教育ICTリサーチ / 造形教育研究部・考える力研究部 ~クリエイティブな人材育成研究ブログ~

「図工」「美術」「情報」「総合」など、発想力・創造力・考える力を育成する教育プログラムや方法、実践などを紹介します。

【開発秘話】 情報科カリキュラム 1学期ガイダンス@八王子学園八王子高等学校

 この連載では、八王子高等学校の情報科の授業の様子と共に、そのカリキュラムの開発秘話を紹介いたします。今回は、1学期のガイダンスの授業についてです。

 八王子高等学校では、最初の授業で、教科書・ワークブック・USB・個人アカウント情報などの配布と共に、コンピュータ教室の利用方法の説明をした後、コンピュータの基本操作を学ぶ授業を実施しています。


ミッションに取り組み、報告書を完成させることで、コンピュータの基本操作が学べる!

 ただ単に、操作や作業を説明するのでは、退屈で飽きてしまうので、コンピュータのさまざまな操作をミッションとし、コンピュータに関する調査報告書にまとめるという内容にしています。調査報告書の体裁を整えたり、ミッション自体に取り組むことで、コンピュータの基本的な操作が学べるようになっています。
 ミッションに書かれている内容を見て、「これってどう確認するの?どうやるの?」と生徒自身に操作方法を知りたいと思わせてから、説明する流れになっているので、動機付けをしつつ、説明することができます。
f:id:ict_in_education:20170615202607j:plain


よく間違う操作を、最初に学べる設計に。

 これまで、生徒たちがよく間違う操作として、以下のようなものがあったので、それらを最初の段階で学ぶ内容にして、後々の授業で間違った操作をしないようにしました。

  • オブジェクトの削除をする際に、右クリックで切り取りをしてしまう
  • 操作を間違った際に、「元に戻す」ではなく、また同じ作業をしてしまう
  • USBが表示される場所を理解していない
  • コピー&貼り付けと、切り取り&貼り付けの違いを理解していない
  • アイコンや拡張子で、ファイルの違いを理解していない
  • ファイル名の変更の仕方がわからない
  • フォルダの階層構造を理解していないので、どこにファイルがあるか理解していない
  • ポップアップで表示される内容をきちんと読んでいない

f:id:ict_in_education:20170615202602j:plain
 どれも、基本的なことなので、今回だけでなく、ほぼ毎授業で操作に影響を与える知識のものです。ガイダンスで上記のことを一連して体験しながら学ぶことで、毎授業でテンプレートのファイルを開くことやUSBにファイルを保存すること、拡張子を消さずに保存することや、オブジェクトを削除するときはDeleteキーを押すことや、ポップアップの内容をきちんと読んでからどうするか判断するといったことなどが、作業として思い出しやすくなり、定着しやすくなりました。


 次回は、情報科の1人の先生が実施されていたブレストやKJ法を使った発想法のアイスブレイク的なワークを紹介します。
こちら、諸事情により、掲載不可となりました。大変申し訳ございませんが、ご理解の程よろしくお願いいたします。


(前田)

特別支援学校用プレゼンテーションアプリ「スマイルノート」@教育ITソリューションEXPO(EDIX)

 2017年5月17~19日に教育ITソリューションEXPO(EDIX)にて展示されていた、特別支援学校用プレゼンテーションアプリ「スマイルノート」を見させていただきました。

「スマイルノート」は、株式会社ユニティが筑波大学附属大塚特別支援学校と共同開発し、5月12日にリリースされたばかりのiPad専用アプリで、基本無料で使用できるものです。

スマイルノート

スマイルノート

  • UNI-TY, INC
  • 教育
  • 無料


発表内容を、オブジェクトごとに録音できる

 スマイルノートのいちばんの特徴は、オブジェクトごとに録音できる機能とのことでした。現状市場に出ている多くのアプリはスライドごとに録音することはできても、オブジェクトごとに録音することはできないようです。特別支援学校の生徒によっては、練習で話すことはできても本番だと話せなくなってしまう生徒さんや、人前での発言が難しい生徒さんもいるので、オブジェクトごとに発表内容を録音しておけば、急に話せなくなったとしても話せなくなった部分だけ音声を流して発表の補佐的役割を担うことができるとのことでした。
f:id:ict_in_education:20170608213340j:plain


