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教育ICTリサーチ / 造形教育研究部・考える力研究部 ~クリエイティブな人材育成研究ブログ~

「図工」「美術」「情報」「総合」など、発想力・創造力・考える力を育成する教育プログラムや方法、実践などを紹介します。

学校で使えるクリエイティブデザインアイデア#13:ゴチャゴチャしていると感じたら、引き算のデザイン(見せたい箇所を減らす

クリエイティブデザイン

 この連載では、学校の先生が普段使えるクリエイティブデザイン観点でのアイデアやポイントをご紹介させていただきます。
今回紹介するのは、ひき算のデザインを活用して、情報が伝わりやすくなる方法を紹介します。

ゴチャゴチャしていると感じたら、「引き算」!

 賑やかで華やかな感じはあるけど、なんだかパッと見、「どこを見たらいいのかわかりにくい」「読みにくい」「なにを言いたいのかがわかりにくい」という状態のときは、デザインの「引き算」をするようにしましょう。今回は、優先順位を整理し、見せたい箇所を減らすことを紹介します。

見せたい箇所(目立たせる情報の優先順位)を整理して、減らす

 資料などの読み物を作っていると、「全部読んでもらいたい!」「全部大事!」と言いたくなるものですが、それをデザインに当てはめて、すべての情報を同じように目立たせようとすると、ゴチャゴチャとした散漫な状態になってしまいます。
 情報に優先順位をつけて、どこから読んでいけばいいのか、最低限どこを抑えておけばいいのかを整理して、目立たせる箇所を絞りましょう。

 本文を読んでもらいたいという思いから、本文のフォントサイズを大きくしすぎて、余白や行間がなくなり、読みづらくなってしまうパターンが多いですが、文字が大きければ、本文を読むというものではありません。
 それよりも、本文が読みたくなるようなキャッチコピーやリードをつけたり、本文が読みやすくなるように余白や行間をつけたり、読みやすいフォントにしたり、1行あたりの文字数を調整したりする方が効果があると思います。

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  • 優先順位のつけ方としては、重要度や緊急度などを考慮してつけます。
  • 優先順位は、情報の階層ごとにつけましょう。
    • 話題ごとの情報の優先順位(例えば、以下のような話題の情報に優先順位をつけて、最初に目を通してほしい話題は何かを明確にしておきます。)
      • 当月の活動報告
      • 来月の行事予定
      • 保護者への連絡事項
    • 各話題の中での情報の優先順位(例えば、保護者への連絡事項で、以下のような連絡がある場合にそれぞれに優先順位をつけます。)
      • 〇×小祭について
      • バザーについて
      • 歯磨き指導について


▼優先順位をつけずに、ほとんどの情報を目立たせようとしたもの
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 上の学級通信は、すべての情報を目立たせようとしたがために、メリハリがなく、どこから読んだらいいのかがわからず、視線が定まらず、読みにくいものになってしまっています。
本文もきちんと読んでもらいたいという想いから、本文の文字のサイズが大きくなって見出しが目立たなくなってしまったり、さまざまなところに色をつけすぎて、重要な情報が何かわからなくなってしまっています。

▼優先順位をつけて、目立たせる情報を整理したもの
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 上図では、まず優先順位として、「見出し>本文」を全話題共通とし、最初に「運動会の見出しと写真」へ目がいくように各見出しにも差をつけました。
本文の中でもより重要な情報については、太字にして、重要ではない情報と差をつけて、読みやすくしました。また本文に色をつけると見出しとの差がわかりにくくなるので、ここでは本文はすべてモノクロで統一させました。


 すべての情報を読んでもらうために、すべての情報を目立たせるのではなく、情報に優先順位をつけて、読む順番(視線の流れ)を整理することで読みやすくなります。
 次回は、引き算のデザインのうち、「装飾を減らす」について紹介します。


(前田)

ICT×美術教育 #29:2020年東京オリンピックのエンブレムを通して、デザインの目的・効果・考慮すべきことを学ぶ

ICT×美術教育 目的-1. 興味喚起 目的-3. 理解促進 目的-6. 教材拡充

 フューチャーインスティテュートの前田です。美大卒の教育コンサルタントです。この連載では、ICTを使ってこんな授業ができるのではないかというアイデアを紹介していきます。

 今回は、2020年に開催される東京オリンピックのエンブレムを使って、デザインが与える印象や効果、デザインする上で考えるべきことを踏まえ、独自のロゴ案を考える授業を紹介します。今回の東京オリンピックのエンブレムは、ご存知の通り、前作の盗作疑惑により、前代見問の再公募をしたことで有名です。このニュースで、デザイン業界が注目されました。
こういったところから、デザインする上での目的・効果・考慮すべきことを学び、考えさせるいい教材になるのではないかなと思いました。

▼新エンブレムがこちら
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https://tokyo2020.jp/jp/games/emblem/より引用

▼旧エンブレム
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http://grapee.jp/73451より引用


▼授業前準備

  • 生徒たちに見せるための上記サイトや、ニュース記事やブログ、Twitter上での世間の反響のページをチェックし、用意しておく。
    • 「2020 東京オリンピック エンブレム」でキーワード検索すると、いろいろヒットすると思います。


▼授業の流れ

  1. エンブレムを見せる前に、他の人の意見を聴いたり、おしゃべりすることを禁止する。
  2. エンブレムを見せて、どんな印象を持ったかワークシートを無記名で書く。
    • 他人の意見や多数派の意見に流されてしまうことを考慮して、おしゃべり厳禁。
    • 周りの目を気にせず、本音を聴き出しやすくするために、無記名で書かせる。
  3. どんな印象を持ったかの内容を発表する。
  4. ネット上の反響(ニュース、ブログ、Twitter)を紹介する。
  5. 応募要項を読んで、デザインする上でチェックすべき内容は何かを確認する。
  6. 応募要項に合ったデザインになっているか分析する。
  7. 独自のデザイン案を作成する。
  8. コンセプトをまとめる。
  9. クラス内で投票をする。


