってほしいということを仰っておられました。日常的に見ているものでも、それができるまでの工程やどんなことをしているのかというのは、知らないものですが、その工程を知り、実際に体験しながら制作するというのは、とても意味があると思います。

 実際に撮影に入る前に、身近にどういう映像があるかを考えさせ、YouTubeなどでコマ撮りアニメのサンプルを見せてどんなことができるのか想像を膨らませ、絵コンテを描くということを実施されているとのことでした。いきなり映像を撮影しているのではなく、絵コンテという下書きをしていること、絵コンテをする意味を、実際に絵コンテを描くことを通して学ぶのがいいなと思いました。

▼児童が描いた絵コンテサンプル
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iPadで撮影・編集の操作面のハードルを下げる

 コマドリアニメの授業は、4・5年前から実施されていたようですが、iPadを使った授業は、今回が初めてとのことでした。今まではデジカメとパソコンで実施されていたようですが、撮影したデータをパソコンに取り組むこと、パソコンでの編集作業、児童への対応などなど、操作面で先生も児童もとても大変だったようです。そこで、なんと神山先生ご自身でiPad数台を購入し、今回の授業で活用されているとのことでした。もともと神山先生がApple製品好きということですが、複数台私物で購入される先生はあまり聞かないので、ビックリしました。それだけ先生の意気込みがあるのだなと思いました。

 使用アプリは、撮影・編集が簡単に感覚的にできるという理由で、「ストップモーションスタジオ」というアプリを使用されているとのことでした。実際に、素材準備が終わった児童数人に、操作方法を説明されていましたが、以下について説明しただけで、後は児童たちだけで撮影・編集を進めることができていました。

  • どこを押したら撮影できるのか説明
  • どこを押したら撮ったアニメを再生できるのか説明
  • 手軽に持ち運びしやすいので、落として壊すということがないように注意しよう
  • 三脚がないので、手ぶれがしやすい。手が動くと映像がガタガタしてしまうので、注意しよう
  • たくさん撮ってOK。あとで、いらない写真を削除しよう(削除の仕方を説明)
  • コマの順番を変えることもできる。出来上がったアニメを確認しながら、どういう流れにするか検討しよう(コマの移動方法を説明)
  • 音は入れない

▼実際にその場で撮影し、撮影したものを再生、編集、削除の仕方を説明している様子
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個人制作にすることで、全員に一通りの工程を経験させる

 コマドリアニメなどの動画作成は、機器の数の制限もあって、グループ制作で実施されることの方が多い印象ですが、神山先生の授業では個人制作で、テーマ・素材も自由という形で実施されていました。神山先生によると、「グループ制作だと力関係や役割ができてしまい、全員がiPad操作できなかったりしてしまうので、個人制作にしています」とのことでした。また「自由な発想を大事にしたいので、テーマ・素材は自由という形にしています」とのことでした。児童一人ひとりの経験や発想を大事にされているのだなと思いました。

 どういうことを学習目標とするのかで、個人制作がいいのか、グループ制作がいいのかは、変わってくるかと思います。同じ目標に対して他者と協力し合うことや、一人一人が役割をもってグループに貢献することを学ばせたいということであれば、グループ制作が適していると思います。他者との発想の享受を目的とするのであれば、アイデア出しだけグループでやって、アニメ制作自体は個人という風に、作業内容で分けることもできるかと思います。また、他者との発想の違いを体感させるのであれば、テーマや素材を統一にすることで、条件は同じなのに出来上がった作品は異なるということで、他者との違いにつなげることができると思います。同じコマ撮りアニメでも、教える先生方が何を教えたいのかで、授業がガラリと変わるなと感じました。

▼ストップモーションスタジオ(iTunes

ストップモーションスタジオ

ストップモーションスタジオ

  • CATEATER, LLC
  • 写真/ビデオ
  • 無料

▼ストップモーションスタジオ(Google Play
play.google.com


(前田)