PowerPointkeynoteを、シンプルにしたもの

 アプリを見るまでは、授業支援アプリで既にいくつかの学校にも導入されているロイロノートのようなものをイメージしていましたが、実際にはPowerPointの機能を削ぎ落して最低限の機能にしたものに、手書き機能と録音機能、写真や動画の撮影・挿入機能を付加した感じでした。機能やインターフェースがとてもシンプルなので、あまり迷うこともなく操作できるのが単純にいいなと思いました。また、配置したオブジェクトなどに手書きで書き込めるので、写真などで注目してほしい部分を手書きで示せるのもいいなと思いました。
f:id:ict_in_education:20170608213336j:plain


プレゼンだけでなく、日記や親御さんとの連絡張などの活用も

 特別支援学校では、毎日、生徒さんの活動の様子を、手書きの文章で親御さんに伝えているとのことで、そのやりとり自体もデジタルでできるようになれば、例えば生徒さんの様子を撮影した動画を貼り付けて、文章は補足程度につけるような連絡帳にすることもできるので、先生方の業務量の軽減かつ、親御さんにとっても文章だけよりも学校での様子をイメージしやすくなるのではないか、とのことで、スライドのテンプレートとして、プレゼン以外に連絡帳用テンプレートや日記用テンプレートなども用意されていました。
 現状は、まだクラウドにはなっていなく、対応端末もiPadのみということですが、他の端末にも対応し、クラウド化されれば、家にある機器にアプリを入れれば、情報共有が容易にできるので、家庭との情報共有も円滑になるだろうなと思いました。
f:id:ict_in_education:20170608212604j:plain


 実際に、アプリを使ってみて、本当にシンプルにデザインされているので、説明なしでもなんとなく触っているだけで操作でき、簡単にプレゼン資料が作れるのがいいなと思いました。特別支援学級向けということでしたが、小学校低学年~中学年でのプレゼンテーションでも活用できそうだなと思いました。また、作った作品を写真に撮って説明つきの作品集としてもいいですし、校内にあるさまざまなサインを写真に撮って、写真にどこで撮影したものか説明の音声を入れてフィールドワーク集として使うこともできそうだなと思いました。
 今後、有料機能も追加されていくようですが、iPadを導入されている学校は、今のところ全機能無料のようなので、試しに使ってみてはいかがでしょうか。


(前田)

【レポート】これならできる小学校のプログラミング~プログラミングで学ぶ教科の学習~@教育ITソリューションEXPO(EDIX)

 2017年5月18日に教育ITソリューションEXPO(EDIX)にて実施された、平井聡一郎氏(株式会社情報通信総合研究所 特別研究員)のセミナー「これならできる小学校のプログラミング~プログラミングで学ぶ教科の学習~」を聴講してきました。
※会場は、撮影NGだったので、資料の画像のみとなります。
f:id:ict_in_education:20170606144743j:plain

 プログラミング教育は、現状中学校の技術で必修、高校の情報で選択履修、大学でも必修としているところもあります。一見関係なさそうな美大でも必修としている科があり、私の出身である多摩美術大学情報デザイン学科も必修でしたし、プロのデザイナー(webやUIなど)として働いている人たちは、簡単なプログラムを知っている必要がある状況です。また、初等教育学科で造形教育を担当されている先生の授業でも、将来的に教える先生自身がプログラミングやデジタル技術などのツールを知っておく必要はあるだろうとのことで、VISCUIT(ビスケット)を取り入れた授業を実施されている方もいます。

 こういった背景もあり、プログラミングは、高校の情報科はもちろん、図画工作や美術教育においても、今後取り入れて活用できるもの、いずれは活用していかなくてはいけなくなるのではないかと考えています。

 個人的には具体例をたくさん知りたいと思って参加しましたが、セミナーの構成自体がとても面白いなと思いました。

  • 先生自身が教わったことがない!でも、やらなきゃいけない!という現実
  • 小学校は、「プログラミングを学ぶ」ではなく、「プログラミングで学ぶ」
  • 具体的な事例の紹介
  • 実際に実施する上での手順の提示

 特に最後の「実際に実施する上での手順の提示」が、その前に紹介されたプログラミング的思考をそのまま転用した感じでつながっていたので、勘のいい先生は、「あ・こういうことを考えるときに、プログラミング的思考が使えるのね!」と先生方に気づかせるような内容になっていたのではないかと思いました。