 インターネットやTwitterなどのSNSが当たり前に使われるようになったことで、デザインが持つ影響力や世間の反響をネットを通じて知ることが容易になったと思います。上記のように、自分自身がどう感じたか、クラスの他の人がどう感じたか、ネット上ではどのように捉えられているか、デザインの目的は何だったのかなどを知ることで、さまざまな観点からデザインを考える必要性を感じてもらえるのではないかなと思います。
 また、エンブレムを分析した上で、独自のデザイン案を考えさせることで、デザインを通した問題発見・解決力も養うことができると思いました。


(前田)

【レポート】小学生×宇宙飛行士(山崎直子)「宇宙、人、夢をつなぐ」 異才発掘プロジェクトROCKET:7月スクーリング_No.3

イベント 主体性 授業実践 考える力

 前回に引き続き、7月11日・12日に開催された、異才発掘プロジェクトROCKETのスクーリングの内容と感想をレポートします。今回は、12日午後に実施された宇宙飛行士の山崎直子氏による「宇宙、人、夢をつなぐ」というテーマの講義の様子をレポートいたします。11日に実施された「今の世界情勢を議論する」にて、子どもたちがISやイスラム教やテロなどをもとに、何が問題なのか、ルールとは何か、命より大事なものはあるのかということを熱くディスカッションした様子や、その後に受講したアラブ研究者の池内恵氏による「イスラーム世界からみた世界」というテーマの講義のレポートは、前回までにまとめているので、そちらも合わせてご一読いただければと思います。

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▲子どもたちに講演する山崎直子

宇宙の様子

 山崎氏は、2012年4月に、国際宇宙ステーションに行った経験から、宇宙での生活がどんなものだったのかを最初に話されました。

  • 発射から8分で到着するくらい早い。
  • 上に自分と同じ体重の人が3人乗っている感じ。
  • もともと自分たちも宇宙のカケラでできているということから、ふるさとへ訪ねていく感覚とも似ている。
  • 55年間で、560人が宇宙へ旅立っている(1年間に10人。これはずっと変わっていない)
  • エンジニア、研究職、宇宙食、カウンセラー、経済、法律家など、さまざまな業種、さまざまな性格の人が関わっている
  • そういうバラバラな個性の人が集まって共同生活をしている
  • 宇宙飛行士になる条件が、だんだんとゆるくなってきている(70歳の人が宇宙へいって帰還した実績がある)
  • 宇宙ステーションに6ヶ月滞在した。
  • 配線などがゴチャゴチャしている。
  • 文房具などはマジックテープで壁にとめている。
  • 換気ができないので、ホコリが宙に浮いているし、ホコリっぽい。
  • 締めきったこもったニオイがする。
  • 洗濯機で洗うことができないので、汚くなった服は捨ててしまう。
  • お風呂・シャワーはできないが、汗はかくので、タオルに水を染み込ませてふき取る。
  • 立って寝ていても普通に寝れるので、4畳半くらいのスペースでみんなで寝る。
  • 6ヶ月滞在の人は個室が割り当てられている。
  • パソコンやネットもある。
  • 宇宙食は、種類が豊富になってきている。
    • ごはん、おにぎり、ラーメン、サバの煮込み、栗など。
    • 農業も始めていて、赤レタス育てて食べた。
  • 生のフルーツが届くのが待ち遠しい。取り合いや勝手に食べてケンカになるくらい。
  • 無重力では上も下もないので、「上を見て」だと、きちんと伝わらない。「あなたの上を見て」と言うと伝わる。相手の立場にならないと会話ができない究極の状況。
  • ろうそくは、すぐに消えてしまう。空気が動かず二酸化炭素が溜まってしまうので。
  • イスラム教の人もロケットに乗る(お祈りの回数を減らしたりしている)
  • 下に地球が見えると思っていたら、地球が上にあった。
  • 90分ごとに4回日の出を見ることができる。
  • 3日で地球から月へ行ける、1週間で行って帰ってこれる。火星までは半年間かかる。
  • ペットボトル500mlを宇宙に送ろうと思ったら、50万円かかる(ロケットをとばすのに50億円かかる)
  • さまざまな研究がされている。決まりはない。
    • 線虫
      • 宇宙に行ったことで、老化をコントロールする遺伝子発見
      • 他の動物にも同じことがいえるのか研究している
    • ロシアは、宇宙に長期滞在することを研究してきた
      • バラバラに見える宗教、科学、芸術、マジック、伝統と発展、様々な分野の知識を結びつけていくことに寄与
    • 人間の体も変化する
      • 重力がないから、背骨と背骨の間が伸びる ⇒座高だけが伸びる
      • 体重は?
        • 振動のスピードを測ることで体重を測った ⇒減っていた(1日に数パーセント減る)
        • ひょろ長い体系になる。(頭大きく、身体や手足が細長い)

 山崎氏が実際に体験したお話は、とても興味深く、実際に行ってみた人でないとわからない事柄が多かったと思います。子どもたちもとても興味津々に聴いていました。こういった非現実的なこと、実際体験しないとわからないことに対して、わからない上で自分なりに考える・調べるというワークを組み合わせたらいいなと感じました。
 実際の話を聴く前に、グループでインターネットや書籍を使って調べ学習をし、その上で宇宙がどんなところなのかを発表やディスカッションすると、山崎氏の講義を聴く際に、自分たちが調べた内容と話の内容を比較して照らし合わせたり、質疑応答でも、事前に聴く内容を用意しておくということも自然とできます。
 そして、講義後に、話を聴く前と話を聴いた後での相違点や自分の考えの変化などをレポートにまとめたり、再度ディスカッションできると、講義を通しての自分の考え方や知識の変化を認識しやすくなるかと思います。こうすることで、自分で考える力・調べる力・情報を比較する力・聴く力・質問する力・分析する力などを養うことができると思いました。