先生自身が教わったことがない!でも、やらなきゃいけない!という現実

 プログラミング教育については、その是非がさまざまなところで議論されていますが、2020年には次期学習指導要領を完全実施することが決まっています。そして、2018年には小学校で移行措置が始まります。「教わったことがないからどう教えたらいいかわからない」と言って、二の足を踏んでいる時間はない状況であることを、「でも、やらなきゃいけない!」という言葉がずばり言い当てていると思いました。
f:id:ict_in_education:20170606144740j:plain

f:id:ict_in_education:20170606144731j:plain

 そして、時期学習指導要領の実施に向けて、5つのポイントで従来型の授業スタイルを変えていく必要があると仰っていました。

  • 一斉教授型の授業  → 学習者主体の授業
  • Teacher       → Facilitator
  • 待ちのある授業   → テンポのある授業
  • 一部の子どもの授業 → 全員参加の授業
  • 規則正しい授業   → 動きのある授業

f:id:ict_in_education:20170606144737j:plain

f:id:ict_in_education:20170606144734j:plain


小学校は、「プログラミングを学ぶ」ではなく、「プログラミングで学ぶ」

 小学校のプログラミング教育でよくある誤解が、小学生にプログラミングを教えるのか?ということだと思います。平井氏も仰っていましたが、「プログラミング教育」という言葉自体がそういう誤解を与えてしまうので、「プログラミング的教育」や「プログラミング的思考」などと言い換えられることがよくありますが、要は「プログラミングを学ぶ」のではなく、「プログラミングで学ぶ」ということだと説明されていました。プログラミングは学習目的ではなく、手段としてプログラミング的思考を使って、各教科の指導内容を学ぶのだと仰っていました。
f:id:ict_in_education:20170606144842j:plain

f:id:ict_in_education:20170606144839j:plain

 「このプログラミングで学ぶ」は、今回小学校でのことでしたが、例えば鉛筆や絵の具を使った表現が苦手という意識を持った児童生徒にプログラミングを使って、感じたことや発想したことを表現する授業を実施することも可能だと思いました。プログラミングを道具として使うので、技術や情報の教科と連携させることも可能だと思います。現状、図工や美術は授業数が減少傾向にあるので、他の教科との連携やコンピュータ技術についても合わせて学習できるような授業を実施することでも、教科としての重要性を訴えることができるのではないかと思います。


具体的な事例の紹介

 では、具体的にどういった教科でどんな風に教えることができるの?ということで紹介されていたのが、算数で正多角形の作図を行う学習や、理科で電気性質や働きを利用した道具があることを捉える学習、総合的な学習の時間では実際にプログラミングを体験しながら論理的思考力を身につける学習活動を行うなどが紹介されていました。
f:id:ict_in_education:20170606144836j:plain

f:id:ict_in_education:20170606144833j:plain

f:id:ict_in_education:20170606144830j:plain

 算数の正多角形の作図を行う学習の事例では、正確な繰り返し作業を行う必要があるところで、プログラミングのループを活用したり、その作業の中の一部(角度)を変えることでいろいろな正多角形を同じ様に作図することができるというところで、プログラミングの変数を活用するというものでした。確かに、図形の作図は、ある一定のアルゴリズムやルールがあるので、プログラミングとは相性が良さそうです。

 1~3年生では、タブレットやICTを使わずに、日常的な場面を切り取ってプログラミング的思考であるアルゴリズムを実感させることも可能であることを紹介されていました。例えば、朝ごはんを食べるという動作に対して、どういう手順で行ったらいいかを考えさせるワークは、プログラミングのシーケンスの考え方そのものであり、考えた手順で正しくできるかどうかをチェックするのはデバッグ、問題があればどこに原因があるか分析し、原因の仮説を立てて修正し、再度チェックするということ。正確に伝えるということ。情報を細分化すること。これらすべて、プログラミング的思考であると説明されていました。
f:id:ict_in_education:20170606144933j:plain

 この日常的な例で、プログラミング的思考が含まれていることを説明されていたのは、とてもわかりやすいなと思いました。「プログラミング=パソコンを使う」「プログラミング=コードを書く」といった漠然としたイメージをもった先生方にとって「え、プログラミング教育ってこういうことなの?」と身近に思ってもらえる例えだったのではないかなと思いました。