宇宙までの道のり

 山崎氏が宇宙へ行くまでの経緯を話されました。どういった経緯で宇宙飛行士になることを目指したのか、宇宙飛行士になるまでにどういったプロセスがあったのかを、丁寧にお話されました。

山崎氏の人生

  • 動物が好きで、家の中でさなぎが孵化する様子をずっと見ていたりしていた
  • 札幌に7歳くらいまで住んでいて、そこの星空がきれいだった
  • その頃は、宇宙飛行士のことはよくわかっていなかった
  • 1984年 レーガン大統領が宇宙ステーションを作る計画を表明
  • 1985年 日本人3人が宇宙飛行士に選ばれた
  • 1986年 スペースシャトル・チャレンジャー号の爆発事故を受け、山崎氏は「私も行けたらいいな。亡くなった宇宙飛行士の想いや宇宙の素晴らしさを子どもたちに伝えたい」と思った。
  • エンジニアになって、ロケットを作るのに関われたらいいなと思った
  • 12歳頃ラーメン屋で、サリーを身につけた外国人が近づいてきてニコッと笑って「世界は広いのよ。あなたも頑張ってね」と話しかけられ、それが心に残っていて、海外にいきたいと思った
  • 24歳で、初めて海外留学へ
  • 寮に入れたものの、英語が通じず、電気がほしいと伝えようとしたが、電話を切られ、最初の1・2日は電気のない生活をした
  • 自家用ヘリを持ち、かつ操縦もできるおばあさんに出会い、「すごいな」と思い、自分もやはり宇宙飛行士になろうと挑戦した
  • 1回目は受からなかった。周りは、6回目・7回目でやっと受かったと言っていた。あきらめずにやることの大切さを学んだ
  • 宇宙飛行士のテストは、タスクベースのテスト
    • 必要なスキル、基礎を身につけることが大事で、変わった実技が多かった
      • 例:絵がない真っ白のジグソーパズルを3時間で完成させる
        • 外側はなんとかできるが、内側は難しい
        • うまくいい方法が見つからず、誰も完成できなかった
        • 完成したかどうかではなく、そのプロセスを見ている
        • 知識だけで最後まで通用するわけではない
        • 大人になっても、ずっと続けるということが大切
        • 「伸びしろの方が大切です」という言葉が印象的だった
  • 1999年 宇宙飛行士候補者として訓練スタート
    • 他2人が訓練している間、待ちなさいと言われて、エンジニアの仕事を続けた
    • 人工呼吸、注射の打ち方、宇宙服をきた訓練、蘇生練習などなど
  • 2002年 妊娠していたので、医学的不適合と判断され断念
    • 保育園に通いつつ、また訓練を続けた
  • 2003年 スペースシャトル・コロンビア号の事故
    • 事故のせいで、しばらくスペースシャトルが飛ばなくなり、宙ぶらりん状態になった
    • ロシアにて訓練を続けた
  • 2004年 アメリカNASAにて訓練をした
    • 19期生は「くじゃく」と呼ばれた。くじゃくは飛べない鳥ということから、「おまえらは飛べない」という皮肉も込められた名前だった(洗礼)
    • そうこうしていると、またスペースシャトルが飛ぶようになった
  • 2010年 スペースシャトルディスカバリーに搭乗
  • WODWER(未知)+FULL(たくさん) = すばらしい
  • 宇宙飛行士になる道のりや、宇宙に行ってみて感じたことは、道はひとつじゃないし、新しい道もある。ということ。

 学校でも、著名人の方などに特別講演をしてもらうことが何回かあるかと思いますが、そういったときに、その講演者の方がどんな人なのかを事前に調査するといいなと思いました。どんな人なのかを知らないまま話を聴くのと、知った上で話を聴くのでは、内容の受け取り方や講義後の質疑応答の内容の深さなどが変わってくると思います。