 特に、学校の先生の中には、デジタルやICTを使った授業自体を敵視される方もいらっしゃるかと思いますが、そういった先生でも、デジタルを使わないプログラミング的思考を取り入れた授業であれば実施できるのではないかと思います。

 例えば図画工作の授業で言えば、計画性を持って制作することを学ばせる際に、上記のようなシーケンスの考え方をそのまま応用して教えることができるかと思います。単に「先のことを考えて制作しよう」と言われるよりも、手順を言語化して順番に並べて、実際に制作しながら手順を見直すとするだけでも、実行する前に計画を立てる力や考えた計画を状況に合わせて修正する力が身につくのではないかと思います。


実際に実施する上での手順の提示

 具体的な事例紹介の段階で、朝ごはんを食べるという動作に対して、どういう手順で行ったらいいかを考えさせる事例を紹介されていましたが、最後に、先生方が実際にプログラミング教育を実施するにあたって、どういう手順で行ったらいいかを、4ステップに分けて紹介されていたのが面白いなと思いました。まずは、先生方が日常生活において、プログラミング的思考を活用できるということを実感していくことが大事なのだと思いました。
f:id:ict_in_education:20170606144930j:plain

f:id:ict_in_education:20170606144925j:plain

f:id:ict_in_education:20170606144922j:plain

f:id:ict_in_education:20170606144919j:plain


(前田)

【授業実践】東京学芸大学附属小金井小学校:図画工作(本からとび出したお気に入りの場面 by電子黒板とカメラを活用)

 2017年5月11日に、東京学芸大学附属小金井小学校の守屋先生の図画工作の授業を見学させていただきました。見学させていただいたのは、4年生の3・4時間目の授業で、「本からとび出したお気に入りの場面」というテーマで、紙粘土と本型の段ボールを使って立体的な場面を制作するという授業でした。

f:id:ict_in_education:20170526161848j:plain

図書室にある本(マンガ以外)の1シーンを作り、図書室前で展示もするので、図書室にある本を読んでどこのシーンを作るか考えさせたり、観た人にどう感じてほしいかも考えて制作します。図書室と連携している点もいいですね。


授業での活動目的に沿って、無理なくICTを活用されていた

 昨今、ICTを活用した授業実践事例で紹介されるものはタブレットを活用した授業が多いですが、1人1台分導入している学校はまだまだ少なく、1クラス分の台数のタブレットを導入し、それを全体で共有している学校や、そもそもタブレットはまだ導入していないという学校が多いと思います。前述のように、生徒自身が使用する授業事例が多いからか、「ICTを活用した授業を見学させてください」とお話すると、「児童生徒は実際触らないですが、いいですか?」という返信をいただくことが多い印象です。研究会などでも、先生がICTを活用した事例よりも、児童生徒が活用した授業事例の発表の方が多いのだろうかと思いました。

 今回、見学させていただいた守屋先生の授業は、児童が活用するのではなく、先生が授業内で説明したり、授業内の様子を共有するために活用されていらっしゃいました。その活用方法が、授業の活動目的に合った無理のない活用だと感じたので、ご紹介させていただきます。


先生が作った見本の作品を、書画カメラで遠くからでも見えるように

f:id:ict_in_education:20170526161856j:plain

f:id:ict_in_education:20170526161853j:plain

 どういったものを作るのか、児童たちにイメージさせるために、先生が作った見本の作品を実物自体も見せつつ、書画カメラを利用して遠くの席からも見えるようにして活用されていました。書画カメラは、後ろの席の児童にも見やすくわかりやすく説明できたり、実物を見せながら説明できるので、図画工作ではいちばん活用されているICT機器ではないかと思います。昔から使われている機器ですが、やはり実物がリアルタイムで大きく投影されるだけで、どの部分を説明しているのかがわかりやすいですし、「あとで実物を近くで見てみたい」という気持ちにもなるので、単純に興味喚起など学習意欲の向上にもつながるのではないかな…と思いました。


教室内を見て回りながらデジカメで作品を撮影し、電子黒板でスライドショー投影

f:id:ict_in_education:20170526161940j:plain
 実際の制作に入ると、守屋先生はカメラ片手に教室内を見て回り、児童の質問に答えたり、声をかけたり、制作の様子を見ながら、児童たちの作品をカメラでいくつか撮影していました。そして、ある程度撮影できた段階で、データをパソコンの方へ移し、電子黒板上でスライドショーで投影していました。児童は自分の制作に熱中・集中しているので、なかなか他の児童の作品やどうやって制作しているかを観ることはできません。観れても自分の席の近くの数人くらいですが、こうやって先生が教室を見て回りながら撮影した作品を、電子黒板でスライドショーで投影して「見える化」してあげることで、自分だけでは思いつかない制作方法や表現方法を共有することができるなと思いました。

f:id:ict_in_education:20170526161937j:plain

f:id:ict_in_education:20170526161934j:plain

 実際に制作の様子を観ていると、ダンボールに下書きをして構成を考えてから作り始める児童や、粘土に絵の具の色がきれいに混ざるまで一生懸命練っている児童、パレット上で一度色を作ってから粘土に混ぜる児童、粘土に直接絵の具の色を混ぜる児童、指に絵の具をつけて描く児童、背景から作る児童、キャラクターから作る児童、定規で平らな背景を作る児童、分度器で角度を測る児童など、1人1人がそれぞれで考え、工夫をして制作しているのがいいなと感じました。今回は作り始めたばかりということもあるかもしれませんが、撮影された写真はスライドショーで投影されただけでしたが、次回の授業始めなどで、〇〇さんはこういった制作の工夫をしていたよと紹介や説明をして、情報共有をすることもできるなと思いました。

f:id:ict_in_education:20170526161845j:plain

f:id:ict_in_education:20170526161841j:plain

 児童自身がカメラを使って自分たちの作品の過程を記録する授業は、図画工作以外にもありますが、今回のような児童自身は制作に集中させ、先生が撮影する活用方法は、図画工作ならではの活用方法ではないかなと感じました。児童は制作に集中したまま、先生も教室内を観て回るのは今までと変わらないので、その中で「あ、これ、クラス全体で共有したいな」と思った作り方だったり作品を撮影するだけなので、先生の負担自体も少なく、なおかつICTを活用することで情報共有が容易になっていると感じました。


制作途中の作品に、電子黒板上で描き込み、計画性を持って制作することを説明

f:id:ict_in_education:20170526161926j:plain

f:id:ict_in_education:20170526162011j:plain

 制作の時間が終わり、まとめの時間で、この先どういったものを作っていくのかを考えながら作っていくことを意識させるために、ある児童が作った制作途中の作品を電子黒板上で投影して、例えばどういったものを作っていくのかをペイントで例を描き込み、説明されていました。この使い方もデジタルならではできる指導法だなと思いました。作品実物自体に付け加えたり描き加えたりすると、どうしてもそのイメージが植え付けられて引っ張られてしまいますし、そもそも自分の作品に手を入れてはほしくないものです。また言葉だけで説明すると、うまくイメージできない児童もいると思います。その点、デジタルだと実物には一切手を付けずに、イメージで説明することができるので、とてもいいなと思いました。

 また授業後に、この活用方法について守屋先生にお話を伺った際に、仰っていたことにもとても共感しました。「平面的な作品のときは、デジタル上でも描き込みはしません。今回は紙粘土を使った立体作品なので、イメージに引っ張られすぎずに説明することができると思います。」こういった守屋先生の発言から、ICTを使うことを主軸として考えているのではなく、「こういった授業をしたい」「こういったことを教えたい」という目的に合った、無理のないICT活用が実現されているのではないかなと感じました。


(前田)