質疑応答

 山崎氏の体験談や宇宙飛行士になるまでの経緯について、お話いただいたあとに、質疑応答の時間がとられました。

  • 「宇宙には天国や神はいますか?」
    • 今の技術では、今はわからないです。
    • 将来、技術が発展したら、発見できるかもしれないですね。
  • 「もし神様がいたら、見つかる前に人間を滅ぼすと思うな」
    • どんな神様かわからないのでわからないですね。
    • 生物学者の人が言うには、最初の生き物を作ることは、1億円の宝くじが1万回あたるくらいの確率のようです。
    • 神さまではなく、サムシンググレイトが作ったという人もいる。
    • 天国があるのかどうかと考えて、牧師になった人や、芸術家になった人もいます。
    • あなたが宇宙に行ってから、実際にどう感じたかを話してみたいです。
  • 「宇宙飛行士になるのに選ばれた理由はわかりますか?」
    • 選ばれる理由・答えはない・わからないです。
    • こんな人を選ぶぞと決めているわけでもないみたいです。
    • 人に会って、今までにない新しい人や新しい価値を提供してくれそうという人を選んでいるのではないかなと思います。
    • 心臓に弱い人はダメというわけでなく、むしろ宇宙にいったら快適だったりします。
  • 「宇宙の良さは、未知以外にありますか?」
    • 価値観がガラッと変わります。
    • 上も下もない世界。
    • モノの見方が大きく変わります。机の上だけでなく、裏側を使ったりもするので、モノの使い方自体が違うので。
    • 逆に、地球に戻ってきたときに、今まで当たり前だった景色や、草のニオイなどに気づくようにもなります。
    • 今まで気づかなかったことにも気づくようになりました。
  • 「宇宙船内でケンカはありましたか?」
    • 大きなケンカはないですが、会話が少なくなったり、グループができたりとかはあります。
    • でも、何があっても夜ご飯はみんなで食べるというルールを決めていたので、そういったルールのおかげでうまくできていたと思います。
    • 協調性はある程度必要だけど、みんなが同じになるのではなくて、みんなが一人一人のやることを認め合うという感じです。
  • 宇宙酔いはありますか?」
    • あります。
    • 乗り物酔いと同じような感じですが、乗り物酔いしやすい人と、宇宙酔いしやすい人の相関関係はないです。
    • 乗り物酔いする人が宇宙では平気だったり、その逆もあります。
    • 乗り物の酔い止めのクスリも効きません。
    • 宇宙酔いにきく注射があります。
  • 「大西さんがネズミを持って行きましたが、寿命が延びる以外になにか結果はあると思いますか?」
    • 私が行ったときも、実は持って行ったのです。
    • 免疫が弱くなるという結果をとろうとしていると聞きました。
  • 「いちばん長くてどのくらい滞在した人がいますか?」
    • ロシア人の400日滞在が最長だと思います。
  • 「トイレのうんちはどうなる?」
    • タンクに貯めたものを徐々にリサイクルしていきます。
    • 不純物は、ゴミ用のタンクに貯めて、補給用のロケットがきたら、代わりにゴミを乗せてロケットごと燃やします。
    • それが、地球上で見る流れ星の可能性もあります。
  • 「ストレスはありますか?」
    • 宇宙にいるときよりも、宇宙から帰ってきたときの方が大変でした。
    • 45日かけて重力に慣れるようにしていきます。
  • 手塚治虫火の鳥の話の中に、宇宙自体が生き物で、人間も宇宙に寄生してるというのがある。どう思いますか?
    • 宇宙から見たときに、地球が生きてるような感じがしました。
    • 星にも寿命があるので、そういう考え方もできますし、実際そうかもしれません。
  • 「ワープの研究とかする人はいますか?」
    • 大の大人がワープの研究とか、一見ふざけたものや、すぐできなくてもなんらかの形でつながっていくこともあるので、ダメということはないです。
    • 渡り鳥の研究をしている人がいて、その研究内容がサーズが流行ったときに役にたったことがあります。
    • どこでつながるかは、わからないものです。
  • 「研究していて、これだけは実現したいことはありますか?
    • 宇宙へ行く方法です。
    • ロケットだと高いので、別の方法やエレベーターとか、何か実現したいです。

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山崎直子氏と記念撮影した様子


まとめ

 山崎氏の講演は、スライドを使って、実際に宇宙から見た地球の写真や宇宙ステーションの中の様子、宇宙飛行士のテストなどを見せながらお話をされたので、子どもたちも最初から最後まで釘づけになって聴いていました。11日に講演された池内恵氏のイスラム教のお話もですが、子どもたちにとって「知らない世界」をとても魅力的に伝えていらっしゃいました。11日の大討論会にてキーとなるコメントをしていたAくんが質疑応答の際に、「あの…本当に体験した人の…話とか…すごく……すごく…キレイだと思いました。」と、講演を聴いた上での言葉にならない気持ちや感動を、なんとか山崎氏に伝えようと頑張って言葉にしていたのが、微笑ましかったです。

 こういった非日常的な話が聴けるときこそ、感動したり、ワクワクしたりするものですが、それにプラスして「わからない事に対して、自分なりに考える」ということと、組み合わせたらいいなと感じました。情報社会で目まぐるしく技術や状況が変化する時代だからこそ、「わからない事に対して、自分なりに考える」というスキルが必要となってくると思います。自分なりに先を予測したり、自分なりに情報を分析したり、自分なりにアイデアを発想したり、あらゆることに自分事として考えるスキルが必要となると思います。


(前田)

【レポート】小学生×アラブ研究者(池内恵)「中東やイスラム教から見た世界を学ぶ!」 異才発掘プロジェクトROCKET:7月スクーリング_No.2

イベント 主体性 授業実践 考える力

 前回に引き続き、7月11日・12日に開催された、異才発掘プロジェクトROCKETのスクーリングの内容と感想をレポートします。今回は、11日午後に実施されたアラブ研究者の池内恵氏による「イスラーム世界からみた世界」というテーマの講義の様子をレポートいたします。

 この講義の前(午前中)には、大討論会「今の世界情勢を議論する」が実施され、その様子は、前回のレポートでまとめているので、そちらも合わせてご一読いただければと思います。

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池内恵氏と聴講する子どもたち

なぜ中東について勉強しようと思ったのか

 まず、最初に中邑教授から、午前中に実施された大討論会で議論した内容を振り返りました。そして、どういう観点で池内氏の話を聴いたらいいか説明され、講義がスタートしました。(以下敬称略)

  • 当時、ベルリンの壁の崩壊のようなことが世界中のいろんなところで起こっていて、世界では何が起きているのかを知りたく、それで思想について勉強したいと思って、大学に入りました。
  • 思想が違うことで、考え方が違うこと、生活が違うことを知り、中東について勉強してみようと思いました。
  • 実際に中東に行ったりもしています。

中東で、初対面の人に聞かれることとは?

  • 最初に衝撃だったのは、初対面の人との自己紹介で聞かれることです。
  • まず最初に名前で、その次に宗教は何か質問されます。
  • 日本だと、宗教は何かなんて質問しないですよね。
  • それが、イスラム教では、宗教は個性よりも前にその人を決めるものという価値観なんです。例えば、男性・女性など性別が個性の前にあるように、宗教も同じような感覚なんです。
  • 最初に名前を聞くことも、理由があります。それは、名前には宗教が反映されるからです。
  • その人の名前を見ると、何の宗教かがわかるのです。
  • ただ、日本人はわからない。名前に印がないので、気になって質問をされる。という訳です。
  • 仏教は、イスラム教徒からすると、怪しい宗教だな・真実の宗教ってなんだ?と思われています。