【開発秘話】 情報分析・問題発見からプレゼンまで実習を通した、情報科カリキュラム@八王子学園八王子高等学校 #7・8

 この連載では、八王子高等学校の情報科の授業の様子と共に、そのカリキュラムの開発秘話を紹介いたします。今回は、全8回のうちの7・8回目の最終回の授業についてです。

 1~6回目のレポート内容は、こちらをご覧ください。
blog.ict-in-education-cr.jp

blog.ict-in-education-cr.jp

blog.ict-in-education-cr.jp

blog.ict-in-education-cr.jp

blog.ict-in-education-cr.jp


プレゼンの善し悪しは、きちんと準備をしたかどうか。

 7・8回目の授業は、全グループ分のプレゼンを実施する回です。プレゼンの善し悪しは、一般的にも言われていることですが、やはりきちんと準備したかどうかで異なっていた感じでした。プレゼンの話し方が聴きやすいグループは、リハーサルで何回も練習していましたし、グループメンバーでたくさん話し合って認識を合わせて進めていたグループは、言いたいことが明確でわかりやすかったと思います。逆に、まったくリハーサルをしていないグループは、台本を棒読みしたり、スライドに書かれた文章をそのまま読んでいるだけだったり、笑ってごまかしたりするところもありました。グループ内であまり話し合いをせずに、構成も台本もバラバラに個人作業でやっていたところは、認識のすり合わせができていないので、何が言いたいのかよくわからないプレゼンになってしまっていました。
f:id:ict_in_education:20170519172907j:plain

 スライド自体の作りについては、論理的にまとめられているかどうかは、上記のようにこれまでの回できちんと準備してきたかどうかで異なり、なかなかうまくまとめられていないグループが多かったですが、スライド内での情報の見せ方については、文字だらけのスライドを作成するグループは少なく、比較的、画像や図、グラフなどを使って見やすいものを作れていたと思います。
f:id:ict_in_education:20170519172904j:plain


自分たちの学びを振り返るための…相互評価&自己評価?

 今回プレゼンを実施するにあたって、自分たちの学びを振り返るために、相互評価と自己評価をつけさせました。相互評価は、Excelを使い、評価基準別に数値を入力する形にし、グループごとにプレゼンが終わったら、評価を入力するような形にしました。評価をつけなくてはいけないことで、お互いのプレゼンをきちんと聴くような仕組みにはなりましたが、プレゼンを聴くことと、評価をすることの両方に追われ、プレゼンの内容をきちんと理解して聴くということができていなかったように感じました。その結果、生徒からの質問が少なかった印象もありました。
f:id:ict_in_education:20170519172901j:plain

f:id:ict_in_education:20170519172858j:plain

 カリキュラム開発時点で、プレゼンでは相互評価をさせることが当たり前のような感覚で考えていたので、ここでのいちばんの目的である「学びを振り返る」ために、相互評価が本当に最良の手段なのかどうかを考えることが抜けてしまっていたと猛省しています。

 今回の全8回の授業は、問題発見から論理的な解決法を提案することがポイントなので、その部分において重点的に振り返りをさせるワークにさせる方がベストだったと思います。例えば、他のグループのプレゼンを観た上で、そのグループが発見した問題は何か・その解決法は何か・それを裏付けるデータと理由は何かを要約させて書かせるようなワークであれば、どういう観点でプレゼンを聴いたらいいかを意識させることができ、内容をきちんと理解するためによく観て聴くことを促し、わからない部分があったら生徒たちから質問が出てきやすくもなるかと思いました。

 また、それらの要約ワークが終わった時点で、プレゼンしたグループがスライド作成前にまとめた問題設定や三角ロジックの資料と、聴衆である生徒たちが要約した内容を比較することで、内容がきちんと伝わったのかどうかを確認したり、伝わっていない場合、何がわかりづらかったのか・何が原因だったのかを考えさせることもできたと思います。


 昨年度は、これまで問題解決のワークや、プレゼンテーションを実施したことのない生徒たちが初めて取り組んだ授業でした。論理的思考力や問題発見・解決力については、一度やっただけではなかなか定着するものではないので、今年度は、現在1学期の時点で、問題解決の部分を重点的に学習できるような授業を実施しています。こちらについても、引き続きレポートしていきたいと思います。


(前田)

【開発秘話】 情報分析・問題発見からプレゼンまで実習を通した、情報科カリキュラム@八王子学園八王子高等学校 #5・6

 この連載では、八王子高等学校の情報科の授業の様子と共に、そのカリキュラムの開発秘話を紹介いたします。今回は、全8回のうちの5回目と6回目の授業についてです。
5回目はこれまでまとめたものを使って、スライド資料をまとめる回で、6回目はそのスライド資料を使ってプレゼンのリハーサルをする回です。

 1~4回目のレポート内容は、こちらをご覧ください。
blog.ict-in-education-cr.jp

blog.ict-in-education-cr.jp

blog.ict-in-education-cr.jp

blog.ict-in-education-cr.jp


スライド資料をまとめる際に、引用元の明記の仕方・著作権についても学ぶ!

 5回目の授業では、スライド作成の実習がほとんどですが、スライドをまとめるにあたって情報収集した先の引用元を明記したり、著作権を考慮することが必要になってきます。今回のスライドは公に発表したりはしませんが、スライド上で使用する画像については、著作権を考慮して、パブリックドメインのものか、クリエイティブ・コモンズ・ライセンスのもので使用条件を満たしたものを使用するようにしました。実習の中で必要となる直前で説明することで、知識と実習をすぐに結び付けて考えられるようにしました。

 授業内での著作物の扱いについては、ある程度認められてはいますが、実習の中で引用すればOKとしてしまうと、「授業内だけ」と伝えていたとしても、知識よりも体験の方が記憶に残りやすいので、社会に出てから「えっ!?」ということになりかねません。使用する画像を狭めることは、スライド自体の自由度を狭めてしまいますが、特に情報科の授業においては、きちんと著作権を意識させる必要があるかと思います。

 生徒たちの様子を見ていると、必要な情報を探し見つけることは特に問題なくスムーズに行えているようでしたが、情報を探すことやスライドを作成することに集中しているのか、情報の引用元を記載することをうっかり忘れてしまっている生徒が多い印象でした。スマホの普及により、ネット検索のスキルは高くなってきていますが、著作権についての意識はまだ低いように感じました。おそらくこれまで作品制作や資料制作、文化祭のポスターなど、学校内で自由にキャラクターを使用しても問題ない・意識する必要がない環境だったことも影響しているのではないかなと思いました。
f:id:ict_in_education:20170508095523j:plain


最終的な成果物・スケジュールをこまめに意識させること

 6回目の授業では、プレゼン本番に向けてリハーサルを行う回でしたが、この回までに終っていないグループや、グループのメンバーが休んで終わらず、クラス全体でリハーサルを行うというよりは、できたグループは個別にリハーサルをし、終わっていないグループはスライド作成の続きをやる、という状態になり、本番さながらのリハーサルを行うことはできてなかったようでした。

▼個別にリハーサルをしている様子
f:id:ict_in_education:20170508095522j:plain

f:id:ict_in_education:20170508095521j:plain

 その原因として考えられるのは、生徒自身が「最終的な成果物・スケジュールを意識できていなかった」ということではないかと思いました。今回のカリキュラムは、本来2学期で終了するものとして作成したものですが、2016年度は、これまでの既存のカリキュラムとの調整上、2学期の途中から始め、3学期終わりまで実施した形です。ちょうど今回の5回目くらいから3学期に入って実施したのですが、4回目の授業から約1ヵ月半程、間が空いてしまったので、4回目までにまとめた内容自体を生徒が忘れてしまっているようでした。最終的な成果物であるスライド資料の作成やそれを使ってプレゼンをすることをすっかり忘れてしまっている生徒がいて、スムーズにスライド作成に入れなかったり、グループで意見がかみ合わなかったりすることが多かったようでした。

 また、先生によっては、リハーサルをする回というのを、コミットしていなかったことも原因の一つかなと感じました。決められた日までになんとしてでも完成させるということを前もってコミットしておけば、その日までに終わるように、昼休みや補講の時間に作業をすることは可能だったと思いました。


次回は、7・8回目(最終回)です。いよいよプレゼン本番の授業です。


(前田)

【レポート】造形教育センター月例会

 4月23日に、造形教育センターの月例会に飛び入り参加してきました。造形教育センターとは、昭和30年に設立され、表現主義的な教育だけでなく、バウハウスの造形理論などの影響を受けて、デザイン・工作なども含めた総合的な造形教育の研究をされている団体です。小中高の先生、大学の研究者、学生、企業の方など、さまざまな立場で造形教育を実践されている方々が参加されています。

 今期は、「今、子どもたちに必要なこと+」をテーマに、美術教育とは違う視点で活動されている方々をゲスト講師として呼んで、本当に社会に必要となっていることは何かを考え、議論していらっしゃるそうです。過去のゲストとしては、漫画家、プログラマー、写真家、青年海外協力隊員、国際協力活動実践者など、さまざまな方を呼ばれたそうです。「リアリティは、その場にいかないとわからない」という考えのもと、さまざまな方のお話を聞いて、研究されているようです。

 そして、今回のゲスト講師の方は、学童施設を運営しているペパーソンインターナショナル株式会社(PEP)の代表取締役、神谷哲郎氏でした。神谷氏は、国際協力の現場で長くJICA事業に従事してきた方で、その経験がどのように今の子育て支援へと結びついているのかについて、お話されました。f:id:ict_in_education:20170501181248j:plain
▲左:神谷氏、 右:東京造形大学 石賀氏(進行役)

学校の先生になる前に、自分がやってきたことを試したい!