イスラム教と日本は対照的!?ルールの違い

イスラム教の考え

  • この世にあるルールは、人間が作ったルールではなく、唯一の神がくだしたものである。
  • 預言者を通して、神の言葉・ルールをくだした。最初の預言者はムハンマド
  • 複数のルールをいったりきたりしている。
  • イスラム教では、宗教は文字で書かれて本になっているものが当たり前という感覚。
  • 昔はそう簡単に異文化に関わることができなかったが、だんだん関わることができるようになってきました。
  • ルールが世の中にあり、そのルールによって守るべきことが異なり、国、部活、友だちなど、さまざまあります。
  • 日本は、やってはいけないということは決まっているが、これをやったら幸せになるということはない。
  • 日本にとっての宗教は、サークルのようなもので捉えているが、イスラム教はそうではない。
  • 日本は、書かれていない規範を、読み取ってやらなくちゃいけない風習があるが、イスラム教は文字として書かれています。
  • イスラム教は、日本といちばん対照的。
  • ルールが異なる上で、話をしてもお互いに分かり合うことができないのは、当然です。
  • 社会においても、同じようなことが起きている。

質疑応答

 イスラム教のルールや考えを、日本との違いを交えて、とてもわかりやすくお話いただいたあとに、質疑応答の時間がとられました。子どもたちからの質問の前に、最初に中邑教授から、午前中の議論で話した内容を踏まえた質問をされてから、子どもたちから質問をしました。

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池内恵氏に質問する子どもたち

中邑 「午前中、今の世界情勢について子どもたちなりに話し合って、その中でルールがない方がいいのではないかなど、ルールについて議論をしたのですが、イスラム教において、ルールはどういう風に捉えられているのでしょうか?」

  • イスラム教は、明文化されたルールを教えられています。
  • 窮屈だと思うことはあっても、何をどう守られなくちゃいけないかが明確になっています。

中邑 「イスラム教における命は、どういう立ち位置になっているでしょうか?」

  • 命が大事というのは、どこの宗教でも言っていることです。
  • イスラム教は明文化していますが、その解釈がいろいろある感じです。

Gくん 「イスラム教に入りたいですか?」

  • 入りたいと思わないです。
  • いちばん最初のところ(この世にあるルールは、唯一の神がくだしたもの)を前提としたら、筋は通るけど、その最初が信じられないので。
  • そこを信じると、あとは信じることができる。
  • イスラム教を勉強していると、イスラム教徒にならないとイスラム教を知ることはできないんじゃないの?という人がいますが、それは半分あってて、半分間違っていると思っています。
  • 人間社会いろんな人がいて、人は多様なので、複数価値があるので、ひとつの価値しかないというのはおかしい。
  • そうならないために、イスラム教を信じていない。という感じです。

Gくん 「つまり俯瞰して見るってこと?」

  • 鳥の目になるという感じですね。上の方から全体を観ている感じです。

Bくん 「今のイスラム過激派は、キリスト教と違って、税を払えば生きていけるとしているが、他の教徒を迫害している。それをどう思いますか?」

  • 税金を払えば生きていけるという考えが間違っていると思います。
  • 人間は宗教で差別してはいけないという考えは最近の考えで、
  • イスラム教を信じていると、あとは論理的でつじつまが合うんだけど、イスラム教を信じていない人もいるということでイスラム教の教えに矛盾が生じてしまうんです。
  • 理屈が通じなくなってしまうことで、イスラム教でない人が間違っているか、その人がまだイスラム教の正しさに気づいていないということになる。
  • そういった矛盾を、うまく調節できない人や、その人たちを煽る人がいる。
  • そうして、強制的な解決策を示したくなる人がいるのだと思います。

Kくん 「他の宗教についてはどう考えていますか?」

  • 序列をつけています。
  • イスラム教に近いものと、中くらいのものと、遠く離れているもの、として見ています。
  • イスラム教が正しいという前提で、他の宗教を見ています。

Aくん 「ぼくがもし、自分が神だとイスラム教の人たちに言ったら、相手はどう思いますか?」

  • 自分が間違って「神」だと思い込んでいると思われると思います。
  • ありえないことを、なぜ言っているのだろう?と思われるでしょうね。

Cくん 「日本の一般の人は、ISの人がやっていることを理解できないが、イスラム教の人はISがやっていることを理解できますか?」

  • イスラム教徒なら理解できるかと言うと、多くは理解できない人が多いと思います。
  • ただ、分からないまでもない。という人はいると思います。

Cくん 「宗教は論理的なものですか?」

  • 宗教は論理的な部分と、非論理的な部分があります。
  • イスラム教だと、起源は非論理だけど、イスラム教徒の人はそこに違和感を感じていません。

Bくん 「イスラム教徒になったら税を払わなくていいというような現実的な宗教なのに、グローバル的に合わないのはなぜ?」

  • 合っているところと、合っていないところがあるからだと思います。
  • 摩擦があるのが悪いかといったらそうではない面もあると思います。
  • 個々のイスラム教徒を見ると、うまくやっている人もいます。
  • 適応するということの定義が何か。目的は何か。
  • 一人一人で捉えることもできれば、集団として捉えることもできる。
  • 個人を軸にして捉えると、抑圧に感じてしまうが、集団的な価値幸福の実現を目的とするのか、個人の価値を目的とするのかで、判断が変わってくると思います。
  • イスラム解釈の日本的研究をしている井筒俊彦さんが10年前に出した本が評判がよく、これでイスラム教を知るようになった人が増えました。
  • 井筒さんが興味を持てるのが、イスラム教と仏教が似ているところだと言っているが、それはイスラム教全体の1割くらい。
  • 残りの9割の部分に、国際事件などと絡みがあるのかもしれないと思っています。
  • どこを重視するかで観方がガラリと変わってくるものなのです。

まとめ

 小学生や高校生の子どもたちにとって、今回のようなテーマは、ニュースで見るくらいで身近に感じることが難しいと思います。池内恵氏の講義の前にまず自分たちで大討論会をしたこと、討論会でも自分事として捉えられるようにスタートしたこと、今回の講義では自己紹介というわかりやすい事例で違いを説明されたことで、子どもたちにとってわかりやすく、興味深く聴くことができたのではないかと思いました。