 神谷氏は、もともと学校の先生になるのが夢だったようですが、先生になる前に自身がこれまでに携わってきた美術活動や人形劇がどれだけ海外の子に影響を与えることができるかを試したいと思い、青年海外協力隊としてヨルダンで活動をし、その後、パレスチナ、エジプト、フィリピンに赴任。ライフワークとして人形劇を子どもたちに見てもらう活動を続けてきたそうです。パレスチナのある学校の掲示板に、自分たちの町が爆弾で襲われている絵が展示されていたり、街の壁画には、自爆テロをしている人を称える絵が描かれていたりして、日本では想像することもできないその風景が、衝撃だったそうです。描かれた絵をいけないことだと批判はできないので、神谷氏は壁画プロジェクトを立ち上げ、今起きていることではなく未来を描くことをテーマにして、難民キャンプの壁に新たな絵を描くことを提案されたようです。
f:id:ict_in_education:20170501181247j:plain


自分自身も中にいないと、リアリティを持たない!

 神谷氏は、平和構築に美術・人形劇を活かせないかと考え、上記のような海外活動をしてきたようですが、そういった活動をする一方で、日本に対しては自分が評論家になってしまう感じがしたようです。海外でやるにしても、まずは日本で何かやらないと説得力がない。自分自身も日本の中にいないとリアリティを持たないと考え、日本へ戻ろうと決めたそうです。

受け入れだけでなく、きちんとしたプログラムのある学童保育を!

 もともとの夢であった学校の先生にはならないことは決まっていたので、何をやるかと考えたときに、学童が受け入れをすることだけにフォーカスされている状況をなんとかしたいと思い、現在の会社を立ち上げたそうです。場所確保・人材確保・研修については、重要・大事だという人は多いけども、プログラムのことについてはあまり言われない現実があったそうです。神谷氏は自身の大学の恩師から学生当時に言われた、「生活指導ばかりに注力するのではなく、授業をおもしろくしろ」という言葉も後ろ盾となって、現在の学童施設を始めることを決めたそうです。

スタートは2人…!?

 しかし、どんなに内容に自信があっても、会社名も個人名も知らないところに、子どもを預ける人はいなく、開校当初は、2人だけという状況で、「認知」「信頼」を得ることの大切さ、難しさを強く感じたそうです。そうした中でも、1人1人の子と向き合い、子どもたちと親をつなぐことが役割であるとことを常に意識し、学童保育の中での子どもの様子を毎日細かく親に伝えることを大事にされてきたそうです。そうした丁寧な対応をしていったことで、口コミで徐々に広まり、現在は多くの子どもたちの笑顔で溢れる状態にまでなったそうです。

リアルな現実を知り、リアルな人のために考え行動する

 神谷氏のお話は、海外から日本まで幅広い活動のお話でしたが、常にリアルな現実を知ろうと動き、そこにいる人のために考え行動されているのだと感じました。〇〇はきっとこうだろうといった思い込み、決めつけをするのではなく、まずは自分の目・耳・体で確かめる。そこにいる人の声を聴く。その人のためにできることを考える。そういった当たり前だけども、忘れてしまいがちなシンプルなことを学んだ気がしました。

 そして、神谷氏の講演の後には、PEPの学童施設の教室を見せていただき、参加者全員でその教室でできる造形教育を考え、神谷氏にプレゼントする。というワークが行われました。ここでも、神谷氏や学童施設の話を聴き、教室を観ることで、リアルな現実を知り、そこに通う子どもたちのための造形教育を考えるという流れになっていたことも、ただ神谷氏の話を聴いて終わりではなく、そこから行動につなげていけるような研究会となっていたのがいいなと思いました。
f:id:ict_in_education:20170501181246j:plain


造形教育センター
造形教育センター 造形教育 教育 造形 研究


ぺパーソンキッズ&ユース
www.peperson.info


(前田)