 また、この講義の後に、「ミクロの世界を整理する」というテーマで、いつも使う教室や廊下・階段の掃除を通して、ミクロで観るということの大事さを体験的に学ぶことをしていました。これまで「俯瞰して観る」ことの重要さを意識して討論をしたり、講義を聴きましたが、最後に真逆の視点で観ることも大事であることを学べる内容でした。
以下は、中邑教授のコメント。

  • きれいにするとか、汚いとか、どっちがいいかとかではなく、生活の中でこだわりを持とう
  • 全部でなく、どこでもいいからどこか一つこだわりを持ってやりきること
  • 汚れをどう落とすか、逆にどう汚れを活用するか

 掃除を、いつも使う部屋だからきれいにするということではなく、「普段の生活からこだわりを持つ」「ミクロな視点を持つ」という学びと絡めていたのがおもしろいなと思いました。自分の好きなことだけではなく、あらゆることにこだわりを持つこと、そういう日常からの意識が大事であることを伝えるために、掃除という題材で体験的に学ばせたのかなと思いました。
また、「俯瞰して観ること」と「ミクロな視点で観ること」という真逆なテーマを扱うことで、どちらの視点も大事であることが伝わったのではないかなと思いました。


(前田)

【レポート】大討論会「今の世界情勢を議論する」 異才発掘プロジェクトROCKET:7月スクーリング_No.1

イベント 考える力 主体性 授業実践

 7月11日・12日に、異才発掘プロジェクトROCKETのスクーリングの様子を取材してきたので、内容と感想をレポートします。ROCKETは月1回のスクーリングを実施しており、そこでさまざまな分野の専門家によるトップランナー講義とディスカッション形式の授業やPBL形式の授業をしています。現在は、第1期生と第2期生で、小学校5年生~高校2年生までの子どもたちが参加しています。

 7月は、11日にアラブ研究者の池内恵氏による「イスラーム世界からみた世界」というテーマの講義と、12日に宇宙飛行士の山崎直子氏による「宇宙、人、夢をつなぐ」というテーマの講義がありました。11日のトップランナー講義の前には、「今の世界情勢を議論する」というテーマで大討論会を実施しており、今回は、この大討論会の様子をレポートいたします。

 11日の授業は、以下のような流れで進み、全体を通して「俯瞰して見る」ということがテーマとされていました。

 講師の中邑賢龍教授が、2日間のスケジュールとテーマについて説明していきますが、その間も、子どもたちから出てきた発言を拾って、雑談や寄り道もしつつ進めていきます。自由で和やかな雰囲気がいいなと思いました。中邑教授と子どもたちとの間に強い信頼関係を感じました。


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▲子どもたちが討論している様子(右端が中邑教授)

テロや世界情勢を、自分事として捉える

 ここまで、スケジュールとテーマ説明はプロジェクタを使って立って説明をされていましたが、討論会開始と共に、中邑教授も子どもたちと一緒に円卓の中に入って、場を仕切っていました。派手な演出ではありませんが、こういう環境・場の変化を作ることで、話題が切り替わることがわかりやすくなり、メリハリができます。
 討論会の始まりは、中邑教授の次のような投げかけから始まりました。(以下敬称略)

中邑 「みんなは学校というせまい世界で生きているけど、今の学校制度があるのも、日本の歴史や世界の制度も影響しているんです。みんなはポピュリズムって知っている?」

   「排他的?」「多数決?」

中邑 「ポピュリズムは、民衆受けするようなことを言って、政治家になる人のことを言います。」

   「トランプさんみたいな感じか」

中邑 「今回のテーマである「俯瞰して見る」つまり、鳥のように今起きていることを上の方から観るということが大事です。「俯瞰して見る」ということができないと、ポピュリズムのような人の言うことを信じて振り回されてしまうということもあります。ところで、みんなは、今の生活に満足している?」

   「満足している」が約8割
   「満足していない」が約2割

中邑 「満足していない人の理由は何?」

   「やりたいことが学校へ行くとできない」
   「別の場所に行って、いろんなことを知ってみたい。
    自分が今どんなことが起きているか事実を知らないことが多い気がする。
    政治とか見てると、わからないことがある。」

中邑 「じゃあ、テロが起きているところに旅行に行ってみようか。行ってみたい人。」

   「行ってみたい」が約4割

 中邑教授は、いきなり世界情勢やテロの話をするのではなく、子どもたちにとっていちばん身近である学校、その学校という制度自体が歴史や世界の制度が影響しているということを指摘し、子どもたちが関わる世界と世界情勢・制度・歴史が関連していることを、子どもたちと会話をするように質問も交えて話し始めていました。
 最初に、子どもたちと同じ円卓の中に入って、同じ目線になって話すという環境デザインもうまく影響していると思いますが、中邑教授の最初の切り込み方や質問の仕方が、子どもたちにとって入りやすく、つなげやすくされているなと感じました。そして、ここから、テロの話題へと変わっていきました。

「成功すると上げ足をとろうとする人がいるから、不満が出てくるんだと思う」

バングラディッシュのテロは、高学歴だったり、家庭が裕福な人が首謀者だったりした。自暴自棄でやったというより、もっと複雑な感じ。政治や上の世界が絡んでいそう」

イスラム教徒は、神である私達がこんなに苦しまなくちゃならないのかと考えている。妬みが噴出しているのではないか。経済的に発展している国に不満を抱えているのではないか」

「すべての移民の人たちが悪い訳ではないのに、難民受け入れをしないようにしたりしている。原因として、人種差別や経済格差もありそう」

中邑 「みんなは、差別されたことある?」

   「いじめをされたことがある」が約3割

中邑 「みんなの家は貧しい?」

   「困らない程度に暮らせている」

 子どもたちから、差別や経済格差などのさまざまな意見が出てきたところで、上記のように、中邑教授から子どもたちに質問が投げかけられ、他国で起きている出来事を、日本だったらどうか自分の場合はどうかと自分事として考えられるような質問をされているように感じました。

ルールをなくしたらいい!? ルールがある意味を考える

 中盤になってくると、中邑教授からの質問は徐々に少なくなり、挙手する子どもたちを指名し、要所要所で子どもたちの発言を要約したり、「違う意見はない?」と偏った意見ばかりや多数派の意見ばかりにならないように、ファシリテーターとしての役割が変化していっているように感じました。
 そうしてテロが起きた原因が何か議論している中で、1人の男の子が、その後の議論の軸となるコメントをしました。

Aくん 「小さい頃から思っていたことなんだけど、争いが起きないようにルールを作ったけど、そのルール自体をなくしたら、ある意味平等な世界になるんじゃないかなと思う。欲しい物を奪っていい世界。強い者につくというのも手段だし、隠れて暮らすのも手段。すべて自分の力でやらなくちゃいけない。テロが悪いことではなく、テロが起きることが当たり前にしたら、平和なのでは?」

Bくん 「テロが起きている国は、秩序があまりしっかりしていない。秩序がしっかりしている日本みたいな国だと、テロが起きにくくなっているのでは?テロとか当たり前にしたら危険」

Cくん 「法がなくなったら、平等になるかといったら違うと思う。昔に戻るだけ」

Aくん 「ぼくが言ったのは、もし人が集団にならなかったら…という発想。集団になると差別が生まれる。すべて自分の力でやらなくちゃいけないという世界なら、差別がなくなるのでは」

Dさん 「個人だとしても、結局集団として固まってしまうと思う。能力主義というか強い人しか残っていかないということになる」

Bくん 「テロで亡くなった人数より、交通事故で亡くなった人数の方が多い。でもテロの方が取り上げられる。それは悪意があるから。イスラムの人は生き残るために集まっている訳ではないと思う」

Aくん 「群れるのも勝手。戦うのも勝手。戦って負けるのも、その人の勝手」

Eくん 「自分が戦いたくなくても、相手から戦ってこられる場合もある」

Dさん 「日本は、社会保障などもなくて暴動が起きてきたりしていた。昔のように戻すのは問題だと思う」

Aくん 「そもそも社会保障とかは、弱い者を支える制度。弱いって言うけど、本当は弱いとは限らない。ここにいるみんなと同じように違う捉え方をしたら強い人間かもしれない」

Fくん 「個人的な意見だけど、ルールがなくなったら、好きなことができないから、ぼくは嫌だ。生きることが第一になってしまうから。安心できない世界だと、安心して好きなことができない」

Gくん 「ルールがなかったら、手足がないような人は、負けてしまう」

Hくん 「強さというのは、いろんな意味があると思う。」

Aくん 「そう。力の強さもあるけど、相手を説得するトーク力も力だし、媚びるのが得意というのもある意味強さ」

Cくん 「個人個人の違いを受け入れるだけの心は、今の人間にはないと思う」

Iくん 「今も、自己責任の世界だと思う。全部の道具やシステムをなくしたら、今の日本より幸せではないと思う」

中邑 「Aくん、もしAくんがリオのイスラム街に残されたらどうする?」

Aくん 「そういう世界で死ぬのは、僕の定めだと思って、先生を恨んで死ぬ。今の世界は、頭のいい人間のためだけに作られた世界であって、まとまるのが苦手な人間は除外されたり、戦地などで戦力として戦う能力がある人は今のルールじゃ才能を活かす場がない状態。人を平等にしなくちゃいけないというルールは、頭のいい人が勝手に作ったルール」

Cくん 「ルールによって、はみ出し者ができてしまうっていう考えか」

Bくん 「ルールを作るっていうことは、ルールを作る理由がある。はみ出し者が出るのはしょうがない」

Aくん 「戦うのが得意な人がイスラム国を作ったんだと思う。人の命が大事とかやさしくするのが大事というルールを押し付けられた」

中邑 「やさしさを理解できない人間がいるということか。そもそも命というものは、いちばん大事なものなの?命より大事なものがあると思う人?」

    「命より大事なものがあると思う」が約半数。
    出てきた意見は、
    「心」「良心」「種」「宇宙」「自然」「信仰」「ルール」「感情」「自分」

中邑 「たくさんの意見が出てきましたが、池内さんの講義では、僕たちがここで考えていることとはまったく違う考えで世界を見ている人の話が聞けると思います。何も知らないまま、目先の利益だけをみて生きることは怖いと思います。そこから俯瞰して見るということが必要です。」

 討論会の最後として、多数決をとってどの意見が優れているかのようなことをすることもありますが、今回のような正解のないテーマについては、その場で無理矢理答えを出す必要はないと思います。中邑教授がやっていた手法としては、「命より大事なものはある?」という質問をして、「ある」という人に具体的に何か聞いていき、この場でもさまざまな意見・考え方が出てきたことにつなげ、さらにその後に続く池内恵氏の講義においてどんな観点で話を聴いてほしいのかをうまく結び付けていたように感じました。

 講義を聴く前に、今の自分たちが考える世界情勢をディスカッションしながら、自分にはない考えを聴いたり、同じ意見でも考え方が違う人の意見を聴くことで、自分自身の考えを見つめ直すことができるなと思いました。また、そうやって議論して考えたあとに講義を聴くのと、ただ講義を聴くのでは、自分事として聴く姿勢も違うだろうなと思いました。

 また、今回は、子どもの方から「ルールをなくしたらいい」という突飛な意見が出てきましたが、普段考えもしない価値観や視点で考えさせることで、普通に考えるのでは出てきにくい意見が出てくるものだと思います。子どもたちの考えを深めるために、敢えて突飛な質問をしてみるというのは、一つの手法だと思います。

 次回は、この大討論会のあとに実施された、池内恵氏の講義「イスラーム世界からみた世界」の様子をレポートします。


(前田)

ICT×美術教育 #28: 形や色を実際に動かしながら、見た目の違いや変化を体感して、錯視に関する手法を知る

ICT×美術教育 目的-1. 興味喚起 目的-3. 理解促進 目的-4. 授業効率化 目的-6. 教材拡充

 フューチャーインスティテュートの前田です。美大卒の教育コンサルタントです。この連載では、ICTを使ってこんな授業ができるのではないかというアイデアを紹介していきます。

 今回は、イリュージョンフォーラムというサイトにあるコンテンツを使って、錯視をインタラクティブに体感しながら、実際は同じ色なのに違うように見えたり、同じ長さなのに違うように見えたり、形は存在しないのにあるように見えたりなどの効果があることを知って、デザインや色の使い方に活かす方法を紹介します。
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▼イリュージョンフォーラム
http://www.kecl.ntt.co.jp/IllusionForum/index.html

 錯視といっても、たくさんありますが、このサイトでは、種類ごとに見ることができます。各コンテンツの下部に、解説文もあるので、授業で説明する際の参考にできるかと思います。内容によっては、神経細胞などを含んだ解説などもあるので、場合によっては、高校の生物の内容と絡めることもできるかもしれません。
 ここのコンテンツのいいところは、実際に図形をマウスで動かすことができるので、その場で見た目の違い・変化を体感することができることです。
 実際の色と、見た目に感じる色の違いを体感することで、画面上・キャンバス上での色味・見た目はどうかを確認し、調整することの重要さを学んだり、錯視の手法を活かした表現方法を思いつくことができたり、見せたい部分を誇張するのに活用するなど、いろいろ展開させることができるかと思います。

明るさの対比

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http://www.kecl.ntt.co.jp/IllusionForum/v/brightnessContrast/ja/index.html
明度対比の説明で使うことができるかと思います。

色の対比

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http://www.kecl.ntt.co.jp/IllusionForum/v/colorContrast/ja/index.html
色相や色相環、色相対比の説明で使うことができるかと思います。

チェッカーシャドウ錯視

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http://www.kecl.ntt.co.jp/IllusionForum/v/checkerShadow/ja/index.html
影の効果による見た目の色と実際の色の違いを説明するのに使うことができるかと思います。

カニッツアの三角形

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http://www.kecl.ntt.co.jp/IllusionForum/v/kanizsasTriangle/ja/index.html
実際には描かれていない形が見えるという体験をすることで、描かずに形を出す方法を説明することができるかと思います。

大きさの恒常性

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http://www.kecl.ntt.co.jp/IllusionForum/v/sizeConstancy/ja/index.html
奥行きの説明で使うことができるかと思います。


錯視というテーマで、いろいろ紹介するよりは、その後に制作するデザインなどに展開できるポイントに絞って紹介するのがいいと思います。
錯視っておもしろい!で終わらせずに、その仕組みを活用する流れにするといいでしょう。
例えば、カニッツアの三角形のコンテンツで描かずに形を出す方法を説明したあとに、実際に形のない図形や文字・マークを制作するワークをやってみるといいと思います。


(前田)

【プロの現場から】デザインはセンスではない。サイバーエージェント:エンジニアが学ぶデザイン講座2

プロの現場から

 前回紹介した、サイバーエージェントでのテクニカルクリエイター研修の第4回目の様子がブログに掲載されていたので、ご紹介します。このテクニカルクリエイター研修は、サイバーエージェントのエンジニアを対象に、社内のデザイナーが講師となってデザインの基礎を教える研修です。

▼前回紹介した記事
blog.ict-in-education-cr.jp


「他者に伝える」技術を学ぶデザイン講座

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名刺デザインから学ぶレイアウトテクニック!テクニカルクリエイター研修レポート|Technical Creator Hub

 ブログの著者でもある実際に研修を受けられた社員の方が述べられた
「普段目にしている何気ないポスター、webデザインでも、それらは一朝一夕でデザイナーさんのセンスに任せてパッと作られたものではなく、こうした細かい調整を重ね、緻密に練られて出来ているものだと実感しました。」
という一言が、デザインとアートの違いや、デザインにおける「他者に伝える」上での考えるべきことの重要性が語られていると感じました。

 実際の研修では、レイアウトにおけるルールやテクニックについて紹介をしてから、自分の名刺作りに取り組まれたようです。美術の授業でもデザインの授業をすることがあるかと思いますが、こういったルールやテクニックまではやることは少ないかと思います。ただ、基本や基礎を知識として身につけてから、実践をやった方が同じ共通認識を持った上で講評をすることができたり、自分以外の人の作品についても評価をすることができるかと思うので、とても効果的だと思います。
 もしくは、まずは自由に名刺を作ってみたあとに、ルールやテクニックを紹介しつつ講評をし、そして作り直してみる。という授業構成もありかなと思います。そうやって特に意識せずに作った名刺と、ルールやテクニックを知った上で作り直した名刺を見比べてみて、見え方の違いや作っているときの自分が考えていることの変化を感じ取ってもらうことができるかと思います。

 ブログでは、デザインの根底にある「他者に伝える」ということを学んだとなっていますが、デザインに限らず、プレゼンテーション、日常の会話など、さまざまな場面で必要となる考えるべきことです。自分の好き勝手に言って相手が理解してくれないことを相手のせいにするのではなく、自分の伝え方に問題があったのではないか、もっと伝わりやすくする方法があったのではないかと考えさせることもできるのではないかと思います。そういった観点でいうと、デザインはプレゼンテーション教育の一環にもなりえる領域だと思います。


本ブログでも、レイアウト関係の記事を「学校で使えるクリエイティブデザインアイデア」というシリーズ連載で紹介しているので、是非ご覧ください。
blog.ict-in-education-cr.jp


(前田)